【其ノ弐】　お気に入りは夕焼け

　私が生まれ育ったのは富山市西町です。当時西町は県下一の繁華街。総曲輪通りに中央通りに大和デパート。縦横に路面電車が走り、ビルの上にはアドバルーン。時折セスナで宣伝ビラがまかれ、平日でも大変な賑わいでした。その頃大好きだったのが電車通りで見る夕焼けです。通りの真ん中から呉羽山に沈む夕陽。行き交う人々。振り返ると立山連峰。夕暮れの町並みが大のお気に入りでした。
　定時になるとデパートの屋上から「夕焼け小焼け」のサイレンが流れます。でもこのサイレン、いつの間にか廃止されてしまいました。うるさいと苦情が出たそうです。
　うるさいどころか今の西町は静かなものです。人々は郊外の大型店に流れ、車に押されて路面電車も追い出され、住民も郊外へと移り住み、往事の賑わいはサイレンと共に消えてしまったようです。