13★土星を見るひと


土星を見るひと
椎名誠・著 
新潮文庫

 

中林みぎわ〈Profile〉

◆宮城県生まれ。富山県天文学会会員。平成14年から21年まで富山市天文台勤務。現在は、子育てをしながら富山市科学博物館ボランティアとして活動。好きなものは、星と月、本、石、博物館巡り、お菓子作り、ビートルズ。

 今年は惑星の「当たり年」で、春から秋にかけて、惑星が次々と見頃を迎えます。中でも一番人気は土星。望遠鏡で見られる環のある姿は本当に美しいものです。作家の椎名誠氏も望遠鏡で初めて見た土星が印象的だったようで、その時のことを短編小説として発表しています。作品の書かれた時期などから、作中で主人公が取材する土星観測者は、東京天文台(現在の国立天文台)で土星の観測に長く携わっていた畑中至純氏がモデルとされます。また、描写がとても具体的で、たとえば主人公が取材したのは真冬で「午前三時ごろにならないと土星が観測可能な高さまで昇ってこない」「上から順に火星、土星、木星」が並ぶ、と詳しく記されています。そこから、1981年12月から1982年1月の間のことと推定できます。シミュレーションソフトで確かめながら、作中の記述から椎名氏がその時期に畑中氏を取材したことを推定できるほど、正確に描写されていることに感服しました。なお、のちの対談の中で椎名氏は、宇宙のずっと遠くにある土星と、自身の娘が飼う犬の小さな命とがつながっているように感じた、と述べています。人気作家に小説を書かせてしまう、土星にはそんな魅力があるのかもしれません。
 さて、今年の土星は梅雨があけてからが観察しやすくなります。7月後半から8月にかけて、土星は夜の8〜9時ごろ、南の空に見られます。そのほか、西の空には金星、南西には木星、そして南東には火星と、明るい惑星が4つも見られます。肉眼で見える惑星は水星、金星、火星、木星、土星の5つ。そのうちの4つが揃うのは珍しいことです。晴れた夜に4つの惑星を探してみると面白いでしょう。また、惑星は望遠鏡で見るとそれぞれ違った姿を見せてくれます。金星が満ち欠けする様子や、火星や木星の表面の模様。そして何といっても土星の環!条件が良ければ木星や土星の衛星も見られますよ。こういった姿は大きな望遠鏡ほど詳しく楽しむことができますので、この機会に天文台や科学館などで開催される観察会に参加してみてはいかがでしょうか。

 

 


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