『パリとセーヌ川』セーヌ川を舞台に繰り広げられた生活、習俗、文化を歴史的に跡づけた本

パリとセーヌ川
小倉孝誠著 中公新書
絶版(古本の販売あり)

セーヌ川を舞台に繰り広げられた生活、習俗、文化を歴史的に跡づけた本

 小誌によく登場する、『パリ市の紋章』。セーヌ川を航行する帆船を表し、「たゆたえども沈まず」とラテン語で記されている。
 さて、セーヌ川はブルゴーニュ地方の山中に源を発してパリを通り、イギリス海峡に注ぐ全長776キロの大河。日本で最長の信濃川は367キロなので、2倍以上の長さがある。なお、一般のフランスの河川は勾配が小さく流れがゆるやかで、年間を通じての流水量の差が小さい。川の最小流量に対する最大流量の比率を河川工学の用語で「河況係数」と呼ぶそうだが、この係数が日本の河川は際立って高いという。テームズ川が8、ライン川が16、セーヌ川はそれより高くて34、それに対して日本の川として比較的流れのゆるやかな信濃川でも64、富士川や利根川に至ってはそれぞれ400、850となるそうだ。もともとセーヌ川は船の航行に適した川だったわけだが、それでも可動堰の発明がパリ市内のセーヌ川の航行を安定化したという意味で決定的だったという。1820年頃、オート=セーヌ県の技師だったポワレが川に堰を設け、さらにそこに閘門(水門)をつけることを思いつく。この「閘門付き可動堰」は、川の流量に関係なく水位を上げて一定の高さを保つことを可能にし、かなり大型の船舶でも季節を問わず市内に乗り入れることが可能になったという。また、セーヌ川の支流であるマルヌ川、ヨンヌ川、オワーズ川なども可動堰によって運河化されたのだという。


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