9★虹の天象儀


虹の天象儀
瀬名 秀明著
祥伝社文庫

 

中林みぎわ〈Profile〉

◆宮城県生まれ。富山県天文学会会員。平成14年から21年まで富山市天文台勤務。現在は、子育てをしながら富山市科学博物館ボランティアとして活動。好きなものは、星と月、本、石、博物館巡り、お菓子作り、ビートルズ。

 一年で一番寒い時期を迎えました。富山の冬は晴れが少なく、なかなか星空を見ることができませんので、こんな時はプラネタリウムへ行ってみてはいかがでしょう? プラネタリウムなら天候に関係なく星空を楽しめますよ。
 今回紹介するのは、実在したプラネタリウムが舞台のSF小説。タイトルにある「天象儀」とは、プラネタリウムの投影機(=天体の配置や動きを正確に再現して投影する機械)のことです。プラネタリウムの中央に鎮座する、変わった形の、あの機械です。日本のプラネタリウムの草分けのひとつで、1957年に開館し、2001年3月、惜しまれつつ閉館した東京都渋谷区の天文博物館「五島プラネタリウム」。物語は五島プラネタリウム最後の投影が終わったところから始まります。主人公は、最後の投影を務めたプラネタリウムの解説員。プラネタリウムの投影機がタイムマシンとなり、主人公は、第二次世界大戦中、そして終戦直後の東京へタイムスリップします。戦争で焼失してしまうプラネタリウムと五島プラネタリウム、そして主人公が出会う未来のプラネタリウム投影機が、星空への思いを繋いでいきます。確かに、プラネタリウムの投影機は、いつの時代のどの場所の星空をも再現することができますので、タイムマシンのようなものですね。なお、五島プラネタリウムはすでに建物が解体されてなくなってしまいましたが、投影機は渋谷区文化総合センター大和田にて展示保存されています。
 富山県内には、富山市科学博物館と黒部市吉田科学館にプラネタリウム、富山市天文台には光ファイバーで星空を現したミニプラネタリウム(星空の部屋)があります。また日本全国には約300館ものプラネタリウムがあり、学芸員が生解説したり、館オリジナルのキャラクターが出演したり、コンサートをしたりと、それぞれ特色がありますので、見比べてみるのもおもしろいですよ。お気に入りのプラネタリウムを探してみてはいかがでしょうか?

 

 

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