川を生かした街づくりへ

「川と街づくり国際フォーラム」開催15周年記念
「“水の都とやま”推進協議会”」設立1周年記念

 2003年10月、富山商工会議所の視察団が、そして11月には富山県議、富山市議をはじめとする視察団がアメリカ・テキサス州サンアントニオを訪れた。川を生かしたサンアントニオ市の街づくりについて、地元の公園管理者や商工会議所から説明を受け、実際にその魅力を体感した参加者たち。15年が経過する中、それぞれが描いた富山の街の未来図は、どこまで達成されただろうか―。

2004年1月号「サンアントニオ視察報告特集」より再編集

 富山商工会議所の視察団は、2003年10月25日から、超党派の富山県議・富山市議ら19名は同年11月20日からサンアントニオ市を訪問。その直後の報告会では、川を生かした富山の街づくりについて、次のように語っていた。(役職は2004年当時のもの)


観光にかける市民の意識の高さを痛感

濱谷 元一郎 さん(富山商工会議所専務理事)

 ホテルのエレベーターからリバーウォークに降りた瞬間、『これは松川とおんなじだ』と。これをある程度モデルにして作ろうと思えば何でもできる、というのが一番の印象でした。リバーウォークを行き交うコンベンション客の多さには、圧倒されましたが。あれだけの人を集められるのは、安全と安心があるから。体格のいい警備員が24時間体制で警備していますし、ボランティアで清掃や観光案内をするアンバサドール(観光大使)がいて、サンアントニオの歴史なんかも全部説明するんです。観光に対する一人ひとりの市民の意識の高さを感じました。また、障害者用の車イスでリバーウォークを歩けるよう、エレベーターが整備され、階段にも手摺りをつけるなど、配慮がなされていることも目にとまりました。
 富山市内に観光客を寄せるには、歴史、食、リバーウォーク、全部そろった複合施設が必要です。まず最初の拠点をどうするか。城址公園の整備計画を、観光の側面から見直すことも大切ですね。


同じ歴史、目のあたりに 第一歩へ決意新た

中川 忠昭 さん(富山県議会議員)

 神通川から松川といたち川が馳越線工事で生まれたように、川が生まれた歴史が全く同じであったことを目のあたりにして驚きました。コンベンションセンターやレストランがある水辺の空間は本当に素晴らしく、同時に、景観や水質に富山の質の高さを感じ、今後の取組みに向け意を強くしました。その第一歩を県が主体になって踏み出し、新幹線が来るまでに少しでも、と決意を新たにしました。


予想以上の素晴らしさに感動

杉本 正 さん(富山県議会議員)

 予想以上に素晴らしく、サンアントニオを多くの市民、県民に実際に見てもらいたいと思います。いたち川の水の処理については、見学してきたようなトンネルを上流から堀り進め、併せて、下水道合併処理の問題にも対処することが必要ではないでしょうか。少なくとも、今回訪れたメンバーは力を合わせ、前へ進むことが大事だと思っております。


イベントの定着と同時にモデル地区の整備を

五十嵐 務 さん(富山県議会議員)

 富山の潜在的なポテンシャルを感じた、非常に貴重な体験でした。例えば、大手モールで定期的にやっておられるようなイベントを、松川・いたち川沿いで展開し、市民、県民、観光客に定着させながら、ハード面での整備を進めていくことも必要です。商工会議所、民間、市民団体を巻き込んだ協議会を早急に立ち上げ、市、県で協議し、モデル的な整備を始めてみたらと思います。


富山の歴史性、物語性を生かした街に

佐藤 英逸 さん(富山県議会議員)

 80年前に計画され、そして今もまだ改造中である街。市民が楽しんでまたそれが観光にも利用され、産業の大きな柱となっている。素晴らしい先進例を見ました。富山には松川、いたち川、環水公園があり、同じように活用でき、近代化と街づくりを一緒にやってきた歴史性、物語性もPRできる。中心部活性化に向け、新幹線、百年の大計、コンパクトシティをキーワードに、できるところから焦点を絞って、具体化していく必要があると思います。


民間、市、県が一体となった協議会を早急に

横山 真人 さん(富山県議会議員)

 水害をなくすための河川改修と、水辺の空間を生かした賑わいや安らぎある空間の整備を、同時に進めてこられた歴史。また、維持管理が徹底され、さらに観光的な新しい価値を付加しながら、魅力的な整備が続けられていることに感服。北陸新幹線の開通まであと10年強。その間、どう具体的な整備を行っていくか。民間、市、県が一体となった協議会を早急に立ち上げ、一緒に考えていくことが、今最も重要だと思います。


百聞は一見に如かず 富山が先にやるべき

柴 義治 さん(富山市議会議員)

 百聞は一見に如かず、でした。日本の他都市の人がサンアントニオ市を見れば、必ずこういう街にしたいと思うはず。富山が先にやらねば意味がありません。富山には、国際会議場、城址公園、お堀があり、松川、いたち川があり、条件的に恵まれています。百年の大計。焦ることなく、しっかりした基本構想を練り上げることが大切です。


街が豊かな心のふれあいをもたらしてくれた

針山 常喜 さん(富山市議会議員)

 今回の視察は、団員がお互いを尊重し合って、何の違和感もなく盛り上がり、大成功でした。議論を進める中で、民間や県の方々、我々議会が、お互いの持ち場を十分に認識し、自分がどれだけ何をやれるのかを、じっくり考えていきたいと思っています。サンアントニオで皆さん方の心に触れ合えたことを宝として、今後も知恵を交換しあっていきたいと思います。


富山では四季を生かした賑わいづくりを

田畑 裕明 さん(富山市議会議員)

 観光地として洗練され、完成されており、受入先の方々も非常に誇りをもって街を紹介されたことが強く印象に残りました。遊覧船の船長も観光客を楽しませようとショーマンシップにあふれ、遊覧船からも水辺の散策からも、感動を味わいました。サンアントニオは、水を抜いた時に泥んこフェスティバルをしたり、工夫して催しものを企画されている。富山では四季を生かしながら、水辺も生かした街づくりに取り組みたいと思います。


地区ごとに特色持たせ富山に合う水辺の街を

鋪田 博紀 さん(富山市議会議員)

 リバーウォークは、ディズニーランドのようなエンターテイメントの世界、非日常空間。富山では、根本的な街のデザインを皆で議論していく必要があると思いました。松川べりは非常に距離が長いので、ここの区域はこの特色といったように、特色のもたせ方も必要ではないでしょうか。サンアントニオが抱えている課題も率直に聞きながら、これからも意見交換していきたいと思います。


超党派で有意義な視察 百年の大計へ一歩を

丸山 治久 さん(富山市議会議員)

 サンアントニオと共通して、水辺空間を利用した資源が富山市には大変豊富。これを生かした観光施策が非常に重要です。県議と市議と皆さんが、超党派でこのように1回目の視察を行なったことは大変重要な意味があり、これからも議会活動、あるいは施政報告なりを通じて、皆さんとともに考え、百年の大計に向けて、一歩を踏み出していきたいと思います。


滞在型観光の拠点へ 川べりの充実が重要

村上 和久 さん(富山市議会議員)

 平成6年、国から国際会議観光都市に認定された富山市。よく通過型から滞在型の観光にと言われるが、国際会議や全国大会が富山市であれば、富山市に滞在せざるを得ません。アフターコンベンションとして、松川やいたち川、運河など、水辺空間を生かした気軽な観光が楽しめれば、コンベンション誘致にも大変有利になります。滞在型観光の拠点という意味からも、川べりの充実が重要です。


西側のお堀を復活し松川とつなげるルートを

高田 重信 さん(富山市議会議員)

 川を生かした観光について、もっと皆さんにも知っていただきたいと思いました。西側にあったお堀を復元して松川とつなげば、国際会議場などのコンベンション施設と水路でつながり、素晴らしい川の街が誕生する。有志を募り、長期で見る目を持ちつつ、具体的に取りかかれるところから取り組みたいと思います。


通年的な賑わい創出のため、市民の賛同を

中村 均 さん(富山市議会議員)

 サンアントニオのように通年的な賑わいを創出することは、富山の気候を考えるとなかなか難しい面もあります。しかし、何といっても富山を愛する市民が立ち上がり、この夢を具体化して行くため、市民の賛同・協賛を得ることが最も重要だと思います。


市民意識を高め、観光資源・松川を有効に

堀田 松一 さん(富山市議会議員)

 10年後の新幹線によるストロー現象を防ぐためにも、今ある資源を有効に活用しなければなりません。サンアントニオのリバーウォークを見て、ショッピングや飲食、エンターテイメントが楽しめるよう、遊び心のある水辺に整備する重要性を強く感じました。


安全で快適な街、サンアントニオ

南 俊正 さん(富山市議会議員)

 道路レベルの街中を見ると普通の街ですが、一歩リバーウォークへ入ると素晴らしい世界が広がっていました。今後は富山での気運を盛り上げ、何年でこのような街を作るんだ、と目標を決めて取り組むことが大切だと思います。


実現性のあるところから重点的な整備を

松本 弘行 さん(富山市議会議員)

 市議会の議長へサンアントニオ視察報告書を提出し、さらに建設部を中心に配って感想を聞くと、壮大な「夢」だと驚いていました。まず手をつけられるところから、実現の可能性のあるところからやっていく。重点的に松川をどうするのか。城址公園の基本計画を見直し、西側のお堀を復活して、従来の城址公園の姿に戻し、松川とつなぐことは、新しい富山市の魅力を作り出す都市改造の機会となります。「国際会議観光都市」として、恥ずかしくないよう、雨水の下水道流入を防ぐための地下貯留管など、都市基盤の整備計画を促進させる時がきたと思います。


松川・いたち川の快適性向上へ3つの提案

今井 清隆 さん(前田建設工業部長)

 松川やいたち川で百年の大計を立てることはぜひ必要ですが、将来の大計と切り離し、当面は松川区間の既存施設を活用し、利便性、快適性を向上させる考えで取り組んではいかがでしょうか。
 一つ目には、いたち川との合流点に閘門や堰を設け、松川の水位を安定させる。水位が散歩道より10センチ程下がれば、船が大変美しく映えます。洪水対策は、サンアントニオのように地下トンネルで処理することも考えられます。二つ目には、サンアントニオの観光名所・アラモの砦のように歴史的なものを整備する。旧神通川・松川が富山城のお濠としてあった歴史を踏まえ、佐々成政の偉業を浮かび上がらせるのです。三つ目は西側のお堀の再現。工夫して松川からの乗り入れができれば最高です。そして、コンベンションホールとの一体化を図れば、市の中心部に観光拠点が生まれると思います。


人の集まる仕掛けに驚き

嶋倉 幸夫 さん(林建設工業社長)

 松川はもう完全に観光化された川です。治水上の問題は、そんなに考えることはありません。国土交通省も、提案すれば相談に乗ってくれます。あの峡谷にも似た、リバーウォークにどうしてあれだけの人が集まるのか、どんな人が来ているのか、どういう人を呼ぶ松川べりにすべきか、いろいろ考えました。サンアントニオでは、水のきれいさが人を寄せているのではないことにも気付かされました。ですが、人口30万、40万の都市で船に乗り、その川の水を手ですくって飲めるぐらいになれば、世界の観光地では富山しかないだろうと思いますので、その思いは持ち続けたいと思っております。


【参考】
特別寄稿 富山商工会議所 米国産業経済視察報告
水辺空間を生かした街づくり 〜水と緑、商業空間を見事に調和させた都市・サンアントニオ市〜(「商工とやま」H16年1月号)
リンク

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