・ グッドラックとやま 2024街づくりキャンペーン・“水の都とやま”のオアシス松川を美しくしよう!
・グッドラックとやま 2024街づくりキャンペーン・
“水の都とやま”のオアシス松川を美しくしよう!
2024年8月より、能登半島地震で被害を受けた松川の護岸の復旧工事が始まった。
この工事は来年のお花見シーズンには一時中断されるものの、2年に渡る大工事となる予定だ。松川が再び都心のオアシスとして蘇ることを願いつつ、さらに美しい松川に向けての歩みを着実に進めていきたい。
松川は富山市を映す鏡
「彼岸の頃、富山に来て松川のほとりを歩いてみましたが、緑の葉が茂る木々の根本に真っ赤な彼岸花がたくさん咲いていて、実に美しい風景でした。都市の中心に美しい木々と彼岸花、富山市は素晴らしい都市だと思いました。
ところが、目を松川の川底に落とすと、空き缶やゴミ、汚泥が積もり、川藻もいっぱい生えているのです。これではせっかくの美しい景色も台無しですし、どうにかできないのかなと思わずにいられませんでした。
川べりに歩道が設けられているので、降りて歩いてみたのですが、なんとヘドロの上を歩いていくことになってしまい、とても残念でした」
これは、埼玉県の安藤富貴子さんからいただいたご意見です。
美しさを保つには日常的な清掃が必要
どんなに素晴らしい施設でも、清掃がおろそかになっていると幻滅します。一方、施設はそれほどではなくても、きちんと清掃されていると、好印象を受けるものです。誰でも気づくことですが、何よりも日頃の清掃が大切と言えるでしょう。(もちろん、施設も素晴らしく、清掃も行き届いているにこしたことはありません。ディズニーランドは、徹底した清掃でも有名です)
さて、松川にもそれが当てはまり、水位の安定や護岸の植栽、周囲の景観など、様々な検討課題がありますが、それらへの対応とともに、常にしなければならないのは清掃なのです。
現在、松川の清掃は県が行っていますが、予算等の問題もあり、それほど頻繁には行われていません。例えば、川沿いの遊歩道が冠水し、ヘドロがのってしまっても、そのままになっている場合が多いのです。残念ながら、大雨が降って上流から砂が流れ込み、川底が浅くなり、見苦しくなってもそのまま放置されています。もちろん、よほど目立つような場合には行政は動くのですが、それまで待っていては、普段の大部分の日は「美しくない」というのが現状なのです。
「松川」べりが秘める大きな可能性
人間が水や緑を本能的に求めているせいか、美しい川べりは不思議な独特の魅力を持っています。 「水は、生活の行間に起伏をつくり、心に潤いや安らぎやなぐさめをもたらすものである。都市は、水によって光と影のコントラストをつくり、都市の建物などは、流れる水によって劇的に演出されたりすることがある。(中略)
水は夕日を反射することによって、人々の表情に豊かさや陰鬱な趣を漂わせることもあるし、ウォーターフロントには、人の精神のバランスを回復させていくような不思議な作用があるとさえいわれる」
(大岡哲著 『新・都市開発の時代:21世紀への地域開発戦略』鹿島出版会より)
▼遊覧船が松川を行き交うことで、橋の上の人々と乗船客との温かな交流が生まれている。
川の保全運動から、美しい川の街へ発展
世界中から注目されるようになったアメリカ・サンアントニオのリバーウォークにしても、最初から美しかったわけではありません。それどころか、洪水を起こすサンアントニオ川を市の発展に有害なものとみなし、埋め立てて道路にする計画が出されたのです。
驚いた婦人団体とサンアントニオ保全協会は、自然のままの水路を保存し、この川を救おうという運動を始めました。さらに河川を浄化し、美しくする計画を支援する目的で河川美化委員会を設置し、いくつかの市民団体が川の修景を支援する闘いに加わりました。この計画は、サンアントニオ広告業組合や不動産協会によっても支持されることになりました。
最大のポイントは、川の独自性を活かすこと
サンアントニオ市の修景美化活動に先導的な役割を果たした地元の建築家、ロバート・ハグマンは、川の整備について、「静かで、植物が生育するのに適切な場所を備えた、川の自然の美しさを保ち続けることのできる、フレキシビリティ(柔軟性)のあるマスタープランに従うよう」提案しています。
ハグマンの計画とは、本質的に「開発が進めば進むほど、川の自然の特色が保たれ、その価値が高まる」ということでした。彼は、「川はその原風景を保っていなければならないし、またサンアントニオの特色が残る、他のところとはちょっと異なる雰囲気の空間を持っていなければならない」と述べました。川の魅力、歴史性、そして古い界隈性の保存は、ハグマンの美的志向に基づくものであり、計画の根幹をなすテーマでもあったのです。
しかし、川を美しくするためには結局は川底を深くし、整備するしかないと決断しました。ハグマンは「事業の最重要点は、流路をきれいにし、深くすることであった。この作業は、ほとんどシャベルや手押しの一輪車でしなければならず、面倒で汚く単調な作業であった」と述べています。
松川の魅力を活かし、効果的な利用を
松川の大きな魅力は、川幅がヒューマンスケールで、どの場所も互いに掛け声が届くほどの空間だということでしょう。遊覧船の乗客と遊歩道を歩く人が自然と挨拶を交わしてしまうような、そうした心地の良い雰囲気が松川には漂っているのです。
水路幅が表情が識別できる限界(12メートル)以下であれば、両岸の親密な一体感はいっそう強調されます。松川は10メートル前後であり、生かし方によっては大変素晴らしい空間にできるのです。
実際、松川と同じぐらいの川幅のサンアントニオ川の場合、川の両岸にカフェやレストラン、公園を配し、イベントを行うことなどにより、年間1500万人以上の人々を惹きつけるほど効果的な活用がなされています。
泳げるほど美しい松川に再生しよう
北山ナーセリー社長の北山直人さんは、川の特質が街に与えるイメージについて次のように述べています。
「よく夏場になると、郡上八幡では橋の上から子供がドボンと飛び込んでいる。要するに、泳げる川なんです。踊りもあるけど、それがイメージとして、清らかな川が流れている街の印象になり、象徴になっています。そういう本質的に価値のある何かが、一つ必要になると思いますね」
まさにその通りで、泳げるほどの美しい川ということになれば、松川の価値はぐっと上昇し、「川の王国・富山」のイメージにもぴったり合うのではないでしょうか。
▼松川と同じようなヒューマンスケールな川の魅力を、最大限に活かした米・サンアントニオのリバーウォーク。
清掃ボランティアで美しい川を保つ
富山市荏原付近を流れる半俵川の場合、周辺の藤の木校下と新庄校下を合わせた約3000世帯で「半俵川をきれいにする会」を設けて、みんなで川底の空き缶などを拾う活動を始め、平成6年には2トントラックに10台近くあったゴミも、近年は1台程度に減ったそうです。
また、高岡市の千保川では草刈りだけでなく、歩道の泥をホースで水を流してきれいにする大掃除を行っているのだそうです。
その他、魚津市の鴨川では「サケを呼ぶ会」が中心となって、毎月1回、川の清掃を行い、黒部市の高橋川では「高橋川を愛する会」が毎年7月に一斉清掃を行うなど、各地で地元有志により美化活動が行われています。
※各地区の清掃活動の実施については、1998年頃の実績です。
県都・富山市の中心部からイメージアップを
松川が流れている場所は、まさに県都・富山市の中心部。言ってみれば、松川は富山の中心なのです。そこが常に美しかったら……と想像してみると、これほどきれいにすることにやりがいを感じる場所もないでしょう。この場所を誰もが驚くほど美しくできたら、富山市、富山県のイメージを変えられるのではないでしょうか。
行政に限界があるのなら、行政と連携を図りながら、有志の力で松川べりを美しくしていくしかありません。例えば、「ボランティア活動」です。県都・富山市の顔を、より美しくしていくことに、誇りとやりがいを感じることのできる人たちが集まって、定期的に清掃を行うことができれば、ますます松川に磨きがかかり、魅力的な場所になっていくでしょう。
次世代に美しい松川を引き継ごう!
現在、『月刊グッドラックとやま』と富山観光遊覧船では、「松川を美しくする会」を立ち上げ、旧神通川の川筋である松川、いたち川を活かした魅力ある空間づくり「夢の神通回廊(リバーウォーク)」についての調査研究や提言、松川の清掃活動(不定期)などを行っています。
また、2017年には『月刊グッドラックとやま』発行人・中村孝一の呼びかけにより、地元有志による「〝水の都とやま〟推進協議会」が設立され、有識者や行政担当者、地元企業の代表者など幅広い方々からの意見を集約して提言するなど、定期的な活動を行っています。
このような長年の活動が評価され、2021年には「『月刊グッドラックによる松川を活かした〝水の都とやま〟への挑戦」が「第23回日本水大賞」(主催/日本水大賞委員会、国土交通省)の「審査部会特別賞」を受賞しています。
美しい松川で富山のイメージを高め、後世に引き継いでいきたいものです。