8年間のアメリカ体験を、富山の発展に役立てたい

一般財団法人 北陸経済研究所 理事長
川田 文人 さん

世界貿易センタービル78階の北陸銀行ニューヨーク支店で勤務していた1993年に、地下駐車場で爆発事件が発生。当時の深澤文敏支店長から、本社にニューヨーク支店の移転を提案する文書の作成を依頼され、その文書により移転が決定。2001年の同時多発テロでは、世界貿易センタービルが崩壊したが、その難を逃れる事ができた。8年間のアメリカ生活で感じたことなどを聞いた。

 「世界貿易センターの地下駐車場で爆発があったのは、午後1時近く。その後、歩いて地上に避難したのですが、途中、48階ぐらいのところで止められて、順番に小出しで降りたものですから、時間がかかり、地上に降りたのは、午後4時半頃だったと思います。その体験をドキュメント風にまとめたんです」
 その真に迫った文章が、本社に移転を決意させた。
 「ちょうどオフィスがあったあたりに飛行機が突入しましたので、あのままいたら、みんな即死だったでしょうね」
 アメリカのコーネル大学経営大学院で、MBAを取得。
 「やっぱり、アメリカは、プラグマティズムの国だなという感じを受けました。教科書の知識をただ学ぶのではなくて、それを実際にどう使うかが問題だというような教え方というのは、目から鱗というか。日本の場合は、難しいものを難しく、ありがたそうに教えるというところがありますけどね」

 アメリカ時代、モニュメント・バレーを訪れた。
 「日本にはない荒涼とした景色で、印象に残っています」
 今年3月14日、いよいよ北陸新幹線が開業する。
 「交通は、社会にとって大きなインパクトがあり、人の行き来が増えることで、いろんな意味でチャンスが生まれます。また、最近の若い人は必ずしも東京に住むことにこだわらない人が増えており、その中で北陸新幹線が、地方の活性化、東京一極集中の是正に役立ってくれればと思います」

かわた・ふみと●
1954年(昭和29年)3月、氷見市生まれ。京都大学経済学部卒。1977年4月、北陸銀行入行。1985年〜1987年、コーネル大学経営大学院で学ぶ。修士課程卒(MBA)。1987年〜1993年、同行ニューヨーク支店。その後、京都支店長、富山駅前支店長、新宿支店長、執行役員 本店営業部長、執行役員 融資第一部長、常務執行役員 融資第一部長を歴任。2012年、北陸経済研究所 理事長。富山大学経済学部客員教授、金沢工業大学客員教授も務める。 ○座右の銘…「天命に安んじて、人事を尽くす」(清沢満之)
○一番大切にしているもの…「自分の考え方、理想は、最後のところは守りたい」 ○趣味…読書、美術鑑賞 「読書は歴史関係。絵画は、琳派や若冲をよく見ます」
○家族…妻、長男、長女 「子どもは2人とも独立しています。長男は、結婚して、外資系に勤めて、シンガポールにいます。娘は、東京の方です。旦那さんが医者で、今、大学院で心臓病の研究をしています」

 

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