『図解 まちをリノベーションする治水デザイン』

 

『図解 まちをリノベーションする治水デザイン』
二井 昭佳・岡田 一天 著
学芸出版社 2970円

 

“市町村が「自分ごと」として治水デザインに取り組めば、日本のかわまち空間は、劇的に変わる”

 この本では、川の計画設計は都市デザインの一環として取り組むべきと主張する。川をまちを支える屋台骨と捉え、そこで育まれてきた歴史や文化を継承あるいは還元するように、かわまち空間をデザインする。そのためには、治水計画を無条件に受け入れ、あるいは関心をもたずに都市計画を立案するのではなく、まちのあるべき姿を見据え、治水計画そのものにまちが積極的に関わっていくことが必要という。
 そして、治水デザインに取り組み見事にリノベーションしたドイツ、スイス、オーストリアの事例を紹介している。
 たとえば、ドイツのミルテンベルクでは、治水とかわまち空間を両立する整備を実現しているが、その大きな理由は、市が主体的な立場で治水計画の構想段階から関わったからと指摘する。ドイツでは治水整備の費用を、河川管理者(州)だけでなく、地先の市町村も負担する。そのため治水対策の実施には、市町村が費用も含めて合意する必要がある。バイエルン州の基本負担割合は州60%、市町村40%とされ、市町村の財政状況により比率は変化する。市にとって治水対策が「自分ごと」になり、洪水防御計画の大きな指針は、「被害を防ぐとともに、都市再生のチャンスと捉え、まちのオープンスペースを川に開き、川とまちの一体的な空間を創出する」となった。
 市は単に要望を出すのではなく、州との協議に向けて、建築都市設計事務所に堤防を含むかわまち空間のデザイン検討を依頼したが、これが治水整備の成否の大きな分かれ目だったという。河川管理者はあくまでも治水安全度の確保を目標としているため、必ずしもまちづくりを志向した計画になるわけではないからだ。
 著者は、これは日本でも同じで、まちの魅力を高める治水整備を望むのであれば、市町村は積極的に計画に参画すべきで、そのための制度は景観計画や、かわまちづくり支援制度、都市再生整備計画をはじめ、十分に整っていると述べる。市町村が「自分ごと」として治水デザインに取り組めば、日本のかわまち空間は劇的に変わるはずだ、と、期待を込める。

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