【其ノ百七十一】古希になれば…

柳家さん生・・・昭和32年、富山市西町に生まれる。上野鈴本演芸場等、寄席定席に出演のかたわら、都内各所にて勉強会、独演会を精力的に開催、活躍中。

 世間では記念日なんてものをよく耳にする。創立、結婚、独立、誕生などなど。芸能文化の世界ではデビュー周年記念などよくある。
 私は1977年(昭和五十二年)入門で、今年で四十五周年にあたる。思えば、よくこの世界にいて続けられたものです。我々の世界では、この周年記念を声高に言う人はいない。上には上が居る、と言う世界だからでしょ。元気な諸先輩達は、私が生まれる前から落語家をしている人も何人もいる。とても自分などが声高に言えることではないような気がする。最近、お店でも老舗となり五十年なんて聞くと自分の生まれる後にできて老舗? なんて思うことがある。
 もしあと五年経ち、この世界に五十年いられたら、富山に生まれてちょうど七十の歳を迎えることとなる。五十周年を迎えた時に、地元富山は県民会館で「柳家さん生五十周年記念独演会」ができたらどんなに凄いことだろう。どの世界でも専門としてやっている人は、どれほど同じ世界に優れた人・凄い人がいるかを見聞きしてきて、身に染みて自分はまだまだだと思う世界がある。でも古希にもなれば、少しは周年記念を声高に言ってみてもいいのかなと思う。
 いやはや まいどはや

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