『都市と川』

都市と川
三木和郎著 社団法人農山漁村文化協会
〈絶版〉

 

都市の川、水辺再生に対する熱い思いに溢れた本

 この本は1984年に発行された古い本だが、都市と川についてよく考察されている。著者の思いが溢れている「まえがき」より、抜粋する。
 〝おそらく水辺は、都市空間のなかでももっとも豊かな空間であろう。その水辺空間の豊かさは、けっして主観的なものではない。「水」だけがもつどのような器にもしたがう性質、比熱が大きく熱しがたく、さめにくい性質、赤い光を吸収し、深ければ深いほど青く見せてくれる性質、光の入射角によって反射率が異なり、見る角度によって水中を見せたり風景を写したりする性質、さらにはせせらぎの音さえ発する性質――私たちのまわりにこれほど多様で変化に富んだ物質はない。〟
 〝都市の豊かさの本質は(もちろん資本主義社会である以上、所得水準を無視することはできないが、いまそのこと以上に重要なのは)、都市の住みごこち(アメニティといってもよい)を決める都市の風格のようなものと、身近な自然環境ではなかろうか〟
 〝都市に風格があるということは、そのまちに住むことに誇りをもてるということであり、身近な自然をもつということは、日常的生活圏のなかに人格を形成し、人間性の回復を可能にする市民的空間を確保するということにほかならない。その都市の風格をつくりだすとともに、もっともすぐれた身近な自然となるのは、都市の川であり、水辺であるといってよい。つまり、水辺再生は、たんに水辺空間をよみがえらせるだけでなく、その本性として必然的あるいは付随的に都市と人間の復権に連なる可能性をもっているということである〟

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