『都市を編集する川』ー広島・太田川のまちづくりー
都市を編集する川 ー広島・太田川のまちづくりー
企画・構想 中村良夫 北村眞一・岡田一天・田中尚人著
渓水社 1980円
広島・太田川の情緒ある水辺が
どのように生まれたのかがわかる本
2003(平成15)年度に、土木学会デザイン賞の特別賞を受賞した広島・太田川の河川整備。その河川デザインには、東京工業大学名誉教授の中村良夫氏の熱い思いがこめられているという※。
この本の「はじめに」で、中村良夫氏は次のように語る。
「近代都市計画は、水辺のような公共空間に飲食などの個人的な歓楽を持ち込むことには躊躇しがちでした。理由はさまざまです。第一に公共空間の利用に関する平等性の確保、第二に民間占用による私物化の危惧、そして歓楽という大衆現象にたいする慎重な感情など、ある種のマジメさがその背景にあるのですが、そもそも公と私を完全にわけるのは不自然です。無菌状態の場所は温か味に欠けます。家族が飲食を楽しむ水辺のレストランなどは、排他的な一面もありますが、ある程度の所有感がないところに人間の愛着はわきません。水辺を中心としたまちづくりには、この矛盾を解決する知恵が必要でしょう。カフェ、レストラン、あるいは屋台などは、だれでも一定の料金を払えばいくばくかの時間はその場所を占有できます。また祭祀の場、野外コンサートなど公共性をそなえた占有もよろしいでしょう。こうして、清々しい水辺に家族や同僚が楽しむ時間と場所をつくるのはまちづくりの大事な知恵です。昔、家族が縁側で涼を求めながら、線香花火を楽しみ、スイカをたべ、虫の音にききいったように、水辺を都市の縁側に見立てましょう」