20★タンタンの冒険『太陽の神殿』


タンタンの冒険『太陽の神殿』
エルジェ・作 川口恵子・訳
福音館書店

 

中林みぎわ〈Profile〉

◆宮城県生まれ。富山県天文学会会員。平成14年から21年まで富山市天文台勤務。現在は、子育てをしながら富山市科学博物館ボランティアとして活動。好きなものは、星と月、本、石、博物館巡り、お菓子作り、ビートルズ。

 あけましておめでとうございます。新年早々、1月6日㈰に日食観察はいかがですか? 2016年3月9日以来、約3年ぶりの日食で、富山では午前8時42分頃から太陽が欠け始めます。10時02分頃に最も欠けた状態になり、太陽の約4割が欠けて見られます。その後、元の丸い太陽に戻るのは11時30分頃です。欠けるとはいえ、太陽はとても眩しく直接見ると失明の恐れがありますので、日食メガネを使うなど、安全な方法で観察してください。富山市科学博物館などでも日食の観察会が行なわれますので、参加してみてはいかがでしょうか。
 日食は、地球と太陽の間を月が通過するとき、地球から見て太陽が欠けて見える現象です。現在、私たちは予報により日食を楽しむことができます。しかし、かつてその原理を知らなかった人々は、普段は丸い太陽が日食で欠けていくのを、神の怒りや悪魔の仕業、あるいは不吉なことと捉えたようです。実は、古代バビロニアや中国などでは紀元前から、日本でも飛鳥時代にはすでに日食の予報が行なわれていました。しかし、日食が国政に重大な影響を及ぼすと考えられていたため、日食の予報を知ることができた人は限られていたようです。たとえば日食を戦に利用したのが、平安末期の水島の戦いの平氏軍です。当時、都で実権を握っていた平氏は暦を手にでき、日食が起きることを知っていました。一方、源氏は日食の予報を知りませんでした。現在の倉敷市で平氏と源氏が対峙したときに日食が起こり、動揺した源氏軍は敗走したのです(「源平盛衰記」より)。このような、日食を知る知らないにまつわる顛末はフィクションでもたびたび取り上げられています。今回ご紹介の「タンタンの冒険」シリーズでも、主人公たちが南アメリカの原住民に捕らえられて火あぶりの刑となる直前に日食が起こり、畏れをなした原住民に処刑されず命拾いをします。
 ちなみに日本では今年日食が二回見られます。2019年二回目の日食は12月26日の夕方です。詳細は12月号のこのコーナーでご紹介したいと思います。

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