[グッドラックとやま2020まちづくり特集]官民連携は地域の気運の高まりがポイント 富山市副市長/中村 健一さん

富山市副市長/中村 健一さん
聞き手/中村 孝一 (月刊グッドラックとやま発行人)

富山市中心部の魅力づくりを、官民一体となって推進するには何が必要か。平成18年、国土交通省から富山県土木部都市計画課長に赴任した経験を持ち、現在は富山市副市長を務める中村健一氏に話を伺った。

 

環境に注目した松川の先進的な取組み

——グッドラックでは県都・富山市の中心部を流れる松川の歴史・文化を活かし、県民・市民が誇りを持てる〝水の都〟のシンボルをつくろうと、これまで様々な活動を行ってきました。
 1987年の松川遊覧船スタートから始まり、今年で33年目になります。これまでの取り組みを活かしながら、官民連携の街づくりを推進する上で、どのようなことが大切なのか、お話をお伺いできればと思います。

中村副市長 1997年に法律の改正があり、河川行政に環境という概念が入ったんですが、最近はかなり市民権を得て定着し、「ミズベリング」という官民一体のプロジェクトにもなってます。その点でも、この松川は先進的な取り組みをされてきていると思います。

——官民連携で水辺の利活用を進めるうち、広島に「水の都ひろしま推進協議会」があることを知り、私どもも2017年に「〝水の都とやま〟推進協議会」を立ち上げたんです。

中村副市長 広島の場合は、青年会議所をはじめとして道路でのオープンカフェにとても熱心な方々がおられて地域で盛り上がっていたと伺っています。
 けれど、道路はイベントとしてやることはできても、継続的に商売ができる場所にはなっていなかったので、ずっとオープンカフェを続けるのは難しい。そんな時に河川法の運用が変わり(2004年)、一定期間継続的に商売する時にも占用みたいなことができますよ、というルールができて、そこで最初に手を挙げたんです。これは、民間の地域をあげての思いがあるから場が決まったという良い例だと思います。
 富山の場合も、これまでグッドラックさんが「松川一帯を良くしよう」と汗をかいて頑張ってこられ、地域のみんながそうしようと盛り上がった結果、いろんなことをやってくることができたんだと思いますね。

——広島の推進協議会では市役所内に事務局を置き、官民一体となって取り組んでおられますね。

 


▲“水の都とやま”の理想の姿を探るため視察した、サンアントニオのリバーウォーク。

 

地域の盛り上がりが不可欠

中村副市長 地元の皆さんが盛り上がった結果、そこに市が入っているという感じだと思います。
 行政の立場から申し上げると、例えば大雨の時に川があふれて困るとか、みんなの命や財産を守るといった、分かりやすいことはなんとか解決しなければということになります。
 しかし、今のような環境整備の面だと、川がいいという人もいれば、山がいいという人もいる。なので、その場所が国、県、市のいずれの場所であれ、物事を推し進める上でいちばん重要なのは、「こんなふうにしたい」との地域の盛り上がりだと思います。

——そこで〝水の都とやま〟の理想の姿を探るため、2003年9月、「川と街づくり国際フォーラム」を開催。10月に富山商工会議所、11月には富山県議、富山市議、元土木部長、元河川課長など総勢19名の視察団が私の案内で先進地のアメリカ・サンアントニオ市を視察。2007年には、森市長や担当部長など10数名がサンアントニオを視察しました。この感動を松川に生かそうと、さっそく「水辺のまち実行委員会」を立ち上げるなど水辺を活用した街づくりに向けて進み始めたのですが、なぜかそこでこのプロジェクトがストップしてしまったため、改めて「〝水の都とやま〟推進協議会」を立ち上げた、という経緯があります。

 

あるべき原点に立ち戻る

中村副市長 中村さんのようにサンアントニオを詳しくご存じの方は、せっかくあそこまで盛り上がったのに、現状はまだまだできていないと思っていらっしゃるかもしれませんが、その場合、本来のあるべき原点に戻らないとうまくいかないと思うんです。
 時間が経てば人も空気も変わりますし、原点に立ち戻って、何が必要なのか、という風にものを考えた方がアプローチしやすいと思います。それが当時の原点に戻ってもなかなか前に進まないのであれば、どういうものだったらみんなでやっていけるのかっていうことを考えなきゃいけないと思います。しかし、遊覧船がスタートして33年、松川が随分良くなってきていることは紛れもない事実ですけどね。

——2018年に「松川の水質保全」と「浸水被害の軽減」を目的に「松川貯留施設」が完成しましたが、これは森市長が洪水対策として巨大なトンネルを掘っているサンアントニオの街を実際に見てきて、松川にも必要と判断されたんですね。

 

官民で水辺の夢を共有する

中村副市長 これだけの規模の地下貯留施設はお金もかかりますし、地方都市では珍しいです。東京都では環状七号線(神田川など)の地下に作っていますが…。そういった面でも、松川は良くなってきていますね。
 いろんな所でお話しする機会がありますが、官民連携は官も民も同じ方向をちゃんと向いていかないとうまく行かない。官だけ、民だけとなった瞬間、うまく回らなくなるんです。どっちかだけでは駄目。両方が同じ方向を向くとうまく回る。そのときに必ず裏で汗をかく人が必要なんです。それは民の場合もあれば、官の場合もあるし、ケースバイケースだろうと思いますけどね。
 もしこれからも進めていくとすれば、これまで目標にしてきておられるサンアントニオの、どこの部分を今の松川に取り入れるべきなのか、ということをクリアにして、みんなに共感してもらうこと。何がわれわれとして実現すべき水辺の夢なのか、みんながいいよねという水辺の夢とはこういうことなんだということを、民間と行政で共有することが必要ではないでしょうか。

——確かにそうですね。これまでの一連の活動の中で良くなってきたことを踏まえて、さらにどのようなことが必要なのかを明確にし、地域の盛り上がりを作る必要がありますね。

中村副市長 先日、国交省の副大臣が富山へいらっしゃった時、松川の説明で、遊覧船が行き交う桜の時期の写真をお見せしたんですが、大変感心しておられました。富山市民にとって松川はかけがえのない財産になりましたが、現在このような美しい姿になったのは、グッドラックさんのご尽力も大きかったと思いますので、これからも期待しております。

——はい、これからもベストを尽くしてまいりたいと思いますので、一層のご指導・ご支援の程、よろしくお願い致します。本日は誠にありがとうございました。

 


▲未来の松川の姿を描いたイメージパース(水辺のまち実行委員会)

 

 

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