『都市をつくる風景』

 

『都市をつくる風景』
中村良夫 著
藤原書店 2750円

 

景観工学・風景学の第一人者が語る「都市の理想を高く掲げる」ことの大切さ

 この本は、昨年末に新版が出ているが、手元にある旧版の方で紹介したい。
 著者の中村良夫氏は、「土木工学(機能性)」に「景観(美学)」を融合させる流れを作った景観工学・風景学の第一人者で、広島の親水護岸整備や「水の都ひろしま」の風景づくりの「生みの親」と言われている。
 第11章に「名都の条件|風景計画とは何をするのか」という項があり、日本の近代都市計画の草分けとして知られる石川栄耀氏が語った〝名都〟について、中村氏流に解釈している。
 「第一条件は山水美、第二条件は文化計画(官庁、美術館、博物館、劇場などの公共建築をなるべくまとめて印象深く配置する)、友愛計画とでも称すべき第三は、故郷の偉人の銅像を街角にたてたり、故事古跡を保存したり、盛り場や商店街などの楽しい賑わいの演出、つまり人間の善意の表現としての社交精神」と述べる。
 そして、石川氏の名都論の見所は、都市の景観性を力説するところにある、と分析し、「安全な環境や、効率のよい交通などは都市計画にとってあたりまえのことで、魂の見えない都市は名都ではない。『仏つくって魂入れず』では困る、と石川氏が主張しているように思えてならない」と力を込める。「風景計画とは、都市に魂を入れ、それがよく見えるように演出すること。そして、都市に魂を入れるとは、人を魅了する力を持つように、都市の理想を高く掲げることである」と強調し、「今、都市の理想主義はやせ細ってしまった」と嘆く。
 「現実に眼をつぶった理想主義ほど危ういものはないだろうが、しかしまた、理想を持たない行動は、あたかも灯火を掲げずに闇夜を行くように、人を迷わせ、虚無の淵へ陥れる。現代における理想の喪失はそれなりの理由があることを百も承知のうえで、なお理想を語ろう。そのために都市の理想を放棄した懐疑論者たちがいかに疑おうとこれだけは疑いえない事実を見つけ、そこから再出発しようと思う」と述べ、筆を進める。
 内容が深いので、じっくりと読み進めたい本である。

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