サンアントニオ視察から20周年 神通川から生まれた“松川”は“水の都とやま”の大切な宝物! “水の都とやま”推進協議会(2023年5月14日開催)パネルディスカッションより 【前編】

・出席者/松本弘行(元富山市議会議長、視察団長)、柴 義治(元富山市議会議員)、高田重信(富山市議会議員)、堀田松一(元富山市議会議員)、村上和久(元富山市議会議長)
・コーディネーター/中村孝一(月刊グッドラックとやま発行人)

▼右より、村上和久氏、堀田松一氏、柴 義治氏、高田重信氏、松本弘行氏、中村孝一。

川を活かした夢の街、サンアントニオ

中村 ちょうど20年前にサンアントニオを視察したわけですが、その時の市会議員さんが11名、県会議員さんが5名、あと、県の元土木部長、元河川課長も参加されました。当時団長として参加いただいた松本様から、まず一言ずつお願いいたします。

松本 あれからもう20年にもなると、驚いております。その時の視察によって富山市とサンアントニオの共通性ということを学ばさせていただいて、大きな夢をいただきました。しかし、やはり、実現には大変な期間と費用もかかる。しかも、この夢を夢で終わらせないで、なおかつ、〝世界遺産”にも、ということですから、この壮大な中村さんの〝ロマン”といいましょうか、そういうものを今、お聞きして、やはり、人は〝夢”を持つべきだなとつくづく感じました。

高田 サンアントニオの話は聞いていたんですが、現実そこに行くと、なんか夢のような場所で、雰囲気も含め、街並み、そして、リバーウォークというのが、すごく感動的でした。こういうのが富山にできたら、本当に素晴らしい観光地になるし、大きな財産になるなという思いで、その後、先輩である村上議員とは、いろいろ相談もしながら、城址公園の改修の中で、松川べりの整備ができないか、ということも、市や県の方にも言ったりしていましたが、なかなか現実的には厳しい環境にあったかなと思っております。
これから100年後、200年後、という姿を思い浮かべる時には、どこからやるべきなのかということを現実的に今一度、しっかりと足元から見つめ直したいなと思ってます。その中でも大事なのは、今後の城址公園の改修の中で、松川遊覧船のりばも含め、どのようにしていくのかということではないでしょうか。

 当時は、私も勉強したいなという思いがいっぱいで参加させていただきましたが、まさに「百聞は一見にしかず」で、目から鱗でした。これからまた、皆さんと一緒に、松川を生かした神通回廊構想について勉強させていただければと、こんな思いで今日は参加させて頂きました。よろしくお願いいたします。

〝水の都とやま〟に向け、 機運づくりを

堀田 20年前のことを思い起こしてみますと、あの時はリバーウォークにみんなで一緒に行こうということで行ってきましたが、別世界を見てきたような思いでした。道路の路面から5メートルほど下がることによって、別世界がひそんでいました。音楽、飲食、遊び心、3者が混合して…。そして皆さんが食事をしたり、語り合いながら、楽しい時間を過ごしている。私たちにとっても、夢のような時間でした。
それから同僚議員も市議会で質問されたり、この20年の間に、何か前向きにもう一歩進まなかったのかなという思いもいたします。松川の改修については、県と市がスクラムを組んで、その実現に向けての調査費が予算化されれば一歩進みます。今後の若い人達が、「〝水の都とやま”のシンボルである松川を発展させていこう」と、そんな機運になっていただきたいなということをつくづく感じています。

村上 20年前は、3泊5日という非常に強行軍でしたけれども、サンアントニオでは観光客を受け入れてくれるという雰囲気を非常に強く感じました。実際我々は3日間過ごしましたが、夜、外に出ても治安の良さを感じましたし、昼間に自転車に乗っている警察官の姿を見て、非常に新鮮だなと思いました。その警察官の姿を見て、治安が維持されている、観光客が安心して過ごすことができる、と思いました。
当時の資料では800万人の観光客となっていましたが、今では1400万人を超えているということですから、非常に発展しているということですね。20年経った今、考えられることを後ほどお話ししたいなと思っています。

「あっ!サンアントニオだ!」と、観光客の声

中村 今、改めて20年前を思い出して、皆様それぞれの目と耳で感動してくださっていたんだなということが伝わってきました。20年前にタイムスリップしたような感じですね。
私たちは地元にいて、どうしても見慣れてしまいますが、先日、初めて松川遊覧船からの桜を見に来られた兵庫県の方から手紙をいただき、非常に感動したんです。その方は47年前にサンアントニオを訪問されたそうで、「あっ!サンアントニオだ!」という情景を松川の階段を降りていかれる時に感じられたそうです。私たちは20年間、非常にすごいことをやってきてるんですね。
一つは、松川茶屋横の階段式のカフェテラス。サンアントニオが土手をうまく利用し、テラスに使っていることにとても感動したのがきっかけなんです。国内ではどこにもなかったですからね。様々な制約がある中、松川をサンアントニオの雰囲気に近づけていくとしたら、どんなことができるのか――。松川は特に桜が素晴らしいですから、この桜をそのまま生かして、できることを考えました。そんな中で一つだけ実現できたのが、松川茶屋の横のカフェテラスなんです。2003年当時、あのテラスは水平だったんですが、そこを階段式にするのが、一番実現しやすいと思いましてね。

一歩ずつ進んできた松川の環境整備

管理しておられる県の河川課に要望したところ、そんなことは前例がないと。遊覧船を始める時も、前例がない、と反対され、実現までに時間がかかりましたが、松川茶屋対岸のリバー劇場(2000年完成)も提案してから5年かかったんですね。そして、この階段式のカフェテラスも、5年かかりました。それを見て、「あっ!サンアントニオだ!」と感じる方が実際におられたということは、少しずつ近づいて来ているということです。皆さんが、20年前に視察されたことは決して無駄にはなってないと思います。
コロナの3年間、遊覧船の乗客も8割減り、大変な状態でしたが、今、ようやく元に戻りつつあります。そして、国内はもとより世界中から来られた観光客が、松川を見て、「富山にこんなすごいところがあるんだ」と驚いておられます。皆様方の努力がしっかり反映されてきているんですね。

▼階段状のカフェテラスから川べりの景色や遊覧船を眺めながら、談笑する人々。

川の美しさが何よりも基本

県の元河川課長だった今井清隆様もこの視察に同行されていましたが、以前、この席で講演いただいた時、サンアントニオの河川管理について自分が一番びっくりしたのは、「川にゴミがなかったこと」だと。というのも、早朝から、市が中心になって掃除をしているんですね。
サンアントニオは夜遅くまで飲食店が営業し、遊覧船のディナークルーズもありますから、誤ってゴミが落ちることもあるでしょう。そうすると、あそこも松川と一緒で流れが非常にゆるやかな川ですから、落ちたゴミがそのまま水辺に浮いていたりするんですね。それを観光客に見せてはいけないと、なんと、朝5時から毎日清掃している、というんです。
我が富山はどうかと言うと、当時は、桜シーズンに向かって、川の掃除は春先に1回だったんじゃないでしょうか。ところがサンアントニオに行ってきて、その様子を県に報告したところ、回数が増えたんです。サンアントニオのように毎日という頻度ではないんですけど、2回、3回と清掃回数が増えて、松川がだんだんきれいになってきてるんですね。そういったソフト面でも、いくらでも国内一の美しい川にできるんだな、という感じを受けました。
当時は皆様方がそれぞれの目で見て、それぞれ行動しておられましたからね。先ほどご挨拶いただいた田畑裕明議員も、当時、市会議員の中で一番若手だったんですが、あちこち視察に回っておられました。彼に夜、リバーウォークでばったり会ったんですが、「本当にすごいですね、松川と一緒の雰囲気の川でこんなことができるとは…」と、非常に驚いておられたのを覚えています。

桜以外の魅力づくりが課題

ということで、できるところからやっていく、ということが大事だと思います。サンアントニオには桜の木は1本もないんですが、毎年1400万人の観光客が来るようになり、アメリカではコンベンション都市として、大成功したんですね。そういうことが桜がなくてもできている。松川の場合、桜の花がない時に、どうすれば観光客や市民が集まるリバーウォークを作ることができるのかが大きな課題ですが…。
この松川のリバーウォークは、ちょうど遊覧船が始まった36年前の翌年、当時の中沖知事が指示を出して作られたんですが、サンアントニオが大好きな方で、まだ現地に視察に行かれる前だったんですが、写真を見て、リバーウォークを作るように河川課に指示されたそうです。知事になられてまだ数年の頃で、河川課は「前例がない」と最初はやはり、反対したそうです。川の中にそういう構築物を作ってはいけないと…。それを知事の強い権限で、リバーウォークを作られたわけです。

富山らしい理想の姿に近づけていく

今、土手の桜のある場所に、ホテルや飲食施設を、サンアントニオのように作れるかというと、それは無理だと思います。これは、桜がなくなってしまった何十年後にどうするかという、長期ビジョンになりますよね。
そんな中で昨年、松川べりに富山県防災危機管理センターが完成しましたが、サンアントニオの川べりにあったホテルの雰囲気にも見えたりします。用途が違うだけで、立派なビルが川べりにあるというイメージはそっくりだと思います。ですから、できるところからやって、少しずつ理想の姿に近づけていくのが重要なのかなと。
皆様方はサンアントニオの素晴らしさを知っておられる、富山の貴重な人材ですので、こうしたらいいんじゃないか、というご意見を次にお聞きしていきたいと思います。(次号につづく)

▼昨年10月に完成した、富山県防災危機管理センターの前を進む松川遊覧船。

おすすめ