『誰がパリをつくったか』

『誰がパリをつくったか』
 宇田英男著 朝日新聞社
 絶版

世建築家による異色のパリ案内

 東京大学工学部建築学科を卒業した建築家が、建築史からパリについてまとめた本である。
 「パリ」の名は、紀元前2世紀頃、シテ島に住んでいたケルト人の部族の「パリシス」に由来するという。「パリシス」はケルト語の「船人」を語源とし、彼らは船によるセーヌ河の交易に従事し、自分の貨幣(月の形と人の顔を刻んだ独自の金貨)を鋳造するほどの経済力を持っていたようだという。
 紀元前52年、カエサルは、パリより約100キロ南のサンスに滞在し、部下の部隊に当時ルテキアと呼ばれたパリを攻めさせたという。その時、途中の街で50隻の舟を奪い、セーヌ河を渡ったという。
 その後、ローマ帝国はこの地にローマ的都市を建設した。
 しかし、ゲルマン人の侵入でローマの衰退が始まり、ゲルマンの一族、フランク人の王クロヴィスが、今日のルーヴルの地に基地を作り、ルテキア(現在のパリ)に入る。「ルーヴル」の語源は、チュートン語の「砦」のことだそうだ。王クロヴィス以後のメロヴィンガ朝(486〜751)は、シテ島とセーヌ左岸に集中していたローマ人の作ったルテキアの町に対し、セーヌ右岸に町を作っていった…。
 著者は、このような始まりで、歴代の王たちの夢、建築家たちの情熱が宮殿を建て、街並みを整え、壮麗な凱旋軸(ルーヴル美術館のガラスのピラミッドから、中がくり抜かれた巨大な立方体、グランド・アルシュまでの8キロの軸線)を築き上げていく様子を詳細に綴っていく。

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