『都市の水辺をデザインする』

『都市の水辺をデザインする』
篠原修編 彰国社
2000円+税

都市の水辺のデザインに必要な専門家とは?

 この本は〝都市の水辺をその土地ならではの顔として、どうデザインしていくべきか〟について、日本の景観に関する専門家で、土木設計家、シビックデザイナー(景観設計者)、東京大学名誉教授の篠原修氏が、全国各地の水辺のプロジェクトの紹介と共にまとめたもの。篠原氏は、都市の水辺のデザインに必要な専門家を挙げておられるのだが、とても参考になるので、そのまま引用したい。

【川のエンジニア】
河川のエンジニア。落差工や堰、水門を扱うエンジニアも含む。

【都市計画家】
施設のレイアウトや道路と川の取合いの空間的イメージを描けるアーバンデザイナーでもあることが望ましい。図面の上に道路の線を描き、また、土地利用のゾーニングで事足れりとするプランナーでは失格である。

【土木設計家】
実用的施設ー例えば護岸、沿川の道路、広場、落差工、水門等の機能を納まりの良い形に翻訳することができること。

【建築家】
自分の扱う建物を主役にしようとする自己実現的の建築家ではまずい。あくまでも水が主役であることを忘れてもらっては困る。

【造園家】
水辺に、生き物である植物をいかに持ち込むかは、都市の水辺とはいってもやはり重要である。日本庭園のことを思えば、元来、水辺デザインの中心に造園家が座っていて良いはずである。

【プロダクトデザイナー】
水辺のしつらえには、そこに据えられるベンチ、照明、柵などの、いわゆる小物も重要である。これらは人々が身近に触れるものだから、水辺を利用する人々の、特に快適性はここで決まるというべきだろう。

【修復建築家】
歴史に精通し、発掘、鑑定(評価)、修復、復元のできる建築家でなければならない。かつての水辺のありようを歴史的に検証し、それを修復、復元することは、特に人々の生活の歴史が蓄積されている都市の水辺では不可欠の作業である。

【地元の専門家】 実際にものをつくり上げていくためには、すでに述べた専門家によるプランニング、デザインのみでは不十分である。石を積む石工、地域の伝統的家屋に詳しい大工、木材を供給する材木屋、森林組合等の人々の努力なくして、地に足の着いた、良いものはできない。鋳物を扱う職人、煉瓦の職人等も忘れてはならない。

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