官民協働で成功させよう!新名勝・松川遊覧船
創刊40周年記念企画
シリーズ 〜グッドラック40年の軌跡〜 ②
(1987年10月号GLキャンペーン座談会より)
1987年8月23日(日)、弊誌のキャンペーン座談会から誕生した“松川遊覧船の旅”試乗会が行われ、フランソワーズ・モレシャン女史が華を添えた。この模様はマスコミに大々的に取り上げられ、各方面より大きな反響を得た。その直後に行われた座談会では、関係者が今後の展望について語りあった。
◇座談会出席者[役職は座談会開催当時]
司会/中村孝一(月刊グッドラックとやま発行人)
オブザーバー/石川繁雄(月刊グッドラックとやま常務)
▽森谷義一(富山県観光物産課係長)
▽寺林一郎(富山県河川課係長)
▽有沢登(富山県土木事務所河川課係長)
▽高橋耕四郎(富山県富山土木事務所河川課主任)
▽小俣浩(富山市観光課課長代理)
▽北堀健(富山市公園緑地課課長)
▽北山直人(㈲北山ナーセリー社長)
官民あげての初の協働体制が話題に
司会 まず先日の試乗会について、河川管理の立場からご覧になったご意見をお聞かせ下さい。
寺林 あれだけ視線を低くして見るのは初めての経験でしたが、なかなかいいですね。富山市に川を掃除していただいたおかげでゴミも少なく、ひと安心しました。
小俣 テレビや新聞を通して、いよいよ動き出したな、いいな、と思いました。松川に舟を浮かべるということが広がって、いつから運航するのか、コースは等と話題にのぼる。やはり、観光名所をつくることが重要ですね。
北堀 目線が変わると、あれだけ変わった景色が展開されることの驚き。話だけ聞いているよりも、実際に乗って体験してみて、実感しましたね。松川沿いの緑のあり方について、緊張感を持って見ていました。
川沿いの土手は、上から見ると急に見えますが、下から見ると案外緩やかな勾配に見え、のどかな川沿いの光景をつくっている。緑、草木、土手などが調和して素晴らしい景色でしたね。その中で、舟が行き交う動きが、独特の情景を醸し出していました。
司会 当日乗船されたフランソワーズ・モレシャン女史に、「世界で一番有名な水の都ベニスと比べてどうですか?」と尋ねたら、「松川のほうが緑があってオシャレですね」とおっしゃいました。
有沢 試乗会に関して、様々な反響があったことを聞きました。やはり、ないものをつくるのですから大変なことです。それに、営業サイドから見るとなかなか難しい。河川管理等、様々な要素がからんできますしね。
森谷 いろいろな人の感想を聞くと、非常に良かったということでした。私は一つのイベントとしてやってみれば、と思っていたのですが、一足飛びに会社を作り、年間を通じてやる、と聞き、驚いています。今後はいろいろ知恵を出し、PRしてお客様を増やすことです。先日の試乗会は大成功でしたが、あれほど急速にできたのは、やはり、県や市の関係者の協力の賜物だと思います。今回の事業を通じて、民間との新しい協力体制ができたと心強く思っています。
高橋 私は乗船していて、桜橋・塩倉橋などは古いので、橋の下の汚れが気になりました。おわら踊りが舟上から見えて良かったのですが、土手ののり面が視野に入ってきますので、桜とか緑の他に、フラワーポット等を利用して見せる工夫も必要ですね。あと、安定した水量を得ることと、浚渫して川底をきれいにしなければなりませんね。
北山 最近、松川河畔は桜が大きく育って、一種独特の雰囲気を醸し出しています。松川は土手面が広く見えるので、これをプラスに変えるアイデアが必要ですね。
石川 試乗会は皆さんのおかげで成功させていただきましたが、問題はこれから、ですね。
司会 施設面についてご意見をお聞きしましたが、今度は松川の観光資源を生かしていくためのアイデアをお聞かせ下さい。
▼1987年8月23日に行われた試乗会の様子
観光客の滞留を促す横のつながりを
森谷 1年を通じて取り組むのなら、関係者がもう一度各々の立場で協力して、魅力あるものにしていくことが大切です。あとはPRのやり方次第ですね。
小俣 時間や期間、料金を早くまとめて、強力な宣伝活動をすることです。
森谷 通年運航するのであれば、何かプラスαとなるイベントがほしいですね。おわらを踊ってもらうとか。それから、旅行エージェントやホテルとのタイアップも必要でしょう。また、観光ルートにも組み込んでもらうことですね。「五百羅漢」を見た後や、「源」の工場見学の後に松川遊覧船とか。あるいは、各種大会で富山へお越しになったお客様を案内するなど。また、割引制度の導入もあったら良いでしょう。
北堀 民間の横のつながりが大切。観光資源の一つとして、他と協力してやっていく。
森谷 ガイドを初め、受け入れ体制も大切。短い時間に松川の歴史や富山の観光などについてPRする。雨や大雪の時は民謡を見せるとか、ビデオテープを見せるとか、ソフト面を考える。せっかくいいスタートを切ったのだから、長い目で見て頑張ってほしいですね。富山県の観光施策に大変協力いただいているわけですから、県としても最大限支援させていただきます。
石川 雨が降った時や、待ち合わせ時間ができた時に、休んでもらえる施設がほしいですね。そこで、富山市の観光を紹介する。もちろん、今すぐには無理でしょうが。(※この5年後に遊覧船の駅舎として、松川茶屋が完成した)
小俣 目に見えるところはもちろん、実際に川面を舟で行き交うわけですから、川底を浚渫し、水ももっときれいにする。
▼松川遊覧船から眺めるアーチ型の桜橋(国の登録有形文化財)
水こそ富山の命
北山 水質は富山のイメージを左右すると思いますよ。マスやサケが泳ぐようになれば最高です。
小俣 やはり舟に乗ってもらうためには、あらゆる仕掛けを作っていく。以前、神通川に舟があって、食事ができましたが、そういった楽しみも考える。
石川 飲食のことは、これからの研究課題のひとつですね。
寺林 試乗会の時、モレシャンさんが、彫刻に非常に感激しておられました。彫刻めぐりもいいですね。
司会 潮来では、十二橋めぐりとネーミングしていましたよ。
有沢 水郷と橋と、ぴったりくる感じがしますね。
司会 松川には、上流から舟橋、安住橋、七十二峰橋、景雲橋、塩倉橋、華明橋、桜橋と7つの橋があり、「松川七橋めぐり」とゴロも悪くない。けっこう見どころになるのではと思います。
北堀 橋はひとつの景色のポイントですよね。橋と川の水面とが、何か額縁のようになり、橋からどのような景色が展開されるか、といった期待も膨らみます。
北山 富山の水のきれいさ、花と緑のきれいさは、全国どこにも負けない。問題はPRなんです。有名になると、全国から観光客がやってきますよ。
森谷 「八尾おわら風の盆」には、東京から毎年来る人がいます。あるおばあちゃんは、8年目だと。座る席まで決まっているほどファンが多い。せっかくやるなら、松川遊覧船もそのくらい有名になってほしいものです。
有沢 知事が言っておられる〝日本一の花と緑の県〟、そういうポテンシャルを持っている場所は、なんといっても松川です。県都・富山の中心を流れる松川は、ダイヤモンドに例えると原石のまま。美しく整備して、県都・富山のシンボルにしていくべきです。
県が目指す「21世紀水公園神通川プラン」にもあてはまる。〝水の都・とやま〟を象徴する松川遊覧船の誕生を、県、市をあげて、協力していかねばと思いますね。
行政と民間の連携を
小俣 今、松川に遊覧船をということで、それぞれがやっていたことをさらに連携をとってやっていく。行政と民間の連携が強くなっていけば素晴らしいですね。
有沢 松川周辺は、〝水の都・富山〟の玄関口であり、富山県の〝顔〟です。県外の方が松川を訪ねることは、いろんな面でプラスになると思います。行政側としても、できるだけ協力させていただくつもりです。さしあたっては、舟着き場の整備を考えています。
森谷 やはり、行政と民間の役割分担をきちんとして、進めることが大事。私は魅力あるイベントを宣伝し、観光客を増やす立場ですが、関係者の皆さんのご協力をよろしくお願いします。
▼現在、遊覧船でのお花見がすっかり定番になった松川
高橋 松川はいつも通って見ているのですが、写真やパンフレットを見て、改めて見直すことがあります。川面に木々が映る姿、特に桜の季節は川のほうに伸びた枝が映って大変美しい。これからは舟着き場とか、乗船客の安全を考えた施設を前向きに検討していきたいと思います。
北堀 見方を変えると、意外性がありますよ。ビルの谷間を舟下りする、しっとりとした風情がある。人工のものと、自然の対比の面白さも一つの意外性に通じます。それも、松川を生かす一つのポイントではないでしょうか。
司会 今日は大変貴重なご意見をありがとうございました。
10月25日には遊覧船の第一号が完成しますので、発表会と一般市民の試乗会も計画しています。今後、官民の連携をさらに強め、富山観光遊覧船が〝水の都・富山〟のシンボルに育つよう、努力、検討を重ねていきたいと思います。
〝過去をより遠くまで振り返ることができれば、未来もそれだけ遠くまで見渡せるだろう〟
——ウィンストン・チャーチル(英国の政治家)
1987年以降の松川遊覧船に関する動き
昭和62(1987)年8月、フランソワーズ・モレシャン女史を招いて、「松川遊覧船」の試乗会を開催。
昭和62(1987)年10月、国、県、市、経済界の支援で「富山観光遊覧船株式会社」設立。
昭和63(1988)年3月、松川丸・富山城丸・舟橋丸・滝廉太郎丸・荒城の月丸 就航、笹舟による遊覧船事業「松川七橋めぐり」運航開始。
平成4(1992)年3月、富山観光遊覧船㈱駅舎(松川茶屋)城址公園内に完成。営業開始。
平成5(1993)年10月、松川丸に環境問題に対応した電動船外機を搭載、松川の本格的しゅんせつ開始。松川を美しくする第一歩が始まる。
平成6(1994)年3月、「松川遊覧航路」事業 許認可、旅客船「滝廉太郎Ⅱ世号」就航 。
平成6(1994)年4月、「お花見ビア宴会船」、7月「納涼ビア宴会船」(共にキリンビール協賛)運航開始 。
平成9(1997)年6月、アメリカ・テキサス州サンアントニオの遊覧船会社「リオ・サンアントニオクルーズ社」と姉妹提携(平成18年再訪)。
平成11(1999)年8月、旅客船「滝廉太郎Ⅱ世号」に環境にやさしい4ストローク機関を採用。「富岩運河遊覧航路」事業開始。「全国運河サミットinとやま」に、富山県のチャーター便として「滝廉太郎Ⅱ世号」就航。初の「富岩運河探検クルーズ」「ディナークルーズ」を1カ月間開催。
平成12(2000)年6月、松川茶屋対岸に親水護岸・リバー劇場完成、「リバーフェスタ」開催。
路面電車と松川遊覧船の共通船車券の発売開始、回遊観光を提案。
平成15(2003)年9月、神通川直線化100周年記念「リバーフェスタ2003・川と街づくり国際フォーラム」開催(後援/国土交通省、富山県、富山市)。サンアントニオ市公園管理者リチャード・ハード氏来富「夢のリバーウォークはこうして誕生した」を講演。松川を視察。「可能性は充分ある」と激励される。
平成15(2003)年11月、当社社長の案内で、県議、市議、元行政マン、総勢19名でサンアントニオ市を視察(リバーウォークでリチャード・ハード氏と再会)。
平成18(2006)年9月、「富岩運河いたち川遊覧航路」事業許認可、富岩運河 環水公園〜富山港〜岩瀬運河(カナル会館)の視察運航実施(富山県の港湾行政担当者等も乗船)。
平成18(2006)年10月、「富岩運河チャータークルーズ」運航開始、「運河まつり2006」にて「富岩運河クルーズ」運航。
平成19(2007)年4月、旅客船 神通 就航 (環境にやさしい4ストローク機関と、サンアントニオの遊覧船のデザインを採用)。
平成19(2007)年12月、富山県のチャーターにより、環水公園スウィート・クリスマスで「ナイトクルーズ」運航。
平成21(2009)年7月、富岩水上ライン業務委託(富山県・富山市)。 (〜11月)
平成24(2012)年10月、おかげさまで、設立四半世紀・設立25周年を迎えました。
平成27(2015)年3月、北陸新幹線開業で、観光地の穴場として注目を集め始める。
平成27(2015)年4月、旅客船 神通Ⅱ 就航 (平成19年就航の神通と同型)。