【其ノ三十八】 静寂の世界

柳家さん生・・・昭和32年、富山市西町に生まれる。上野鈴本演芸場等、寄席定席に出演のかたわら、都内各所にて勉強会、独演会を精力的に開催、活躍中。
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  塩釜に行ってきました。東日本大震災で被災した街の一つです。毎年秋、落語会で伺っていた街でもあります。
 幸い、知人はみな元気でした。それでも心配で折りにふれ電話をかけていました。そのうちに、「とにかく一度おいでよ」と言ってくださったのがちょうど100日にあたる頃。思いのほか明るい声に押されて伺うことにしたのです。
 本塩釜駅に着いたときにはさほど驚くようなことはなく、変わらぬ風景が目に入りました。しかしよく見ると芝居の書き割りのよう。無事に見えた駅舎も、あちこちベニヤで覆ってそれらしく見せているだけでした。
 街中は、見た目には元に戻ったようでした。しかし海辺に出るとそこは一面の荒野。荒涼とした世界があるだけです。生活の音はなく、ただただ静けさが広がりを見せるばかりです。


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