セーヌ川とパナマ運河をつなぐ夢

白井 芳樹さん
1947年(昭和22年)、香川県生まれ、東京大学工学部都市工学科卒業後、建設省入省。
国・公団・自治体などで都市計画、土木行政に従事し、2001年退職。富山県に二度出向し、都市計画課長、土木部長、公営企業管理者を務める。2005年東京大学工学博士(土木史)。現在(一社)全日本土地区画整理士会会長。著書に『とやま土木物語』(富山新聞社)、『都市 富山の礎を築く』(技報堂出版)など。

 神通川に舟橋が架かっていた頃から、河口の東岩瀬港と富山市街地を水運が結んでいた。第二次大戦後、トラック輸送が主流となり水運が途絶えて久しい。

 

(20世紀末の夢)
 一九九九年、ぼくは県土木部長として四年目を迎えていた。かつての駅裏は都市MIRAI事業で新たな都市拠点となり、埋め立ての危機を乗り越えた富岩運河は新たな公園・運河としてよみがえり、復元された中島閘門は国指定重要文化財になった。そんな頃、ぼくは本誌に一文を寄せ、いろいろな夢を描いた(第264号、1999年11月)。
夢①船の路 運河を船が上り下りする、さらに松川を経て城址公園まで舟が行き来する風景。そのため埋め立てる計画の牛島閘門を保存・復元できないか
夢②花の径 桜の名所松川からいたち川を経て運河へ続く桜並木の風景
夢③賑わいの場 多くの人が集い賑わう風景。環水公園に面して、カフェやレストランができないか
夢④歴史を学ぶ場 神通川の水害を克服し、電気を起こし、産業を興し、発展してきた富山県のあゆみを体験学習する場にできないか
夢⑤都市型観光地 ①〜④の相乗効果に加え、〈運河〜港〜岩瀬の町〜富山港線〉の回遊
夢⑥運河の町 今は「富山の町に運河がある」、将来は「運河のある町、富山」に

 


▲安住橋に似た橋をくぐるセーヌ川の遊覧船

 

(夢のいま)
 十七年前に描いた夢は、嬉しいことにほとんどが実現した。
夢①→富岩水上ラインが環水公園〜富山港を結び、復元された牛島閘門は国登録有形文化財に
夢②→環水公園や運河の沿線に桜が植樹・生育中
夢③→親子連れや老若のカップルが散策し、スタバやラ・シャンスは客で賑わい、まもなく近代美術館も
夢④→富岩運河語り部の会や水上ラインのボランティア・ガイドが活躍中
夢⑤→ポートラムや新幹線の開通後、環水公園を訪れる観光客が増加中
夢⑥→「運河の町を愛する会」による様々なイベントが展開中

 


▲混雑する松川の遊覧船乗り場

 

(夢のつづき)
 年の初めに夢をみた。富山のセーヌ川と呼ばれる松川と、パナマ運河と同じ形式の富岩運河をつなぐ夢である。港と町なかをつなぐ水運の復活だ。この水運は、水の上から沿川の風景を楽しむものである。富山港〜富岩運河〜環水公園〜電気ビル〜桜橋〜県庁舎と、置県以来の遺産を巡って、富山城址にいたる歴史の旅でもある。船には、米や材木ならぬ大勢の人々の笑顔が満載である。

 

年の初めに夢をみた。富山のセーヌ川と呼ばれる松川と、パナマ運河と同じ形式の富岩運河をつなぐ夢である。港と町なかをつなぐ水運の復活だ。

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