『都市美』都市景観施策の源流とその展開
『都市美 都市景観施策の源流とその展開』
西村幸夫 編著(学芸出版社)
3080円
世界各国の都市美概念の
生成と発展についてまとめた本
2004年12月に景観法が施行され、建造物の形態や意匠に関して、財産権を制限することになるような規制も合法的に行われるようになった。
この本によると、景観規制を実施するためにはその規制が「公共の福祉」(=都市の美しさ。都市美)のためであるといえなければならないという。そして、何を以て都市美としてきたかという考え方は、世界各地の文化圏の長い歴史の中で形成されてきたものであるという。
また、私たちが眺める風景は、風景そのもののうちに美が存在しているのではなく、風景を眺める私たちが美を認識する感性があるからこそ、ある風景を美しいと感じるものであることから、都市美の理念を探る必要があるという。
この考え方に立ち、欧米先進諸国の都市美の理念の源流にまで遡り、都市美の根拠がどのように議論され、いかにして美観規制が成立していったのかを明らかにすることを目指したという。
各章で、イタリア、フランス、ドイツ、イギリス、ベルギーとスペイン、アメリカ、そして、日本の都市美概念の生成と発展について、それぞれの専門家が詳細に紹介している。
例えば、アメリカでは、1890年代から1900年台にかけて全国各地の市民が美化団体を結成し、著名な建築家やランドスケープ・アーキテクトを招いて都市の美化計画を作成し、緑濃い公園、ゆるやかなパークウェイ、美しい並木のブールバール、精巧な装飾の公共建築などを建設していったという。