『人間の街』人間的スケールの生き生きした、安全で、持続可能で、健康的な街をつくるヒント
人間の街
ヤン・ゲール著 鹿島出版会
3530円
“何よりも歩く意欲を失ってはならない。日々、歩くことによって健康状態を保ち、すべての患いから遠ざかる。歩くことによってよき思索に導かれ、心を煩わす思いも、すべて歩くことによって取り去られる。”というキェルケゴールの言葉で始まるこの本は、人間的スケールの「生き生きした、安全で、持続可能で、健康的な街」を取り戻すにはどうすればよいかというテーマについて、実践に裏づけられたデザイン論を展開している。
著者のヤン・ゲール氏は、1936年、デンマーク・コペンハーゲン生まれ。同国王立芸術大学建築学部を卒業後、世界各国で研究・教育・実践に携わってきた。
「人間の次元」「感覚とスケール」「生き生きした、安全で、持続可能で、健康的な街」「目の高さの街」「アクティビティ、空間、建築―この順序で」「第三世界の街」という6章立てで、各国の素敵な街角の写真がふんだんに掲載されており、眺めているだけでも楽しい本である。
「気候条件は、街の質、満足度、快適性に決定的な影響を与える。しかし、残念なことに、多くの都市計画は都市空間における自然気候の質を向上させることに関心を払っていない」「歩くのに適した街は、可能なかぎり一年中、昼夜を問わず利用できるものでなければならない。歩行者に乾いた滑りにくい路面を提供することが、街に歩行者を引きつけるうえで重要な役割を果たす」など、興味深い指摘が数多くなされている。