・ 2024“水の都とやま”推進協議会パネルディスカッション・松川の管理レベルを高め、人々の集う美しい水辺空間に!〈前 編〉

・ 2024“水の都とやま”推進協議会パネルディスカッション・
松川の管理レベルを高め、人々の集う美しい水辺空間に!〈前 編〉

さる5月12日㈰に開かれた“水の都とやま”推進協議会のパネルディスカッションの内容を、今月と来月の2号に渡って掲載します。

 

◇パネラー 〈順不同〉 

 今井清隆 さん(元富山県富山土木事務所長)
 京田憲明 さん(富山市民プラザ社長、元富山市都市整備部長)
 仁木良市 さん(富山県建設技術センター 専務理事・事務局長)
 丹保富美雄 さん(富山県富山土木センター 工務第二課長)
 花井千赴 さん(㈱ユニテ 代表取締役社長)

コーディネーター
 中村孝一
 (グッドラックとやま発行人、”水の都とやま”推進協議会理事長)

 

美しい松川を創り出すには?

中村 本日の「第7回”水の都とやま”推進協議会総会」のパネルディスカッションでは「松川の管理レベルを高め、人々の集う水辺空間に!」をテーマに、皆様からご意見を伺いたいと思います。
 松川の現状をご覧いただく前に、ニュージーランドのクライストチャーチという街の中を流れている川の例を挙げますと、土手が非常に美しく管理されています。この川も遊覧船が行き交っていますが、藤井市長もこの光景にとても感動したと言っておられました。このクライストチャーチの景観は、土手が芝生でなくただの草を刈っただけだったとしても、これだけ美しい光景を作り出すんだということのいい例だと思うんですよね。
 これに対して、現在の松川の状況をご覧いただきますと、例えば土手のところの草がぼうぼうになっていたり、増水した時に川沿いの遊歩道(リバーウォーク)に泥混じりの水が溜まって草が生え、散歩したくても歩きにくい状況になっています。
 草刈りの回数を増やすなど、もう少し管理に予算をかけていただけると、日本庭園のような美しい環境を作り出せるのではと思うのですが、皆様のご感想をお願いします。

 

運営と管理の一体化が解決への近道

花井 私は住宅関連の仕事など、いろんな事業をいくつかやっております。10年以上前から、中村さんに松川が富山市中心部の重要な観光資源であり、サンアントニオのようになるんだという話をお聞きしていて、先日もこの件で意見を言いましたら、ぜひこのパネルディスカッションに参加してほしいということで参りました。今ほど現状をお聞きしますと、サンアントニオのような観光地になるのはなかなか難しいなと改めて感じています。
 なんのために松川があるのか、ということが重要であり、遊覧船の事業が運営側だとすると、管理と分かれているというところに問題があるのではないかと感じました。いろんな問題があるとは思いますが、そのあたりの問題が解決されないと、いっこうに良くならないのではないかと思います。

 

県による松川管理の現状

丹保 松川を管理する立場ですので、非常に耳の痛い話ですが、富山土木センターとしましては、現在、一級、二級合わせて、396kmの河川を管理しております。現在、河川の維持管理に当たる予算は、年度によって変動はありますが、だいたい富山土木センターで2億円程度いただいています。このうち、昨年ですと除草に充てるお金は半分強の1億1000万円で、400kmのうちの150kmぐらいの区間を除草しております。さらにこの3分の1を業者委託しており、残り100kmを町内会など地域の方々にご協力いただき、草刈りしているのが現状です。
 松川については年に2回の除草と、石畳を年に3回高圧洗浄し、600万円程度かかっています。河川全体の中ではお金をかけている箇所ですが、十分な管理はなかなか難しいのが実態です。

 

▼ニュージーランド・クライストチャーチの美しい水辺。

 

松川の管理については再考することも必要

仁木 私は元県職員で、観光振興室のコンベンション・賑わい創出課長として、環水公園のにぎわい創出のイベント等に関わらせていただいたこともあります。また、水上ラインの運航も担当しておりましたが、環水公園に比べますと、やはり今の松川の現状はどうなのかなと改めて感じました。公園管理とは異なる河川管理の難しさがあると思いますが、松川の管理について再考する必要があるのかなと感じています。

 

▼草が生えて歩きにくくなった松川の遊歩道(左)と、雑草が生い茂ってしまった川べり。

 

観光の視点で松川の管理を考える

京田 私は富山市の職員として、昭和から平成に変わる時期に、公園緑地課で城址公園の工事の担当をしていました。その時に県の許可をもらい、少し松川に切り込みを入れさせてもらって、七十二峰橋横の親水広場(親水のにわ)修景事業を行った経験があります。
 その時に中村さんから松川をサンアントニオのようにしたいという思いを聞き、それは素晴らしいですね、といろんなお話をさせていただいてきました。
 私はもともと、市役所の土木系(造園)ですが、土木サイドで考えてしまうと、維持管理費は全くないんです。市も、おそらく県もそうだと思いますが、今後、新しいものを作ることはできないんじゃないかというくらいに、維持管理にウェイトが必要になっていっているんです。しかも、十分な維持管理費があるわけではありませんから、土木センターの課長さんがおっしゃったように、予算の中でどうやって工面するか、非常に苦労されていると思います。
 一方で、松川の管理水準を上げた方がいいのは、まさしく今日のタイトルの通りで、そこは土木の視点ではなく、観光の視点で見るべきなんだろうと思っています。土木の視点で管理をしようとすると、治水が優先されたり、市内、県内のたくさんある河川の中でどうやって管理していくのかということになってしまって、限られた予算ではこれが精一杯ですということになるんでしょうが、観光の見方で見たら、全然違ってくるのではないでしょうか。
 例えば、島根県の「足立美術館」は、美術作品を見に行くというよりは庭を見に行くという人が大部分です。庭師が葉っぱ1枚落ちてないくらいにきれいな庭を作り、世界でも大評判になり、日本で一度は行ってみるべき庭園のベスト一位に選ばれているんです。現在は年間50万人ぐらいの人が有料で入っていますが、6人ほどの庭師さんが常駐し、一年中、庭の管理をされているようです。
 庭の管理ですから、ほとんど人件費だとすると、一人平均、仮に500万だとすると3,000万、多く見ても1億までは絶対いってないだろうなと。その管理費で、入館料2,300円×50万人とすると、ものすごい金額になります。そんなふうに考えると、松川にどこからお金を出すかというのは別にして、数千万円の管理費を毎年かければ、きっと経済効果としては、数十億円になるんだろうと。で、それが直接、県とか市に落ちるわけではないにしろ、地元の経済界に落ちるのはそれは間違いないだろうと思います。
 サンアントニオやクライストチャーチ、韓国の清渓川など、川を美しく整備しただけでたくさんの人が来る。それが地元に落ちるというのは非常に大きなことなので、やはり県、市を含めて、そこに投資をする。特に、管理水準を上げる年間に数千万というお金は、おそらく県と市が本気になれば、そんなに難しいことではないと思いますので、そういうものができれば本当にいいまちなかの観光スポットになると思います。
 川をきれいにしただけで人が見にくるのか?と思われそうですが、日本で一番きれいな川にすれば、たくさん人は来るはずです。
 “富山の本気”で有名な写真家のイナガキヤストさんも松川遊覧船の発船式には毎年、お越しになっています。写真家の目でも非常に素晴らしい場所だと感じておられますが、きれいにしていくことでさらにいい場所になると思いますので、是非、皆様方のお力を結集して、まずは管理水準を上げる。で、人が来始めたら、そこで整備を進めていく、ということができればいいなと思っております。

 

▼美しく管理された、足立美術館の庭園。

 

ゆかりの歴史を活かし、松川の集客力を上げる

今井 私は土木センターの所長をしておりましたので、管理の予算がないのはよくわかります。一方、在職中には松川に関わる工事をいくつもさせていただいており、今でもとても思い入れがある川です。河川課長として最後の年に中沖知事のバックアップもあり、かなり反対意見もある中を強引に押し切ったのが、松川茶屋の川向かいに舞台(リバー劇場)を作る工事です。あそこは実は昔の橋台の跡なので、前面をカットして、広場を作ったんです。その他、途中に3カ所程ある、道路から下の遊歩道(リバーウォーク)に降りられる階段も作らせてもらいました。
 退職後、グッドラックさんの企画で県議・市議がサンアントニオへ視察に行かれた際は、実費で同行させていただきましたが、その時に重要なことに気づいたんです。サンアントニオのリバーウォークはもちろん素晴らしいのですが、すぐ横に有名な「アラモの砦」がある。あれだけの名所が近くにあるので、集客力も倍増しているわけです。
 松江城(島根県)のお堀の遊覧船も見てきましたが、近くに武家屋敷や小泉八雲の記念館があったりとプラスαの要素が整備されていることが誘客につながっているように感じました。
 これは管理とは違う視点ですが、富山の場合も富山城の歴史などを全面に出して、松川をもっと強力にバックアップすべきだと思うんです。京田さんが作られた「親水のにわ」も、もっとアピールするべきだと思うんですが、カラスの捕獲施設が近くにあるというのが実状で、とても残念ですね。
 もう一つは、滝廉太郎の『荒城の月』ですね。あれはまさに滅びがテーマの歌で、富山城の歴史とぴったりなんです。『荒城の月』のモデルは大分県の岡城というのがこれまでの定説になっていましたが、岡城には滅びゆく歴史はないですからね。富山の人はもっと自信を持って、富山城と『荒城の月』の関わりを前面に出すべきだと思います。 
 そういった諸々の歴史をもっと押し出して、松川をバックアップすれば、もっと人は来ると思います。松川茶屋の一角に滝廉太郎記念館がありますが、世界的にも有名な『荒城の月』が生まれたのはこの場所なんだ、と堂々とPRしていきましょう。一歩一歩だとは思いますが…。

中村 皆様からの貴重なご意見、誠にありがとうございます。それでは次に、松川の管理レベルを高めるための、具体的なご提案をお願いいたします。

(次号へ続く)

 

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