・ 2024“水の都とやま”推進協議会パネルディスカッション・松川の管理レベルを高め、人々の集う美しい水辺空間に!〈後 編〉
・ 2024“水の都とやま”推進協議会パネルディスカッション・
松川の管理レベルを高め、人々の集う美しい水辺空間に!〈後 編〉
さる5月12日㈰に開かれた“水の都とやま”推進協議会のパネルディスカッションの内容を、7月号に引き続き掲載します。
◇パネラー 〈順不同〉
今井清隆 さん(元富山県富山土木事務所長)
京田憲明 さん(㈱富山市民プラザ社長、元富山市都市整備部長)
仁木良市 さん(富山県建設技術センター 専務理事・事務局長)
丹保富美雄 さん(富山県富山土木センター 工務第二課長)
花井千赴 さん(㈱ユニテ 代表取締役社長)
・コーディネーター
中村孝一
(グッドラックとやま発行人、”水の都とやま”推進協議会理事長)
(前号より続く)
管理を民間に委託し、収益を管理費に
花井 皆さんのお話を伺いまして、京田さんの言われたように、松川に管理者を通年置くことが必要なのでは、と思います。私も造園の会社を経営していますが、庭師1人あたり500万もかからないと思います。仮に500万としても5人で2500万ですから、そのお金を中村さんの遊覧船会社に委託するシステムを考えて、観光資源として整備していただけたらいいのではないでしょうか。
また桜の時期だけでなく、通年、観光客を呼ぶためには、土手の方も草刈りだけではなく、グランドカバーをしっかりする必要があります。芝桜など植えるものはたくさんありますし、草が生えにくいようにカバーをきちんとすれば管理がしやすくなります。冬はイルミネーションを点けたりと、冬でも見たいと思えるような空間にしたらいいのではと思います。
富山県民も1回体験したら、友達を連れてきて見せたくなると思うんですね。富山県民がみんな乗るようになり、いろんな友達を連れてきたら、観光客はどんどん増えますし、収益も上がりますので、その収益で管理費も出てくるのではと思います。
行政で管理されている場所なので、民間ではなかなか難しいと思いますが、民間に委託することで民間の力できれいに管理し、収益を上げていくという形で考えていただければいいなと思いました。
「自分たちの川」という意識を大切にする
丹保 私は松川といたち川の合流点近くに住んでいますが、趣味8割、仕事2割という感じで、休みの日によく川べりを散歩しております。いたち川の上流へ行ってみたり、下流へ行ってみたり、松川をずっと歩いてみたり……。
今朝も松川を歩いてきたんですが、つい管理者の目で見てしまい、草が伸びていることも気になるんですが、町内によってはきれいになっている所もあるんですね。特にいたち川は町内の方に草刈りなどをお願いしていますが、もともとあった木がなくなった場所に、町内の方が植え直して、きれいに管理してるところもあるんですね。こんな風に「自分たちの川だ」という意識を持っていただけると、きれいになっていくのかなと思います。もちろん、地域差はありますが。
民間で管理してはどうかというご意見もありましたが、県の方でそういった団体に援助するような制度もありますし、松川でもそういうのができたらいいのかなと思っております。松川の場合は地域住民がほとんどいない川なので、例えばこの推進協議会のような団体が頭になって、ボランティアという形になるのかもしれませんが、草刈りなどをやっていく方法はあるのではないかと思います。
松川を活かした大周遊ルートの夢
仁木 中村さんに初めてお会いしたのは20年以上前で、私が県の広報係長の時でした。他県のタウン誌を招待して、松川を起点に市内中心部を回り、誌面に取り上げてもらうという企画を始められた時だったんですね。県庁前の噴水公園や富山城から池田屋安兵衛商店へ行き、月世界本舗や島川あめ店などの老舗を回られるということで、これは富山市再発見のいい取り組みだなと思っていました。
その時に中村さんから松川の船をできれば環水公園まで通したい、というお話を聞きました。その後、富岩水上ラインやライトレールもできましたので、松川から岩瀬まで船で行き、ライトレールで帰ってくるという、すごい構想につながったわけです。これは先日、尾山(謙二郎)議員も県議会で質問されていますが、観光の面だけを考えると確かに素晴らしいのですが、京田さんも言われた通り、観光と土木という問題は非常に難しくて、いたち川と松川の合流点近くにある固定式の堰の問題や、牛島閘門が小さすぎて船が通れないなどの課題があります。
船は無理だとしても、歩道をずっと歩いて、例えば松川からいたち川を通って環水公園に行ければいいと思いますが、現在は途中の歩道が切れている状態です。
いたち川には石倉町の延命地蔵を始め、謂れのあるお地蔵さんがいっぱいあるほか、源氏鶏太の文学碑や蛍川の映画の記念碑、最後にはどんどこ公園もあり、見どころが豊富です。さらに大泉から南富山駅までの間にも魅力的なものができて、その間も楽しんで、さらに戻ってくると、南富山から岩瀬までの大周遊ルートができるんですね。その間に富山駅や総曲輪もあり、すごく賑わいを創出できると、観光面からはバラ色なことを言えるんですが、土木的には無理な話がいっぱいあり、なかなか難しいのかなと思います。
とは言え、100年、200年かかってもできない話かもしれませんが、私としては南北に市内電車がつながった次は、このくらいの規模の南北をつなぐ周遊ルートが実現したらいいなと思っております。
現在の管理の問題につきましては、私の地元では草刈りや用水の江ざらいなどは自治会のボランティア活動で実施しておりまして、そのような形でやるのも一つかなと思っております。
▼豊かな自然を満喫しながら「親水のにわ」を行く松川遊覧船。
県と市で調整し、行き届いた管理が理想
京田 今年も多くのお花見客で賑わいましたが、松川の桜は本当にきれいですよね。今年の4月初め、奈良に吉野の千本桜を見に行ったんですが、松川の方が圧倒的にきれいでした。もともと、吉野の桜は白山桜というソメイヨシノとは違う種類で、少し遠くの山全体がピンク色から赤っぽい色に見えて、富山の山王祭のように押すな、押すなの行列で観光客が山を上がって行くんです。ですが、うちの嫁と「松川の方が断然きれいだね」、と言って見ていました。
やはり松川のロケーションはとても素晴らしくて、桜は大事です。とはいえ、桜に一切、手をつけてはいけない、ということではないだろうと思います。ソメイヨシノは寿命が短いので、傷んできた木もありますし、そういうものを延命治療のように生かし続けることが、街の景観や賑わい、観光などの面からみたらどうなのかな、と。桜にも命があるのだから、永遠に延命治療をするという意見もあるでしょうが、そこまでして守ることには疑問もあります。
一方、先ほど丹保さんが言われた通り、いたち川の川辺は住民の方々が手入れされてる場所がかなりあります。自分の好きな花とかも植えておられるのも、それはそれで悪くないと思いますが、植えた花の支柱に壊れた傘が立ててあったりすると、これはちょっと違うなと。これは県というより市のレベルだと思いますが、住民向けに講習会などを開いて資材等も提供し、みんなで美しい空間にしていきましょう、と啓蒙できたらと前々から思っていました。
松川の場合、特に県庁から市役所のあたりにあるのはマンションなので、地域住民の方に川べりの管理をお願いするのは難しいと思います。最初からすべての区間を管理するのも大変ですし、とりあえずはこの県庁と市役所の横の1キロ程度の範囲で予算をつけて、そこを管理する人を置くというのが現実的なような気がします。
この時に県と市との管理区分があり、河川そのものは県の管理ですが、桜の木が植えてあるあたりから外側は市が松川公園という公園に指定しており、市の管理になっています。縦割りの行政では、手が出しにくい場所でもありますので、市が一括して遊歩道を管理できたらいいのかなと。市で土手の草刈りなどの管理や遊歩道の掃除などを、まとめてできるようになるのが理想ですね。
現在、知事と市長は非常に親しくて、糸電話で繋がる距離だそうですから、ぜひそれを生かして垣根を取っ払っていただき、ここは県は少しお金も出すけど、全体の管理は市も応分の負担をして、そこは任せるよ、というようなことができたらいいなと思います。
例として、かつて富岩運河の遊覧船を走らせる時に、県と市が一緒に事業をすることがあって、今も県が主体ですが、市も少しお付き合いしてお金も出しているという例がありますから、できないわけはないんです。今のチャンスにそういうことができれば、きっと見違えるような川になるんじゃないかなと思っています。
▼美しい桜並木のトンネルを遊覧船で楽しむ光景は、富山の春の風物詩となっている。
遊覧船会社に管理を委託するシステムの検討を
今井 サンアントニオに行った時、非常に感銘を受けたのは遊歩道です。川沿いの遊歩道がとてもきれいなんですが、朝、早く起きて見に行くと、驚くなかれ、船が出て、観光客が来る前に掃除をしているんですよ。ポンプを使って、水でバーッと洗うんですね。
松川の遊歩道は雨が降ると、いたち川のバックを受けて川が増水し、その時に水が上がりますので、下がった後に泥が残る。あれが滑るんです。あれを取らないと、危なくて遊歩道を歩く気がしませんね。
もちろん制度の問題もありますが、遊覧船の船を使ってバーッと遊歩道を洗っていただけば解決するんですよ。そういった清掃や除草などに必要な資金を、中村さんの遊覧船の会社に委託するシステムを考えるべきかなと思います。あまり大きな金額ではないと思いますが……。
土木事務所長をしていた経験から言いますと、全体の中の一角の管理をなんとか倍にはできても、3倍、4倍にというのはかなり難しい。ですから、やはり別の観点から、管理水準を高めるための資金を作るシステムを考えるべきかなと思います。〝水の都とやま〟の看板である松川をみんなで支えようと呼びかけて、市民などからクラウドファンディングで資金を募るのも一つではないでしょうか。
中村 本日は皆様方から大変貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。これらを活かして、市民が誇れる〝水の都とやま〟のシンボルにふさわしい、美しい松川となるよう、今後も働きかけていきたいと思います。