『水運史から世界の水へ』

 

『水運史から世界の水へ』
徳仁親王 著
NHK出版 1760円

 

天皇陛下が皇太子時代のご講演の記録

 この本は、天皇陛下が皇太子時代のご講演の記録で、昭和62年(1987年)の初講演から平成30年(2018年)の世界水フォーラムの基調講演まで、全9篇を収載している。
 第八章の「世界の水問題の現状と課題」には、平成27(2015)年11月18日にアメリカの国際連合本部で開催された「第二回国連 水と災害に関する特別会合」における基調講演をもとに、平成28(2016)年1月22日に学習院女子大学で行なわれた講義を収録しているが、この中で、「最後に、私の好きな前田普羅の俳句を読んで、締めくくりたいと思います」と、「立山のかぶさる町や水を打つ」の俳句を紹介されている。
 そして、「立山が覆い被さるようにそびえる富山の町で、人々が夏の暑さをやわらげるために通りに水を打ち、涼をとっている情景が目に浮かびます。山から流れ出る水は飲み水として、あるいは農業用水として私たちに多くの恵みをもたらします。しかし、水は時に少な過ぎたりあるいは多過ぎたりして、人々に大きなダメージを与えます。この句にあるように、人々がどこでも水とともに平和にゆったりと過ごせる世界を実現できるよう、私も今後とも取り組んでいきたいと思います」と述べられている。
 この本では、イギリス・オックスフォード大学に留学し研究された、17〜18世紀のイギリス・テムズ川の水上交通史の研究も登場する。中世のイギリスでは河川を交通路として利用するというよりも、生活の場としての利用や動力の源泉として開発に関心が向いており、製粉業者が水車用に築造した堰が川を分断し、船を通そうとする輸送業者の間で絶え間ない紛争が繰り広げられた。妥協策として堰に、「フラッシュ・ロック」とよばれる開閉式の水門がつけられたという。輸送業者は上流へ遡る場合には、滝のように流れ落ちる水の上を、ウィンチや馬力または人力で持ち船を引っ張り上げ、また、下流へ下る時には転覆させないように細心の注意で操船しなければならなかったそうだ。

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