『幸田姉妹』滝廉太郎と青春時代を共に過ごした姉妹の物語

   『幸田姉妹』
   萩谷由喜子著 ショパン
   1500円+税

 

 幸田姉妹とは、洋楽黎明期を支えた幸田延と安藤幸。幸田延はヨーロッパに学んだ最初のピアニスト、安藤幸は最初の日本人ヴァイオリニストであった。2人の兄に、作家・幸田露伴がいる。
 現在の東京芸術大学音楽学部の前身、東京音楽学校が、音楽取調掛の名称で最初の伝習人を受け入れたのは明治13年(1880年)10月15日。その第1回卒業式は明治18年(1885年)2月に行なわれたが、この際に卒業証書を手にした3名は、いずれも10代のうら若き女性。その1人が幸田延であった。
 この本のプロローグ「山田耕筰、幸田延の舌鋒にたじろぐ」にあるように、幸田延は《上野の西太后》または《上野の女将軍》と呼ばれ、東京音楽学校で絶大な権勢を振るったという。また、妹の幸は、『鳩ぽっぽ』『お正月』『雪やこんこん』を作詞した東くめと親友で(作曲は滝廉太郎)、くめはしばしば、幸の家に泊まりがけで遊びにきていた。
 幸は滝廉太郎とも親しく、一緒にテニスをしたこともあったという。廉太郎は、姉妹の住んでいた橋場(南千住)の住まいに、よく延を訪ねてきていたようだ。その際、親友の鈴木毅一が一緒だったという。〈安藤幸「滝さん」〜『音楽の友』昭和22年11月号(滝廉太郎45年記念特集)〉
 幸は、明治32年(1899年)からドイツに留学した。前出の「滝さん」には、明治34年(1901年)にドイツに留学してきた廉太郎が幸を訪ねてきたことや、廉太郎が病になり、病院に見舞ったことなども紹介している。


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