・ グッドラックとやま 2024街づくりキャンペーン・ 松川・いたち川・富岩運河を一体化した“水の都”創造を!

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松川・いたち川・富岩運河を一体化した“水の都”創造を!

平成7(1995)年8月号「富山市議会議長・五本幸正氏インタビュー」より再編集
インタビュアー/中村 孝一 (月刊グッドラックとやま発行人)

 

 8月から地震の復旧工事が始まり、来年の春まで松川遊覧船は運休となっている。富山の歴史・文化・自然のシンボル空間である松川べり一帯を活かし、誰もが誇れる〝水の都”を創造しようと1987年に遊覧船の試乗会を開始して37年目。思いもかけない形で、松川に歴史が刻まれることになった。
 今号では、“水の都”を目指す原点に立ち返るべく、過去のインタビューから現在までの動きを振り返ってみたい。

 

松川は富山市を映す鏡

 「彼岸の頃、富山に来て松川のほとりを歩いてみましたが、緑の葉が茂る木々の根本に真っ赤な彼岸花がたくさん咲いていて、実に美しい風景でした。都市の中心に美しい木々と彼岸花、富山市は素晴らしい都市だと思いました。
 ところが、目を松川の川底に落とすと、空き缶やゴミ、汚泥が積もり、川藻もいっぱい生えているのです。これではせっかくの美しい景色も台無しですし、どうにかできないのかなと思わずにいられませんでした。
 川べりに歩道が設けられているので、降りて歩いてみたのですが、なんとヘドロの上を歩いていくことになってしまい、とても残念でした」
 これは、埼玉県の安藤富貴子さんからいただいたご意見です。

 

“水の都・とやま”の具体的イメージを

中村 富山県は“水の王国”、富山市は“水と緑と文化の街”を目指していますが、そのためにはベニスのゴンドラのように目に見える具体的なイメージが必要です。
 私どもでは県都・富山市のど真ん中を流れる松川を、“水の都”のシンボル空間に創り出せるのではと、ゴンドラの代わりに笹舟や遊覧船、宴会船など、様々な提案をさせていただいてまいりました。その中で、クリアすべき基本的な問題がいくつかあります。
 まずは水質の浄化と水位の一定化。市内中心部を流れる松川の水が美しく豊富であれば、富山市はもちろん、富山県全体のイメージアップになると思うのですが…。

五本 この問題につきましては、議会の方でいろいろ勉強を重ねてまいりました。上流の土川にラバーダム(※1)を作り、水を取り入れたり、他の4つの河川からも水が入っているのですが、農繁期の4月から9月頃まではどうしても濁ってしまうんですね。
 また大量の雨が降って上流の水が濁れば、おのずと松川の水も濁ってしまう——。ですから、年間を通して松川の水を浄化するというのは、現状では非常に難しい面があるんですよ。

中村 ラバーダムを建設する際、土川から水を取り入れるのでは本当に松川を浄化することにならないという意見もあったそうです。やはり、神通川の水を取り入れるべきだと。しかし、予算的な問題もあったようですね。

※1 松川を浄化するため、上流の土川から取水するゴム製の起伏型可動堰。1984年に完成した。

五本 当時は土川から松川に水を入れることによって、かなりきれいになるだろうと期待していたんですがね。

中村 松川にはもともと神通川の水が流れており、河床が逆転したことによって、入ってこなくなったわけですよね。ですから、以前のように神通川のきれいな水を取り入れることができれば、理想的なんですが…。例えば、兼六園の曲水の水は、10キロほど上流から引いてきているということを伺いました。松川の場合も神通川の上流の方から、パイプ等で水を引いてこられないものでしょうか。

五本 たしかに良い案なんですが、まず建設省(現在は国土交通省)の許可がいるでしょうから、伺ってみなればなりませんね。

中村 アメリカのベニスとも言われるサンアントニオは、街の中心部を流れる川を生かした非常に美しい水都です。驚いたことに、これが松川とほぼ同じ幅で10メートルほどのヒューマンスケールなんですね。

五本 1989(平成元)年だったと思いますが、私もこのサンアントニオへ行ってきましてね。街の真ん中であるにかかわらず、水量が豊富で美しく、大変びっくりしました。
 向こうの方にお話を伺いましたら、「これ以上、水があっては困ります」というくらい豊富とのこと。実際にこんなことができるんだなと感心しました。

中村 実はこの西部の街は、メキシコ湾から500キロも内陸にある砂漠地帯の真ん中にあって、「水のある」川は、このあたりではほとんど見ることができないんですよね。ですから、50キロもの上流から、きれいな湧水を30センチほどのパイプで引っ張ってきて、常時深さ1メートルの豊かに流れる川を人工的に作っているんです。

五本 やはりそうですか。ダム式の水門も、大変立派なのがありました。あれで常に水位を一定に保っているわけですね。

中村 年に1回は川の水を全部外に流して、川底の大掃除もやります。サンアントニオはきれいで豊富な水こそが、〝水の都〟の魅力を決定づけると考え、徹底して予算をかけているわけですね。

 

▼松川遊覧船で、松川の由来から地元・富山の歴史を学ぶ愛宕地区児童クラブの子どもたち(2024年6月29日)。現在、富山の子どもたちが郷土の歴史を学ぶ場としても、松川遊覧船が活用されている。

 

周囲の水辺との一体化で、新たな可能性を

五本 現在、富山県では富岩運河を利用したカナルパークの整備を進めていますので、これらと一体化させていけば、新たな可能性も生まれてくるのではと思います。

中村 実は、松川の遊覧船を、いたち川を通って富岩運河にまで乗り入れてほしいというのが県の意向なんです。昨年、松川に定員72名(当時)の大型船が就航したことで、富岩運河との一体化がより現実味を帯びてきたわけですね。
 これが実現すれば、富山市中心部と岩瀬地区が水上交通によって繋がりますし、さらに広がりが出てくると思います。

五本 そこまで来ると素晴らしいでしょうね。当初の水上バス構想にも一致しますし。

中村 〝東洋のベニス〟〝水の都・とやま〟も、あながち夢ではなくなってくるでしょうね。

五本 確かにそのとおりですね。カナルパークでは桜も植えておりますし、夏場なんかはパラソルを立てて、ヨーロッパ風の雰囲気にできると思います。
 しかし、松川といたち川ではかなり高低差がありますから、実際に船を通す場合は、その問題を解決しなければなりませんね。いずれにしろ、松川、いたち川、富岩運河を船で一体化するという件に関しては、県の方でも力を入れていただき、富山市も観光面から十分応援していかねばならないと思っています。
 あと、松川べり一帯に関しては、大手町(※3)の再開発の問題がありますね。これについてしっかりした形が出れば、単独になっている富山城のお掘をどうするかという問題も出てくるでしょう。

※3 1997年、、大手町再開発事業の施設建築物新築工事の起工式が行われた。

中村 ある方が、松川とお掘を昔のように繋いだらどうかと言っておられました。

五本 今後、城址公園西側の旧消防署や市町村会館が移転する予定ですので、そこに内堀を伸ばして公園化しようというのが現在の計画なんです。

中村 さらに公会堂の跡地をコンベンションセンター的なものにするという計画もあるそうですね。

五本 先ほどのサンアントニオの場合、ホテルからコンベンションセンターへ船で行けるようになっているんですよね。富山でもこのようなことができれば、大変夢のある街になると思います。

 

▼川辺にレストランやホテル、コンベンションセンターなどが建設され、ユニークな水都として多くの観光客が訪れるアメリカ・テキサス州のサンアントニオ・リバーウォーク。

中村 ところで、松川にはもう一つ問題があるんです。自然石の玉石を使いながら、なぜか人工的に見えるんです。その理由は、石積みの玉石の大きさがほとんど同じで一直線。変化がないんですね。自然の風景では絶対にありえませんよね。また、石積みの土の上の部分も、草が伸びてくると根こそぎ刈ってしまい、茶色のハゲ山のようになってしまいます。
 まったく人工的に造られた兼六園のほうが、よっぽど自然に見えるわけですが、それなりに工夫をなさっているそうなんです。石垣に生えている苔を大切にしたり、水辺にシダ類を植えたりしてね。
 松川の良さは自然の良さでもありますし、管理面で少し気をつけるだけで、かなり違ってくると思います。

五本 生えている草を何から何まで刈ってしまうというのでは、確かに自然の雰囲気は保てませんね。自然の良さを創り出すんだ、といった考えで管理面を徹底すればいいのでしょうが…。

 

松川・城址公園一帯を誰もが楽しめる空間に

中村 では最後に、富山市の顔でもある富山城址公園の整備問題についてお伺いしたいと思います。
 私どもでは当初、日本庭園的なものを提案させていただいたわけですが、いろいろ皆さんのご意見を伺っていますと、誰もが楽しめる公園のほうがいいのかなと。例えば、あのディズニーランドのモデルになったという、デンマークのチボリ庭園のようなものです。

五本 チボリは世界3大公園の一つということで、私も行ってまいりましたが、大変素晴らしかったですね。

中村 敷地面積は、城址公園が2万坪でチボリが2万5000坪。松川公園とこれから整備される旧消防署(※5)一帯を含めると、ほぼ同じ大きさなんです。それにもかかわらず、5月から9月という4カ月半の短い開園期間に500万人もの人が訪れるそうです。

※5 現在の富山市営バス駐車場あたり。

五本 私が行った時も、たくさん来ていましたよ。そして、夜のまた賑やかなこと! 昼よりすごいんじゃないですかね。

中村 夜は12時までやっていますから、昼と夜、2回転しているという感じですね。

五本 あれは、さすがに世界3大公園の一つと言われるだけありますね。私たちも本当に感動して見てまいりました。富山市の中心部にも、このような空間が誕生すると素晴らしいでしょうね。

中村 本当にそうですね。

五本 富山城址公園をどのように整備するかについては、これからもいろんな方のご意見をお伺いしていかねばなりませんが、チボリ庭園は城址公園が歩んできた、イベントもできる公園としての共通性もあり、ぜひ参考にしたい一つかと思います。

中村 今後の進展を期待したいですね。本日はどうもありがとうございました。

 

1995年以降の松川遊覧船に関する動き

平成9(1997)年
6月、アメリカ・テキサス州サンアントニオの遊覧船会社「リオ・サンアントニオクルーズ社」と姉妹提携(平成18年再訪)。

平成11(1999)年
8月、旅客船「滝廉太郎Ⅱ世号」に環境にやさしい4ストローク機関を採用。「富岩運河遊覧航路」事業開始。「全国運河サミットinとやま」に、富山県のチャーター便として「滝廉太郎Ⅱ世号」就航。初の「富岩運河探検クルーズ」「ディナークルーズ」を1カ月間開催。

平成12(2000)年
6月、松川茶屋対岸に親水護岸・リバー劇場完成、「リバーフェスタ」開催。
路面電車と松川遊覧船の共通船車券の発売開始、回遊観光を提案。

平成15(2003)年
9月、神通川直線化100周年記念「リバーフェスタ2003・川と街づくり国際フォーラム」開催(後援/国土交通省、富山県、富山市)。サンアントニオ市公園管理者リチャード・ハード氏来富「夢のリバーウォークはこうして誕生した」を講演。松川を視察。「可能性は充分ある」と激励される。
11月、当社社長の案内で、県議、市議、元行政マン、総勢19名でサンアントニオ市を視察(リバーウォークでリチャード・ハード氏と再会)。

平成18(2006)年
9月、「富岩運河いたち川遊覧航路」事業許認可、富岩運河 環水公園〜富山港〜岩瀬運河(カナル会館)の視察運航実施(富山県の港湾行政担当者等も乗船)。
10月、「富岩運河チャータークルーズ」運航開始、「運河まつり2006」にて「富岩運河クルーズ」運航。

平成19(2007)年
4月、旅客船 神通 就航 (環境にやさしい4ストローク機関と、サンアントニオの遊覧船のデザインを採用)。
12月、富山県のチャーターにより、環水公園スウィート・クリスマスで「ナイトクルーズ」運航。

平成21(2009)年
7月、富岩水上ライン業務委託(富山県・富山市)。 (〜11月)

平成22(2010)年
松川遊覧船の乗船人数が運航開始以来、28万人を突破する。

平成24(2012)年
10月、おかげさまで、設立四半世紀・設立25周年を迎えました。

平成27(2015)年
3月、北陸新幹線開業で、松川遊覧船が観光地の穴場として注目を集める。

平成29(2017)年
4月、旅客船 神通Ⅱ 就航 (平成19年就航の神通と同型)。
5月、“水の都とやま”推進協議会設立総会開催。

平成30(2018)年
5月、中心市街地の浸水被害解消や松川の更なる水質保全のため、2012年に工事を開始した「松川処理分区雨水貯留管」が完成し、供用を開始。
9月、「グッドラックとやま」が主体となり、松川の魅力をアピールする〈まちなか水辺遊び〉事業を開始。

令和3(2021)年
3月、「月刊グッドラック」による松川を活かした〝水の都・とやま〟再生への挑戦(中村孝一)が、第23回日本水大賞「審査部会特別賞」を受賞。
8月〜12月 観光庁補助事業にて松川べりの「まち歩き」事業を行う。

令和6(2024)年
1月1日の能登半島地震にて、松川の護岸が被災。
8月、災害復旧工事が始まる。

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