県議会議員と語る 松川を活かし県都・富山の魅力アップを
37th 2014座談会
県都・富山市の中心部に残る潤いと安らぎの空間、松川河畔。この一帯は、富山の歴史を物語る重要な場所でもある。
アメリカ・サンアントニオへの視察から11年…。来春には北陸新幹線も開業する。
この松川を再生し、富山らしさを創出していくためには何が必要なのだろうか。
富山市選出の県議会議員の皆さんにご意見を伺った。
【出席者】
今井 清隆 さん(元・富山県立山カルデラ砂防博物館 館長)
杉本 正 さん(富山県議会議員・自由民主党)
中川 忠昭 さん(富山県議会議員・自由民主党)
浅岡 弘彦 さん(富山県議会議員・自由民主党)
奥野 詠子 さん(富山県議会議員・自由民主党)
平木 柳太郎 さん(富山県議会議員・自由民主党)
【司会】
中村孝一(月刊グッドラックとやま発行人)
中村 県議、市議を中心とする皆さんとサンアントニオを視察してはや11年。本日はその折に同行された杉本議員、中川議員、元富山県河川課長の今井さん、そして次世代を担うフレッシュな議員さん方を交え、富山の夢を語っていただきます。
歴史的史実を活かした整備を
今井 サンアントニオは素晴らしかったですね。洪水対策をした後、川を中心に色々工夫して護岸のところにホテルやレストラン、お店などを作り、大木も生い茂り、魅力的な〝川の街〟を創り出していました。松川は富山城の外堀だった神通川を、洪水対策で馳越工事を行って誕生した川です。県都・富山市の中心部は、この神通川の廃川地対策の都市計画により、川を埋め立てて県庁やビジネス街を作ったんですね。川から誕生した同じ街としてサンアントニオをお手本に護岸を整備し、魅力ある県都・富山市を創っていくのがわれわれの務めかと思います。
中村 30年程前に、富山市はサンアントニオから姉妹都市の申し込みを受けたんですね。川の誕生した歴史も、街の中心を流れるシンボル性もまったく一緒でしたね。
今井 具体的には、一つ目は西側のお堀を復元し、松川と富山城の南側のお堀をつなぎ、遊覧船のルートに加える。そうすれば国際会議場まで船で行け、観光客が富山の歴史、伝統、文化を、遊覧しながら楽しく学べるようになる。水位の問題は、閘門を作るか松川のレベルにすれば解決できます。
中村 夢のある提案ですね。
今井 二つ目は舟橋や木場町、塩倉橋、馳越線などといった歴史的背景や名称の由来などを、観光客がわかりやすいように解説して松川茶屋付近に集約する。富山駅に降りた観光客は、まず富山城を目指す人が多いでしょうから…。
中村 いいですね。富山の歴史が一目でわかるようになりますね。
今井 三つ目として、滝廉太郎さん。富山に少年時代の2年間を過ごして、富山城内にあった小学校へ通っていたのは事実ですから、もっとPRするべきですね。
中村 事実をしっかり押さえる。
今井 さらにいうと、神通川で伝統的な川魚漁が行われ、ます寿司の文化を発展させた松川の歴史的背景も紹介するといいですね。
中村 これらを実現できると、まさに富山の歴史を活かした〝川の街〟を創ることができますね。
潤いと賑わいの空間に
杉本 〝川を活かした全米ナンバーワンのモデル都市〟サンアントニオを視察して11年経ちましたが、その間の中村さんの粘り強い活動には感服しております。魅力のある街とは「潤い」と「賑わい」の調和した街。「潤い」という字には〈さんずい〉が入っている通り、やはり水のあるところに潤いがあるんですね。そして、さらに「賑わい」を併せ持つと、非常に魅力的な街になるわけです。
この松川一帯が最も賑わうのは、花見とちんどんコンクールの時。1年中、川べりが賑わっているサンアントニオでは、人が回遊できるいろいろな仕掛けがありましたね。松川も塩倉橋と七十二峰橋の間に、もう一本歩道橋を架ければ、リバー劇場で演奏会がある時などは橋からも見れ、とてもいい雰囲気になりますね。
中村 歩道橋があると夢があって楽しいし、ぜひ実現したいですね。
杉本 サンアントニオでは川べりのレストランが魅力的で、賑わいを創り出していました。松川でも、まず屋台やテントなどで実験的にやってみたらどうでしょう。
中村 いいですね。賑わいが、きっと生まれてくるでしょうね。
富山の歴史、伝統、文化、食、
健康増進のテーマパークに
中川 〝水の都〟の富山らしさと言えば、落ち着いた雰囲気の中で水と親しめるということをベースにする必要があるように思います。そのためにも、これから何か作るという時は、じっくり味わえるような本物を作っていかねばなりませんね。活用という点で考えた場合、松川はもっとこの水の流れを活かすべき。例えば、東側のお堀を復元するイメージで、松川から桜木町を通って、明治時代まで南側の外堀だった総曲輪通り、西町にいたる水路を復活させるのも面白いのでは?それを絵にしてみる。
中村 とても壮大な夢のある構想ですね。ぜひ、実現したいですね。
中川 松川一帯の景色は四季を通じて素晴らしいので、ホテルの宿泊客が朝、散歩したりするには非常にいい空間なんです。けれど、今ひとつ楽しめる雰囲気が薄い。七十二峰橋から安住橋にかけて、松川茶屋のようなお店がもう一つほしいですね。
城址公園には郷土博物館や佐藤美術館、松川沿いには高志の国文学館もあり、来年には、旧大和跡にガラス美術館もできます。また、富山城内が滝廉太郎のゆかりの地であると同時に、いたち川沿いも源氏鶏太や宮本輝のゆかりの地。もともと、文化的な要素が非常に集まっており、回遊性を高めていくべきです。
現在、富山大学に所蔵されている小泉八雲のヘルン文庫も、中心部に移設して、もっと多くの方に知ってもらう。さらに富山の歴史的なものをコンパクトに集中させ、食べ物屋さんなども増やしていく。
中村 夢があっていいですね。
今井 現在ある、ます寿司屋さんの存在感が薄い。富山の歴史的史実を背景にもっと整備すれば、ます寿司の価値もさらに高まるでしょう。
中川 回遊性があることで、1、2時間、楽しんで歩けますから、健康にもいい。松川河畔をできれば、半日位ゆっくり歩けるようにして、その街の本物の良さを味わえる場所にする。
中村 この松川と城址公園、一帯を富山の歴史、伝統、文化、食、そして健康増進のためのテーマパークとして整備するということですね。
中川 その通りです。
独自の伝統を残す
浅岡 私は安野屋出身なので、小さい頃から、松川や神通川でよく遊んでいて、いわばホームグラウンドです。私の友達の父親も、先ほど、今井さんがおっしゃられた流し網漁を、チームを組んでやっておられました。この漁法は北海道のアイヌと富山にしか残っていない、無形文化財になるほどの漁法だそうで、現在はやっておられないようです。やはり、こういった伝統をなんらかの形で残すことも大事と思います。
また、今井さんの言われた、松川と富山城のお堀をつなぐというのは、お堀の水も腐りにくくなりますし、メンテナンスの上でも便利ですし、とてもよい案だと思います。ぜひ実現したいですね。
6月の予算特別委員会では、松川といたち川から船で環水公園まで行けないかという質問をいたしました。その時初めて、以前の杉本先生の質問や、中川先生たちがサンアントニオに視察に行かれたことなどを知ったのですが、私たち若手議員ももっと勉強して、松川の魅力アップについての提案をしていかなければと思いました。
中村 いいですね。松川の魅力アップを考える応援団を増やす。市議会議員の皆さんからも、県議会議員の皆さんと情報を共有するため、協議会を設けてほしいという要望がありました。
杉本 やったらいいね。新人議員さんにも視察してもらうため、もう一度サンアントニオへ行きましょうよ。
人が行き交う仕掛け作りを
奥野 松川は、まだまだ活用されていませんね。私自身、視察や旅行などで出かけた時に足を向けたくなるのは、地元の方が楽しそうに集っている場所。ふだんから地元の人がもっと松川近辺を歩く、行き交うような仕掛けが必要かと思います。
また、以前に比べれば川の水質はかなりよくなってきましたが、松川は県が管理している川ですので、この場所を愛する方達だけでは解決しない課題も多いはず。松川は富山を象徴する川でもあり、行政の方でもしっかり支援していただくことが大切ですね。
中村 本当にそうですね。中沖前知事も森市長も、松川の未来の姿をサンアントニオから学ぼうと、あいついで視察もされており、〝地方創世〟の切り札にしたいですね。
小さなことを積み重ねる
平木 松川を整備するには、お堀とつなぐという大きな仕掛けも当然必要ですが、小さなことを積み重ねていくことも大事。富山市内に観光客を呼び込もうと、松川遊覧船が運航されるようになって、はや27年。人が集う仕掛けをどうやって作るかが課題です。
例えば、川にかかっている橋ごとに、子どもたちが何かアクションできる仕組みを作るとか。そうすれば、ここに来る目的がひとつ増えますよね。また、県庁や市役所に見学に来る子どもたちが、必ず松川べりを歩いたり、遊覧船にも乗って、富山の歴史を学んでもらう。そういった企画をしていく中で、松川に自然と目が向いていくのではないかと思います。
中村 いいアイデアですね。
杉本 会議や大会などのアフターコンベンションでも、この松川一帯は非常にいい場所。サンアントニオに行った時は、遊覧船のお客と、「ハーイ!」とお互いに声を掛け合って、とてもいい雰囲気でした。最近、〝おもてなし〟が話題になっていますが、富山の人も「こんにちは!」と、観光客の人に気軽に声をかけてほしいですね。
中川 松川は間違いなく起爆剤になると思います。そのためにも、それぞれの思いを絵にしてみないといけない。この部分であればこうできるとか、協議会で具体的に話し合っていくことが必要ですね。
中村 そうですね。今日の皆様のご意見を少しでも具体化して、松川を魅力アップしていけたらと思います。本日はありがとうございました。