富山の歴史を生かした観光都市を!

富山城址公園整備懇話会 設立 27周年記念
グッドラックとやま2018街づくりキャンペーン


 北陸新幹線が開業して3周年。「とやま観光推進機構」の調査では、新幹線で来富し、富山市内で宿泊した観光客が最も多く訪れたのは「富山城」だったという(調査期間/2016年10月〜2018年2月)。これは、富山の歴史に関心を持っている観光客が多いことを表しており、富山城址公園一帯は富山の観光に大きな役割を果たしているといえるだろう。今回は、「富山の歴史を生かす」をテーマとした座談会を振り返ってみたい。

「グッドラックとやま」1992年4月号掲載座談会を再編集

司会 グッドラックでは、富山の歴史、文化、観光について積極的に調査・研究し、いろいろ提案させていただいております。
 観光の目玉がないということなら、新たに作っていけばいいと模索していたところ、富山城内に滝廉太郎が住んでいたことがわかり、さらに調べていくうちに、なんとあの有名な「荒城の月」のモデルはわが富山城であった、と私は確信をつかむに至ったわけです。
 現在、滝廉太郎のブロンズ像建立の準備を進めています。富山自身が富山の観光を真剣に考え、活性化に取り組んでいかねばならないと思うのですが…。

 

市内観光コースの設定を

八尾 〝観光〟というものは、景観そのものより、むしろガイドの話の面白さ、そのレベルの高低によって旅の楽しさが決まると思うんです。そこで、目的に応じて市内観光コースを設定し、一連の解説をつけて案内するのもひとつの手ですね。例えば、歴史コースなら、城址公園、郷土博物館、舟橋、前田正甫の銅像に絡ませて、売薬資料館などを紹介するという工夫も大切ですね。

石倉 最近の旅行には、グルメやショッピングが欠かせません。さらに、文化や歴史を軸とした観光見学コースが大切です。城址公園は駅から歩いていけますし、「荒城の月」のふるさとというイメージが定着すれば、観
光の目玉になると思います。

司会 観光に必要な要素が集約された形というと、ディズニーランドでしょうね。1日で消化しきれないほどの数のファンシーショップやレストラン、アメリカの歴史をテーマにしたアトラクションがあって、大人も子どもも楽しめる仕掛けになっているんですよね。

石倉 園内のイベントも絶えず趣向を凝らし、変化をつけていますから、リピーターも多いんです。

 

富山城址公園を拠点に薬の富山をアピール

石尾 ぼくら富山観光案内PRボランティアの会は、昨年9月に発足し、この4月からの活動のために現在勉強中です。愛称の「紙ふうせん」は発足当時、会員のみんなで決めたものですが、富山の歴史の中で全国に誇れる「売薬」から、その名をいただきました。
 先ほども観光コースの話が出ておりましたが、富山の売り物と言えば、まず富山城址公園ですね。薬草園や、売薬を提唱した前田正甫の銅像があって、薬の富山をアピールするのに大変いい場所じゃないかと思っています。
 江戸時代、越中人の約7割が売薬に関与し、紙風船を作った和紙も、地元で作られていた。全国的には薬の富山のイメージが強いですね。

司会 山田野理夫さんの書かれた「荒城の月」の中で、滝廉太郎の富山時代(7歳〜8歳)に、城内の官舎を訪れた薬売りの反魂丹の効能話のエピソードや、紙風船で遊ぶ兄妹たちの様子が鮮やかに描かれていますね。

 

先人の遺産を引き継いでいく

堀岡 観光客を呉羽山に案内して、富山の印象をお伺いしたところ、「富山に初めて来たけれど、前から知っているような気がする」と。幼少の頃から、毎年春と秋に富山から売薬さんが来られるのが楽しみで、売薬さんが来る日だけは遊びにいかないで、お母さんの後ろにくっついて待っていた、と聞き、とても嬉しく思いました。
 私もこの仕事に携わるまで「富山なんか見るとこないちゃ」と言っていた1人なんです。けれど、売薬の歴史を知り、売薬を通して全国の情報を集めて成長してきたという先人の遺産を私たちが引き継ぎ、さらに飛躍していかねばならないことを痛感しています。

 

自信を持って観光PRを

杉村 私はこちらに来て、まだ1年足らずです。これまで何度か転勤を経験していますから、違う土地に行くことには慣れていたんですが、富山と聞いた時、「えー」と。あまりに知名度の低い土地であることに、とても不安を感じました。
 学校の先生に転勤を報告した時も、「ああ、金沢ですか」と言われる始末で、イメージがとても薄かったんです。ところが、初めて富山駅へ降り立った時、白く雪を被った立山連峰を背景にとんびが空高く飛んでいく姿を目にして、なんて素晴らしい所なんだろうと思いました。
 富山は空気がきれいで緑が豊か、水がとっても美味しい土地。それ自体が一本の観光の柱になっているんですから、もっと自信を持って、富山の観光PRをしていくべきだと思います。
 9月に観光ボランティアの研修で松川遊覧船に乗りましたが、案内がテープに吹き込まれていたのが残念でした。少し下手でも、船頭さんが富山弁で案内されるようになると、あの船旅がもっと楽しくなると思います。八尾先生がおっしゃった通り、そこに旅の風情が生まれるんですね。
 松川べり彫刻公園を始めとするプロムナード、城址公園という一帯は、駅から徒歩圏内で、観光の目玉になる場所なんですね。今の城址公園は中途半端で、子どもから大人までが楽しめるようになっていません。家族で楽しめる場所を、ぜひ富山市内に作っていただきたいですね。

司会 富山市内には総合公園が4つあります。呉羽山公園や稲荷公園が自然の公園を目指すとすれば、城址公園は街の中心部に位置することを考慮すると、やはり富山市の応接間、ゲストパークとしての役割を担っていかねばならないのではと考えています。
 富山市は今、〝水と緑と文化の街〟、〝歴史の街〟を目指しているわけですが、この城址公園はそのシンボルとして、風格のある街の「顔」になるべきかと思います。
 昨年発足した「城址公園整備懇話会」は、市民の率直な意見を出し合い、どのような公園が市民と観光客のどちらにも満足できる形なのか意見交換の場を考えています。その意見を集約し、行政に提案させていただければと思っております。

 

歴史を学び、観光に生かす

荒川 富山市観光協会では「観光スクール」を毎年開催しており、昨年と今年はタクシーの運転手さんを対象に行いました。観光客が富山に来て初めて話すのは、タクシーの運転手さんであることが非常に多く、富山の印象を決める重要な役割を担っておられるんですね。

吉崎 昨年の春から、県の「観光道場」の講習を受けていますが、富山のタクシー運転手は無愛想で口下手という評価が非常に多い。今の時代、「おもてなし」の心がなければ観光客に喜ばれないということで、勉強会も行っていますし、慰安旅行で県外へ出かけることがあると、必ずその町のタクシーに乗り、勉強しています。苦情電話に対しては謙虚な態度で受け止め、二度とそういうことがないようにと乗務員教育をしているんです。
 ただ市内の名所には、駐車場がとても少ないので苦労しています。大型バスなどとても停められませんしね。

八尾 20年前、郷土史会に入っておられた元県立図書館長の木下先生が、第二の人生にある交通会社に入られて、バスガイドのシナリオ書きと教育をしておられるとお聞きしていましたが、歴史の専門家がこういう分野にも必要なのかと、興味深く思っていました。
 しかし、韓国へ行くと、タクシーの運転手さんが歴史をとてもよく知っているので感心します。説明を聞いているだけで、楽しさが倍増するんですね。富山のタクシー運転手さんにも、ぜひ職業知識として、富山の歴史を身につけてほしいものです。

司会 県民市民が地元の歴史を学ぶことは、自分たちの街に誇りを持つことにつながります。富山の〝歴史を生かし、観光都市として飛躍〟していきたいですね。

 


▲平成元(1989)年1月11日、衝撃的なニュースが流れ、県民を驚かせた。「何にもない」と言われた富山で、日本を代表する作曲家・滝廉太郎が少年時代を過ごしていた。しかも、富山城にまつわる栄枯盛衰の歴史を題材に、「荒城の月」を作曲したかもしれない。これは、富山にとって重要な歴史・文化遺産。この事実を後世に伝えようと、平成5(1993)年、「滝廉太郎記念館」が完成した。

 


▲平成3(1991)年、「荒城の月園」の造成を目指し、官民共同による「富山城址公園整備懇話会」が発足。池、曲水、滝のある回遊式日本庭園をとの提言に、平成27(2015)年春、北陸新幹線開業に合わせ、開園した。

 

・富山の観光政策の現状・

 昨今、地方創生の重要な成長戦略の1つとして位置づけられるようになった観光。富山県は、平成28年6月、東京に首都圏情報発信拠点として「日本橋とやま館」をオープンするなど、誘客に力を入れている。さらに、昨年11月には、とやま観光推進機構が観光庁の認定する「日本版 DMO(Destination Management Organization)」に登録され、本格的な観光地域づくりを進めようとしている。この「日本版 DMO」が必要となった背景については、主に次のような現状と課題が挙げられている。
(『とやま経済月報』2017年2月号参照)

⑴旅行需要やスタイルの変化
 国内旅行需要は減少傾向にあり、観光客の旅行スタイルも団体旅行から個別の旅行へ。インターネットの普及に伴い、自身が調べて選択するようになり、受け入れる観光地側が地域の魅力を発信し、個々のニーズに対応することが必要となった。
⑵外国人観光客の急激な増加
 地方にはまだインバウンドの伸びしろがあり、日本全国各地域に、外国人旅行者を誘導する様々な取り組みが求められている。
⑶地方創生のニーズの拡大
 少子高齢化、人口減少に伴う地域経済の衰退に直面する中、外から消費を呼び込み、経済を活性化し、雇用や町の賑わいを創出する役割が観光に期待されている。

 

※DMOとは、観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のこと。観光庁の規定によれば、「地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに、地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人」。


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