栃谷義雄さん(1933-2015) “アラビアの王様のような生涯”

文/中村孝一

 8月20日、栃谷義雄会長が天国に召された。“お会いしたい”と思った矢先の知らせだった。
 “アラビアの王様のように暮らしたい”。その言葉に衝撃を受けたことを、昨日のように思い出す。「攻める方が楽しいにか!」をモットーに、ヤングドライ王国を築き、「おもしろいこと」に挑戦し続けた生涯だった。
 合理化による低料金化や、取次店システム導入による組合からのボイコットも、「“安くて良い仕事を!”という創業者の信念を貫くため、それも良し」と言っていましたね。
 “人を裏切らないこと” “毎日を楽しく生きること”を信条に、言いたいことを言うため、敵も多かったが、友人も多く、しょっちゅう誰かが誘いにくるので、「ストレスをためる暇もない」と笑っていましたね。仕事も遊びも、自分にとって楽しいか、どうかが価値判断の基準でした。 「毎日毎日、楽しく暮らすこと。朝、目が覚めたら『今日、どんな楽しいことがあるか』って考えるんですよ」、と楽しそうに言っていたあなたが忘れられない。
 楽しく仕事ができることが最高!「だから私は、従業員にはアドバイスはしても、命令はせず、みんなが自発的に働くのを待っているんです。だってそうでしょう? 誰だって、自発的に働く方が楽しいし、能率も上がります。結果、いい仕事ができ、給料も多くなり楽しくなる。だから、“目標”を定めず、とにかく“やる”ことにしています」
 常に失敗を恐れず、前向きに、自主性を持って伸び伸びと働く。
 「お客さんの喜ぶ顔を見るのが楽しいね。そういう時は、辛い仕事でも頑張ろうと思える。苦が楽に変わってきますよ」
 「人を公平に見ることが大切。陰日向のある人も見抜けるように。仕事に対して、やる気のある人を集めること。無難な人の集まりより、転んでもそこから何かを学び取るような、ガッツのある人間の集まりにしたい」
 仕事が大好きで、クリーニングにかけては、誰にも負けないという自信を持ち、お客さんから苦情がくると、飛んで行って、「好意を持って」苦情を聞いていましたね。そういう姿に、お客さんの心も次第に和んできて、解決しましたね。
 「楽しく仕事を行うには、嫌なことを先に延ばさない」をモットーにしていた栃谷さん。
 51歳の時、「好きなものも食べられず、行きたい所へも行けなくなって生きていても、楽しくないでしょう。あと、3000日も生きられたら満足」との言葉に表れた潔さ。それなのに、毎年世界旅行に行き、50カ国以上も見て、81歳まで生きてしまった。大大満足の楽しい人生でしたね。
 「ラクダは楽だぞう〜」。先日、テレビでアラブのラクダを見ていて、あなたの飾らない言葉が浮かんできました。それももう聞けないのかと思うと、ふーっと寂しさが襲ってきました。

 

ヤングドライ・栃谷義雄
「成功の秘訣十則」
①仕事も遊びも楽しくやること
②自主的に取り組むこと
③常にお客様第一に徹すること
④とにかく行動してみること
⑤失敗を恐れず、挑戦すること
⑥仕事を人に任せきること
⑦気づいたことはすぐ言うこと
⑧物事はどこからでも覗いてみること
⑨借金をせず、心を豊かにすること
⑩無理をせず、楽しくやること

 

「20歳過ぎの若造の時から、偉い人と同じようにつきあってもらえました。人間性が素晴らしかったですね」
——㈱ナリキ社長 成伯武


おすすめ