21★みをつくし料理帖『心星(しんぼし)ひとつ』
みをつくし料理帖
『心星ひとつ』」
高田 郁・著 ハルキ文庫
◆宮城県生まれ。富山県天文学会会員。平成14年から21年まで富山市天文台勤務。現在は、子育てをしながら富山市科学博物館ボランティアとして活動。好きなものは、星と月、本、石、博物館巡り、お菓子作り、ビートルズ。
今回は、人気時代小説「みをつくし料理帖」シリーズからの紹介です。ひとりの女料理人が数々の艱難辛苦を乗り越え、料理によって周囲の人々や自分自身を幸せにしていく姿が描かれ、2014年刊行の第10巻で一度は完結しましたが、昨年9月に特別巻が刊行されました。本シリーズは、季節の移ろいを食材や料理だけでなく、背景の星や月によっても表現しています。豊年星や商人星(さそり座)、錨星(カシオペヤ座)、柄杓星(北斗七星)、鼓星(オリオン座)、五角星(ぎょしゃ座)、十文字星(はくちょう座)、禍星(火星)、そして心星(北極星)。単に星座や星の和名(日本独自の星名)を書き連ねるのではなく、季節や時刻に応じて星や月が見える方角と高度を書き分けているところに、作者の細やかな感性が表れています。また、心星(北極星)は季節や時刻に関係なく常に北天にあってほとんど動くことがないことから、自分の進むべき道に迷い悩んだときに主人公の心の内にある揺るぐことない道標の象徴として、シリーズを通して何度も登場します。読むたびに、自分にとっての心星とは何だろうと考えさせられます。
さて、この季節の夜空に目を向けてみましょう。南の空には、オリオン座のベテルギウスを中心に、オリオン座のリゲル、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバランといった色とりどりの一等星が輝いています。一方、北の空には北極星をはさんで、東に北斗七星、西にカシオペヤ座が見られます。また、この季節は朝の日の出が遅いため、夜明け前の星を目にする人も多いでしょう。東天で目を引くのが二つ並んだ明るい星。明るい方が明けの明星・金星、もう一つは木星。どちらも惑星です。この二星は1月23日に最接近しており、今後は少しずつ離れていきます。なお、2月初旬と3月初旬には、この二星に細い月が近づきます。変化に富んだ星空を日々お楽しみください。