12★「はやぶさ」からの贈り物


「はやぶさ」からの贈り物
朝日新聞取材班・著
朝日新聞出版

 

中林みぎわ〈Profile〉

◆宮城県生まれ。富山県天文学会会員。平成14年から21年まで富山市天文台勤務。現在は、子育てをしながら富山市科学博物館ボランティアとして活動。好きなものは、星と月、本、石、博物館巡り、お菓子作り、ビートルズ。

 皆さんは小惑星探査機「はやぶさ」を覚えていますか?2003年に打ち上げられた後、数々のトラブルを乗り越え、2005年に小惑星「イトカワ」に到着。満身創痍になりながらも2010年に「イトカワ」の砂粒の入った回収カプセルを地球へ送り届け、本体は燃え尽きます。その姿は多くの人々の感動と共感を呼び、「はやぶさ」ブームを巻き起こしました。個人的には、人気俳優を主役に据えた映画が何本も上映されたことに、ずいぶん驚いた記憶があります。
 もちろん関連書籍も数多く出版されました。その中から今回ご紹介するのは、「はやぶさ」を計画段階から追い続けた朝日新聞取材班によるドキュメントです。新聞社の科学関連の記者が執筆しただけあって読みやすく、写真や分かりやすいイラストが多数掲載されています。中でも圧巻なのは、大気圏に再突入した「はやぶさ」と回収カプセルの光跡の写真。新聞の一面を飾ったこの写真は、「はやぶさ」最期の姿を撮影したものの中で最高の一枚とも言われます。本書は発行が今から7年前の2011年ですので、それ以降に明らかになったことなどもあります。しかし、「史上最も愛された探査機」といわれた「はやぶさ」の偉業を振り返るには最適な一冊と思います。
 2014年12月、後継機「はやぶさ2」が打ち上げられました。現在、順調に宇宙空間を飛行しており、今年の夏に小惑星「リュウグウ」に到着します。このまま順調に行けば、「リュウグウ」の試料を採取して2020年に地球に帰ってくる予定です。「はやぶさ2」の活躍にも期待したいですね。

 

 

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