松川雨水貯留施設 松川の水質保全と浸水被害の軽減が目的


▲貯留管の内部(2014年9月20日の地元町内会向けの見学会より)

 富山市では、戦災復興都市計画事業の着手と共に、1952年から下水道の調査と計画に着手し、中心市街地である富山駅南側から城南公園付近までの約277ヘクタールを生活排水と雨水を1本の管に流す合流式下水道により、整備を行ってきた。
 この合流式下水道は、大雨の時には、生活排水と雨水が混じりあった下水を全量処理場へ流すことができず、一部がそのまま松川などの公共水域に放流され、「下水の臭いがする」との声が出ていた。また、2001年には、東京・お台場にオイルボールが漂着し、その原因が合流式下水道であるとして、新聞等で話題となった。2003年には下水道法施行令が改正され、2013年度までに合流式下水道の改善対策を完了することが義務づけられた。富山市でも改善計画を策定し、2005年度から浜黒崎浄化センターの高速ろ過施設の整備などを始めた。
 一方、都市化の進展や近年の異常気象による集中豪雨によって、浸水被害が頻繁に発生するようになった。2008年8月16日の集中豪雨では総曲輪フェリオなどの店舗に水が流れ込み、合流式下水道の問題が大きくクローズアップされることになった。
 これをきっかけに、「松川の水質保全」と「浸水被害の軽減」を目的に松川雨水貯留施設が計画され、2012年度から基幹施設となる松川貯留管の工事に着手した。
 貯留管のシールド工事は2014年10月10日に完了し、2017年度末に貯留管内部の工事が完成、2018年5月に供用を開始した。
 貯留管の総貯留容量は20,200㎥。城址公園北西から南に向かう曲線部までは背割り構造で、越流水対策用(3,900㎥)と浸水対策用(16,300㎥)に分かれている。これまで、2018年度に一度、満水になったことがあるそうだ。なお、満水から空になるまで最短で14時間かかるという。
 なお、貯留管に貯まった水は、原則として全量が晴天時に浜黒崎浄化センターに送られ、処理を行って富山湾へ放流されている。ただ、長雨が続いたり、強雨の場合には、貯留管や浄化センターまでの下水管が満杯になり、緊急的に松川へ放流するケースもあるそうだ。 

協力/富山市上下水道局 参考文献/下水道機構情報 Vol.9 No.20、「松川排水区雨水貯留管雨水貯留施設における水理現象調査研究(富山市)」(2011年度 下水道新技術研究所年報)

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