四季の花々や飲食スペースでにぎわいづくりを


富山県土木部 次長
林 正之さん


中村
 松川を生かした魅力ある街づくりが、「水の都とやま」の大きなテーマとなってきていますね。

 富山の町は神通川を外堀に富山城が築かれ、城下町として発展してきたという歴史があります。神通川の屈曲部を埋め立て、新たな街を作った訳ですが、その名残りが松川です。その点で非常に富山の土木の歴史のエキスが詰まった所だと思います。次に浮かぶのは、中村さんもいろいろ研究されている滝廉太郎が幼少期の2年間、松川河畔にあった小学校に通ったという物語性ですね。私は大学時代が京都で、銀閣寺の横に「哲学の道」がありますが、下宿がすぐそばで、青春期にいろんなことを考えながら歩きました。でも、桜の時期の松川べりの方がすばらしい。あそこがなぜ有名かと言うと、哲学者の西田幾多郎が散策をしながら思索にふけったという物語性があるからですね。「荒城の月」で有名になった滝廉太郎がこの河畔から富山城を見ながら育ったというのは、実にロマンにあふれているな、と思います。3点目は、富山ってやっぱり「水の王国」と言いますか、非常に水が豊か。一方で水害が多く、明治24年には県の予算の87%を治水に使ったという記録があります。しかし、今となってみれば、非常に貴重な都市内の水辺で、水と緑の回廊みたいな感じなので、環水公園ともつなげて生かしていくとよいですね。あとは、桜の頃のようなにぎわいを四季折々作れるかがポイントですね。

中村 街の中心を美しく流れる松川のにぎわいづくりが、「水の都とやま」の大きなテーマですね。

 県が昨年、高志の国文学館を作った時に、もう少し四季の花があったらということで、万葉集ゆかりの椿やサザンカ、あるいは薬都富山ということで、シランやキキョウといった薬草も松川べりに植えたんです。また、越中万葉の歌碑3つと、歌石板を14カ所設置しました。

中村 たくさんの人に見てほしいですね。

 私は、都市計画の仕事が長くて、昭和63年からスタートした駅北の「とやま都市MIRAI計画」の第1回目の地元説明会の時から担当でした。環水公園は、「いい公園だけど、誰も歩いてませんね」という話があって、公園の中にホテルなりコーヒーショップができて、人が入るようなところがないと、公園になかなか人は来ないとかねがね思っていたんですが、最近そんなイメージになってきましたね。ああいったものができると人もたくさん来るようになっていくので、ヒントになると思います。城址公園に、今、SLが置いてあったり、ジャングルジムがある広場と松川との間とかに、飲食できる所があるといいですね。ます寿しなど富山の名産を食べたり、あるいはもっと言えば、博多の屋台街みたいものがいいのか。やっぱり人間というのはどうしても食べ物に弱いですから。四季の花々に彩られ、行き交う遊覧船を眺める。また、遊覧船からも河畔を行き交う人を眺めて、というスペースがあった方がにぎわいが生まれると思います。

中村 そうですね。例えば、松川茶屋のような和風の建物が軒を連ねて並んでいて、その中がレストランだったり、お土産のショップだったり、あるいは滝廉太郎記念館みたいなものがあってもいいしね。そういう文化性と商業性と。一方で、静かな庭園みたいな場所もあったり、多様性に富んでいるといいですね。

 環水公園などの民間レストランの事例がありますが、例えばあんな感じの雰囲気がいいと思いますね。