『富山城の縄張と城下町の構造』2003年からの富山城跡試掘調査の成果に立脚し、新たな富山城史を解明

富山城の縄張と城下町の構造
古川知明著 桂書房
5000円+税

2003年からの富山城跡試掘調査の成果に立脚し、新たな富山城史を解明

 この本は、発行された2014年当時、富山市教育委員会埋蔵文化財センター(以下、埋蔵文化財センター)所長を務めていた古川知明氏によってまとめられた。古川氏は、埋蔵文化財センターのホームページに「富山城研究」コーナーを設置するなど、富山城に関する数多くの情報を発信してきた。
 さて、富山城は昭和20年8月の富山大空襲で、周囲の城下町とともに全焼し、その後、北・東・西側の内濠が埋め立てられるなど、江戸時代の趣はあまり残っていない。また、地下駐車場の建設で藩主が住んだ御殿遺構も、大半が消滅した。現在、本丸と西ノ丸の2つの曲輪だけが城址公園となっている。こうしたことから、富山城は城郭としての歴史的価値は低く評価されてきた。
 北陸新幹線開通を前に城址公園の整備計画を富山市が策定することになり、埋蔵文化財センターでは富山城跡を遺跡として保護する方針を打ち出し、2003年から富山城跡の調査が本格的に開始された。試掘調査という小規模な調査だったが、それを繰り返し成果が蓄積したことにより、それまで定説となっていた数々の富山城史を覆すような発見が相次いだ。この本は、それらの発掘成果に立脚した新たな富山城史の解明を企図したものという。
 非常に詳細に調査されており、富山城にもこれほどの歴史があったのかと驚かされる。引用・参考文献も豊富に紹介されており、富山城の研究にとても役立ちそうだ。

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