19★ドラえもん33巻『ハリーのしっぽ』


 ドラえもん33巻
『ハリーのしっぽ』
藤子・F・不二雄・作 小学館

 

中林みぎわ〈Profile〉

◆宮城県生まれ。富山県天文学会会員。平成14年から21年まで富山市天文台勤務。現在は、子育てをしながら富山市科学博物館ボランティアとして活動。好きなものは、星と月、本、石、博物館巡り、お菓子作り、ビートルズ。

 「彗星」と聞いて「ハレー彗星」を思い浮かべる方は、おそらく40歳以上の方でしょう(私も含めて…)。ハレー彗星は約76年周期で太陽を周回する彗星で、最近では1986年に地球へ接近し、大変な話題となりました。さらにもう一周期前、1910年には、ハレー彗星の尾の中を地球が通過するほどにまで接近。しかし、誤った噂が庶民の間に広がります。ハレー彗星の尾に含まれる有毒のシアン化合物の影響で地球上の生命が絶滅する、尾の中を通過するときに5分間だけ地球上の空気がなくなるなど… それらの噂を信じた人々が、息を長時間止める練習をしたり、空気をためるために自転車のチューブを買い漁ったり、この世の終わりだと散財したりと、ちょっとした騒動が起こりました。一方で、天文学者や愛好家たちは長い尾をたなびかせるハレー彗星の写真やスケッチを残しました。このハレー彗星、人気漫画「ドラえもん」の中でも取り上げられています。ドラえもんとのび太君がタイムマシンに乗って、1910年の世界へ行き、巨大なハレー彗星の姿を目にします。当時は街灯などほとんどない時代でしたから、さぞ素晴らしい眺めだったことでしょう。さて、次にハレー彗星が地球に接近するのは、43年後の2061年。その時にはどんなハレー彗星の姿が見られるでしょうか? 長生きしてこの目で確かめたいものです。
 43年後のハレー彗星を待たずとも、今冬見ごろを迎える彗星があります。ウィルタネン彗星です。ウィルタネン彗星は約5.4年周期で太陽に接近、1948年に発見されてから12回目の接近となる今回は、ウィルタネン彗星としては発見以来最良の条件で観察できます。地球には12月16日に最接近しますが、月明かりの影響を考えると、12月8〜14日ごろが一番観察しやすいです。くじら座からおうし座のあたりをゆっくりと移動していきますので、天文雑誌やウェブサイトなどで場所を確認してから探してみましょう。12月13〜15日に極大を迎えるふたご座流星群とあわせて、冬の天文ショーをお楽しみください!

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