素晴らしい堤防の上からの景色を生かそう!

国土交通省 富山河川国道事務所 事務所長
中谷 洋明 さん
Hiroaki Nakaya

 

 砂防や国土保全に携わりたくて、建設省(現国土交通省)に入省したという中谷さん。
 「親が転勤族で、子どもの頃、崖崩れや土砂災害が多い多摩川べりに住んでいました。それが原体験ですね」
 母方の曽祖父が常願寺川流域の大山町(現在の富山市)の出身で、父方は石川県出身。
 「父方は、鳥越城(白山市)より奥の天領(幕府直轄地)だった場所の出身です」
 現在、富山市荏原で単身赴任中で、朝、近くの常願寺川の堤防沿いをよくジョギングしているそう。
 「雷鳥大橋のところに立つと、常願寺川の本線の直進先は、ちょうど県庁なんです。ですから、左岸の堤防が切れたら、県庁や駅周辺まで水が流れていきます。もともと、常願寺川は神通川と合流したがっている地形だということがよくわかりますね。あの場所がたぶん、富山県東部の治水の肝だと思います。近くには済民堤や佐々堤があり、先人の苦労がしのばれます。現在は、上流の立山砂防工事も含めて、旧内務省の先輩技師たちが一生懸命対策をされてきたので、治水的に成熟していると思います」
 砂防の専門家だが、それに限らず、中国地方整備局河川部にいた頃は、広島市の水辺利用にも携わった。
 「広島も、〝水の都〟を目指して、県・市が連携して、いろんな取り組みをされています」
 富山は、全国的に見ても堤防道路が多いそう。
 「堤防の上に出ると立山連峰など、非常に景色がよく見えます。信号もなく快適ですから、夜明けや夕方に、バスツアーをすれば喜ばれると思います。バスは電気で動く屋根のないのがいいですね。パックのお茶とお茶菓子などをつけて、途中、鱒寿司のお店に寄ったりするのもいいですね。堤防の上を走るツアーがないのは、河川に携わっている者からすると、もったいないなと思います」

 

プロフィール ●
51歳。三重県津市生まれ。神奈川県川崎市で育つ。東京大学農学博士(H21学術)。平成8(1996)年、旧建設省 北陸地方建設局 松本砂防工事事務所 姫川出張所技官(採用)。同 関東地方建設局 企画部、土木研究所 砂防研究室、人事院 長期在外研究員(米国・コーネル大学大学院)。平成13年10月、気象庁 予報部予報課を経て、平成16年、国土交通省 北陸地方整備局 金沢河川国道事務所 流域対策課長。平成18年、同 河川部 地域河川課長(富山県内各種河川海岸砂防ダム事業担当)。その後、外務省インドネシア、カンボジア担当を経てアフリカ第一班長インフラ担当、国土交通省 水管理・国土保全局(3.11対応)、同 中部地方整備局 天竜川上流河川事務所長、同 中国地方整備局 河川部にて事業担当並びに、かわまち担当。同企画部にて同管内で地域づくり。平成30年、西日本豪雨災害対応、国土技術政策総合研究所 土砂災害研究部 土砂災害研究室長にて各地の土砂災害の現地対策指導。国土交通省本省((一財)砂防地すべり技術センター 技術開発部長出向)を経て、令和7年4月、同 北陸地方整備局 富山河川国道事務所長。
資格:技術士(応用理学、建設)、気象予報士、フランス語、英語、研究論文多数

 

Q&A ●

●座右の銘
 「凡事徹底」「一隅を照らす」
 「置かれたところで咲く」

●趣味
 読書、論文作成
 「その他、フランス文学を読んだり、フランス語のラジオを聞いたりしています」

●出身地の好きなところ
 「海から陽が昇るところがしっかり見えるところ」

●尊敬している人
 栗林忠道中将
 「硫黄島最後の守備隊の最高指揮官として、最後まで戦い抜いたところが立派だなと思います」

●旅行で印象に残っている所
 アフリカ、カンボジア
 「最近ですと、ヨーロッパの方に学会で行きましたが、ローマ人が地形をしっかり見て道路や水道橋を作っているところがすごく参考になりました。地形に逆らったものは、残らないということがよくわかります」

●家族
 妻、息子1人 娘3人

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