27★「銀河鉄道の夜」


銀河鉄道の夜
宮沢賢治・原作
藤城清治・影絵・文 講談社

 

中林みぎわ〈Profile〉

◆宮城県生まれ。富山県天文学会会員。平成14年から21年まで富山市天文台勤務。現在は、子育てをしながら富山市科学博物館ボランティアとして活動。好きなものは、星と月、本、石、博物館巡り、お菓子作り、ビートルズ。

 毎年この季節になると、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」を読みたくなります。天の川沿いの星座や天体がたくさん登場するので、天文台在職中、星座解説をするときによく引用していました。
 銀河鉄道の出発点・白鳥の停車場は、はくちょう座です。星が十字架の形に並んでおり、北の空高いところに見えることから「北十字」とも呼ばれます。次に出てくるアルビレオ観測所は、はくちょう座にある二重星(肉眼では一つの星に見えるが実際は二つの星が並んでいる星)のアルビレオです。アルビレオは黄色と青の星が並ぶ、色の対比が美しい二重星です。そこから、鷲の停車場(わし座)、ふたごの星(ふたご座)、蠍の火(さそり座)、そしてサウザンクロス(南十字座)と続きます。また、ケンタウルス(作中ではケンタウル)、くじゃく、いるか、つる、インディアンといったマイナーな星座や、石炭袋(コールサック)と呼ばれる暗黒星雲も登場します。「銀河鉄道の夜」は宮沢賢治の宗教観が特に色濃く出た作品であることから、読み難さを感じる人もいるでしょう。じっくり読むことに疲れたら、作中登場する星座や天体を夜空に探してみてはいかがでしょうか。これからの季節、はくちょう座やわし座、さそり座、いるか座がよく見えますよ。ただし、南十字座とくじゃく座、石炭袋は、残念ながらどんなに頑張っても富山から見ることはできません。ケンタウルス座とインディアン座も地平線ギリギリのところに、ほんの少し見えるか見えないか…これらの星座や天体を見たい場合は赤道付近か南半球へどうぞ。私も一度くらいは見てみたいと思っています。宮沢賢治もこういった南方の星座に憧れがあって物語の中に登場させたのかもしれませんね。
 なお「銀河鉄道の夜」は、各出版社から単行本や文庫、絵本など様々な形で出版されています。今回はその中から、藤城清治さんによる美しい影絵の絵本をご紹介しました。宮沢賢治は「銀河鉄道の夜」を執筆するにあたり推敲を繰り返しており、第1次稿から第4次稿までが現存します。本によって収録稿が異なりますので、読み比べてみるのも面白いですよ。


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