・ グッドラックとやま 2025街づくりキャンペーン ・松川河畔と城址公園で花と緑のイベントを!

 

グッドラックとやま 2025街づくりキャンペーン ・
松川河畔と城址公園で花と緑のイベントを!
「グッドラックとやま」 1997(平成9)年1月号より再編集

 

 県都・富山市のオアシスとして、県民市民に親しまれている松川べりと城址公園。この一帯では様々なイベントが開催され、街の活気と賑わいを創出してきたが、さらに活用していくことはできないだろうか。そのためには何が必要かを、過去に開催した座談会から考えてみたい。

◇座談会出席者
[役職は平成9(1997)年当時]

 埴生雅章 さん(全国都市緑化とやまフェア事務局施設部長)
 佐近成昭 さん(富山市観光物産課係長)
 坂井貞彦 さん(富山市農業センター所長)
 樋掛辰巳 さん(富山県花卉球根農業協同組合参事)
 野沢昭男 さん(富山中央花き園芸㈱取締役主管)
 北山直人 さん(㈲北山ナーセリー社長)

 司会/中村 孝一(グッドラックとやま発行人)

 

富山市中心部に花と緑のイベントを

司会 10年ほど前に、富山県の当時の農産園芸課の主催で、松川にチューリップの花を浮かべる 「とやまフラワーアート」というイベントがありました。その前年、銀座のみゆき通りで、チューリップの花びらを絨毯のように敷きつめるイベントを実施されて大変好評で、 県外だけではなく県都富山市でもPRしたいとの意向で企画されたと、当時の課長さんから伺っております。
 また、ちょうど松川に遊覧船が浮かぶということで、 遊覧船から見る水辺の花も綺麗なのではないか、と。当時の構想としては、県として3年間予算を取って、何とかその3年の間に民間をうまく巻き込み、大きなイベントに育てていければと考えておられたようですが、残念ながら3年で終わってしまいました。
 今年、全国的な規模の緑化祭が富山県で開催されましたが、お話をお聞きしますと、単なる一過性のイベントで終わるのでは意味がない。これを一つの起爆剤として、富山県の花と緑を増やしていきたいし、そういったイベントをあちこちでやってもらいたいと。
それをお聞きしてまして、花と緑のイベントを毎年開催できればと座談会を開かせていただきました。まずは埴生さんから、緑化祭の報告も兼ねてお願いします。

 

成功のために必要な3要素

埴生 皆さん方の大変なご協力をいただきまして、何とか無事終わり、ほっとしております。ご協力いただいた方々、ありがとうございました。今後、この緑化祭からどんどん芽が出て、それらが育っていくことを願っている訳ですが、改めて3点述べたいと思います。
 まず、1点目は参加のための仕組みづくりをきちっとやるのが重要だと思います。民間の様々な業界や団体の方が出やすい仕掛けを作らなければならないと思います。今回の緑化祭でたくさんの方に出ていただいて良かったのですが、民間の方が出やすい仕掛けという面では、今一つだったように思います。
 2点目は、他にない魅力溢れる会場を作ることが大切です。今は皆さんの目が肥えてきてますから、ユニークな良いものを作らないと来ていただけない。そのためには、知恵を持っておられる方々に集まっていただく形で知恵を出すシステムを作ることも必要でしょう。
 3点目は、「是非その時期には、あそこにいかなきゃ」というような、お客さんが集まるための仕掛け作りが必要だろうと。極めて当たり前の話ですが、 そういったことをきちんと積み上げていくことが大切だと思いますね。

司会 砺波市のチューリップフェアは、確か40回を越えているんですよね。

 

▼1989(平成元)年に開催された「とやまフラワーアート́89」では、チューリップの花絵が松川に浮かべられた。

 

大きく育ったチューリップフェア

樋掛 ええ。来年で46回目になります。伝え聞くところでは、 第1回目のチューリップフェアは終戦後間もない頃、私共の組合の先人の方々と当時の試験場の場長さんが、私共の事務所前の田んぼを借り、いろんな品種のチューリップを植えて、皆さんに見ていただこうということで開かれたそうです。ですから、生産団体とチューリップの試験・研究をしている人達が協力して始めたイベント、ということになりますね。
 現在の公園が出来る前は、そこに果樹の試験場があり、たくさんの果樹が植えられていたんですが、それが魚津の方に移転されることになり、それを機に砺波市がその場所をチューリップ公園として造成したんですね。しかし、最初の頃は石が多く、機械が傷んだりと大変でしたね。
 これまで、私共がチューリップの植え込みや管理を市の方から任されていることもあって、お客様からいろいろなご注文があり、それにお応えして、できるだけ満足していただけるように、 毎年毎年工夫を重ねて、現在に至っているという現状です。

司会 大変な積み重ねがあった んですね。今のような姿になっ たのは、いつごろですか。

樋掛 十数年前でしょうか。 木々も大きくなり、落ち着いた雰囲気になってきましたね。

 

▼1952(昭和27)年から開催されている砺波市の「チューリップフェア」。Ⓒ砺波市

 

イギリスで開催される世界一のフラワーショー

司会 北山社長は、世界中の花 のイベントをご覧になっておられるので、アイデアもお持ちですね。

北山 特にヨーロッパでは、各都市でフラワーショーが行われていますね。その中でも一番代表的なものは、イギリスの「チェルシーフラワーショー」だと思います。これは、既に82回も開催されているんですね。
 もともと、戦争から帰ってきた負傷兵のためのチャリティーで始まり、当初から会場はロンドン郊外・チェルシーの陸軍病院の前庭に設けられています。RHS(イギリス王立園芸協会)が主催し、その会員が展示を行っています。世界にはもっと広いスペースで展示をしているフラワーショーもあるんですが、チェルシーのものは一番歴史もあり、 内容も充実しているんです。
 5月の数日間、約3000坪ほどの大テントを中心に、各業者が自慢の植物を飾り込んで展示し、長いものでは3年も前から準備をしているものもあるそうです。
 テントの周りには坪庭のように小さなものから、家庭菜園とかベランダプランターのようなものまでいろんなものの展示があって、そういったものは1週間から10日かけて作られるんです。会期中には新しい商品や技術の発表もありますね。
 初日にはエリザベス女王も訪れ、その後、審査が行われますが、優れているものにはゴールドメダルやシルバーメダルといった賞が与えられるんです。「チェルシーでゴールドをとった」ということは、お金や賞品に代えられない大変な箔になるので、その名誉を得るため、競って最高のものを見せようと努力されるんです。最終日には、展示されていたものの即売もあります。
 今は来場者が増え過ぎて入場制限をしている程で、大変魅力的なイベントに育っていますね。

司会 今、お話を聞いてますと、 そういうのを富山で開催できたら、素晴らしいと思いますね。

佐近 そうですね。素晴らしい と思います。私共の観光物産課 は観光面に携わっているので、 そういった花の方面は本来門外漢なのですが、昨年まで実施していた事業に、城址公園のお掘での「コイフェスティバル」 というのがあります。砺波の方にご協力いただき、 チューリップを鯉の形に並べてお掘の中に置く、というイベントをやっていました。
 これが花とのかかわりの中で私共がやっていた唯一のものかなと。今聞いていますと、やはり花を使ったイベントというのは確かに興味をそそられるところがありますね。

司会 水橋地区では富山の花の名産として、カラーに力を入れておられますね。

坂井 そうですね。実は、富山市に花の市場を作った当時、市内には花の生産がほとんどなく、何を生産すればよいかということでカラーが選ばれたんですね。
 基本的に、2月から6月まで切り花として出荷されているのですが、これを栽培の仕方によって、秋にも咲かせられないか、といった研究もしております。
 課題は、現在の栽培面積が約 2ヘクタールと少なく、PRに回す分まで十分確保できていないことで、まず生産量を増やすことが先ではないかと思います。

司会 花市場の野沢さんはどう思われますか。

野沢 生産量の問題もそうでしょうが、観光の面から考えて果たして相応しい花なのか考えてみる必要もあると思うんです。また、松川・城址公園で花と緑のイベントをやるにしても、最初に予算をどのように確保するかということをしっかりしておかないと、話が先に進まないと思いますね。
 2月の冬のフェスティバルの場合は、各業界の皆さん方がスポンサーになって、案外安定していますし、やり方次第だと思います。

司会 その場合、園芸でいくか、 観光でいくか、さらに両方でいくかということも考えなければなりませんね。

 

ガーデンシティ・ 富山を目指す

北山 富山は持ち家率が高い、という特徴がありますが、これはすなわち庭があるということです。公的な公園もあるけれど、各家庭にも庭がある。これは凄い財産だと思います。
 地域全体が庭になっている訳ですから、富山県が花と緑の日本一を目指すなら、「富山市はガーデンシティだよ」と言える位の街づくりを目標にするべきではないでしょうか。そうすると観光面でも訴え易いと思います。
 その延長線上でイベントを民間主導で行い、行政には場所の提供や名誉ある賞の提供などといった面で協力をお願いできればいいですね。最初から大きなイベントでなくとも、子供達が大きくなった時に本当に誇れる街になればいい、そのくらいのスパンで考えればいいと思いますよ。

司会 このような提案について、 市の方としてはいかがでしょう。

 

▼富山の春を象徴する景色の一つとなった、満開の桜のトンネルを進む松川遊覧船。

 

組織づくりが重要なポイント

佐近 ひとつは組織づくりですね。やはり官の方からのお仕着せではなく、市民サイドの共鳴が必要です。次に予算面。そして、 3つ目には新しい企画。これらの一つが抜けてもイベントはなかなか成功しない、というのが私自身の経験から思います。「チンドン」や「富山まつり」と一緒にやっていくというのも良いかもしれません。

樋掛 以前、私がベルギーに行った折、通りに沿って八重桜が植えられ、その下に真っ赤なチューリップが咲いていたんですが、見事でした。そういった光景が、松川河畔や城址公園で見られるようになると素晴らしいでしょうね。

埴生 あまり人工的に見せるのでなく自然に感じられる演出があると、よりいいですね。

野沢 課外授業的な面から各小学校に呼びかけ、教材として、あるいは自分達の作ったものがみんなに見てもらえるといった形で、日頃の管理をしてもらったり、 予算も部署に関係なく、観光、農林、河川など各方面から少しずつ出していただければ、 塵も積もればで、案外それなりの形になるかもしれません。まずは、組織づくり、人づくりが重要だと思います。

司会 非常に貴重なご意見をありがとうございました。  

 

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