松川べりを花と緑あふれる県都・富山のシンボルに!

創刊45周年記念企画
– 「グッドラックとやま」 平成2(1990)年6月号座談会を再編集 –

 

 弊誌の街づくりキャンペーン座談会から誕生し、今では富山市の観光のシンボルの一つともなった松川遊覧船。今年で35周年を迎えるが、弊誌では開業後も一貫して松川べりの美観の向上を呼びかけてきた。  今回は平成2年に関係者の皆さんとともに開催した座談会を掲載し、当時の意見を振り返ってみたい。

 

・座談会出席者
 [役職は平成2(1990)年の座談会開催当時]

埴生雅章
(富山県都市計画課公園緑地係長)

川上義昭
(富山県農産園芸課主幹)

有若 貢
(富山県花卉球根農業協同組合)

藤永 滋
(富山市公園緑地課長)

斉藤昭一
(㈱富山中央花き園芸常務取締役)

谷せい子
(㈲コンニチドー専務取締役)

司会/中村孝一
 (月刊グッドラックとやま発行人)

 

司会 グッドラックでは、富山の街の魅力づくりをテーマに座談会を行っています。今日のテーマは「松川を花と緑のシンボルにして、県都・富山をアピールできないか」ですが、遊覧船上の座談会ということもあり、皆さんには形式張らず、忌憚のないご意見を賜ればと思います。

 

松川を花と緑で魅力アップ

埴生 松川は県庁と、城址公園に沿って流れるという好立地にあります。県では昭和59年度に富山市内を流れる神通川水系を軸に「21世紀水公園プラン・水と緑の街づくり」を立案しました。その調査で来富された東京からの専門家の方々も、松川やいたち川をご覧になって、街の中にこれだけいい形で水と緑が残っていることに感心していらっしゃいました。
 現在、「舟橋」も新しくなり、「親水のにわ」もできましたし、部分的には新しいものが加わってきました。さらに全体を見るとすればどうすればいいかというのが、課題かと思います。

司会 遊覧船も3年目に入り、市民の目も松川に向くようになり、船上からの美しい景観は従来の松川のイメージを変えたという声も聞かれます。
 もっと魅力アップできないか、と県の農産園芸課で企画されたチューリップの花首をパネルに指し、絵を作るという「フラワーアート・とやま」が実施されました。水上に浮かんだパネルの絵を遊覧船上から鑑賞できるとあって、松川の楽しみ方がまたひとつ誕生したわけです。このイベントも今年で3回目を迎えますね。

川上 「フラワーアート・とやま」は今、県がやっている特産王国づくりの一環で、県内各界・職場、小学校、児童クラブなど多方面から積極的に参加いただいています。

 

▼自然があふれ、ゆったりとした雰囲気が訪れる人々を和ませるアメリカ・サンアントニオのリバーウォーク。

斉藤 私個人の印象では、松川と言えば桜並木のイメージが強く、市外の方は特に以前の松川をご存じないので、水がきれいになったとは感じてないでしょうね。

藤永 市では松川を、桜が中心の「いこいと文化芸術の水辺」というキャッチフレーズにふさわしい川にしたいと考えております。現在、既に散策道の彫刻などは市民に親しまれ、とてもいい状態になってきたと思っています。
 そして、公園ですから何より清潔感を大事にしたいですね。今年は「日本さくら名所100選」にも認定され、市民にもかなり印象が高まるのではと期待しています。

司会 大阪で開催中の「花博」では、世界中の美しい庭園を模してつくったミニ庭園が一番人気があり、期間中、そこでは次々と様々な花の展開がされるそうですね。
 松川も、もう一つ演出が欲しいところですね。

 

市民参加で川べりに花壇を

有若 今までは行政サイドがここまでの形を作ってきたわけですが、今後は市民の直接参加で花壇を作るのもいいですね。水耕栽培のチューリップを市民参加で松川の浅瀬で育て、それを見せるということも可能ではないかと思っています。

司会 茨城県の潮来では遊覧船の運航する川の浅瀬であやめが咲き、目を楽しませてくれますね。

有若 チューリップみたいな短期間の花は、つぼみの頃から見せないとね。

 遊覧船運航の話を聞いた時は、長い間臭い川、ドブ川というイメージしかなかったので、正直言ってとても驚きましたよ。ところが、上から見るのと下から見るのとでは全く違い、乗ってみて良かったと思いました。
 今日は市民代表の女性の立場からということで参加いたしましたので、その観点から申し上げれば、やはり川べりにきれいなものが有ればいいと思います。水際の石垣が汚れていたり、雑草が伸びていると気になります。地元の方にもっと乗ってもらうためにも、市民参加のイベントを松川でたくさん催してほしいと思います。

司会 〝花と緑の日本一〟を目指す中沖県政は、全県土を公園化する計画だそうですが、この松川一帯を整備すると、そのシンボルになりますね。桜の時期以外で、〝花と緑の日本一〟の県という演出が何かできると、市民や観光客も喜ぶでしょうね。

 何か植物を植えたりすると、自動車の音や姿も目立たなくなりますしね。

 

様々な観点から川べりに工夫を

埴生 このテーマに沿っていくには、一つは時間的な切り方=四季折々のタイミングにどんなスタイルで何をしていくか、もう一つは空間的な切り方=水面、斜面、上の平場があると思います。
 私としては、斜面の所が雑草や自然になっているのが、松川をホッとさせる一面だと思います。もしやるとすれば、橋と橋のたもとについて考えたらどうでしょう。そうすると、橋の裏の美しさというのも、これからの課題じゃないかと思います。上の平場については桜、ツツジなどいろんな方法がありそうですね。

藤永 七十二峰橋も、今年架け替える予定です。デザインは決定しておりませんが、現在のものに準じたものになると思います。

司会 舟橋は県の方で整備されたそうですが、下から見ても表から見るのと同じ木目調で評判がいいようです。

 橋の裏はどれも顔があるんですね。この間、遊覧船に乗った時にびっくりしました。荒削りもいいし、舟橋のように工夫が凝らされ、変化があるといいですよね。

司会 川というのは、毎日その表情が変化します。建物の中にいるとつい忘れがちな自然との対話も、川の上でならできるんですね。兼六園などもそうですが、人工的に造ったものでも自然に感じられるよう、ひと工夫がいるんですね。

 

▼川べりに、木々や草花はもちろん様々な趣向が凝らされている。(アメリカ・サンアントニオ)

川上 移動花壇みたいなものを置いてもよさそうですね。

有若 花博では〝菜の花〟が一番人気がありました。派手なものより、自然なものが好まれるんですね。

 お金もかからないもので言うと、例えばドクダミは夏に真っ白な花が咲いて、遠くから見るととてもきれいですよね。

斉藤 シバザクラなんかもいいですし。

司会 花があったらというのは、どなたもおっしゃいます。季節の花をどう演出したらいいのか、ということですね。遊覧船に乗っていても、桜の時期はいいんですが、それ以外の時期はつい下の川を見てしまう。そうすると川底が見えるので、汚いなと思われるんです。川底が見えないくらいの水深があればいいんですけどね。

埴生 桜の時期は、夜も遊覧船を営業しておられますね。

司会 夜景がまた素晴らしいんです。ぼんぼりやライトが水面に映って、お客様も大喜びでした。
 今回は実際に乗船していただいておりますが、感想はいかがでしょう?松川に流れて入ってくる小川のせせらぎが聞こえたり、橋の上の人と手を振り合ったり、非日常を感じる空間だと実感されたのではないかと思いますが…。

 

川の水の美しさがポイント

川上 実際に乗ってみると、自然と近いというのがいいですね。鯉がいるのも目を楽しませてくれますし…。川の水がきれいになると、花と緑も生きてくるでしょうね。

有若 おっしゃるように、もう一歩というところではないでしょうか。日本の場合、美観を考える時、視線を意識して季節感をもう少し出すべきと思います。遊覧船が上り下りする松川では、いろいろ見えるわけですから、きれいにしておかないとイメージダウンにつながりますよね。

藤永 城址公園は「都市緑地公園」という名称ですから、都市とマッチするように進めていこうと思っています。一方、松川側は遊歩道的な、公園とは違うやすらぎや趣を印象づけたいですね。

司会 〝花と緑の日本一〟を目指すす富山にふさわしく、花と緑があふれる松川公園を造って庭園都市のシンボルにしたいですね。

埴生 美しいものが美しい水に映ったら、最高にきれいなんですよね。水と水以外の地上物の相乗効果を、どう高めていくかがポイントですね。部分的にでも着手して実現していけば、将来的にはきれいになるはずです。
 ゴミが目立つという面では、どこかで一括して上げる箇所が設けられないか、花についてはいかに自然らしく四季を折り込んで演出するかということが重要ですね。また、以前から考えていたんですが、舟型のフラワーポットのようなものに水耕栽培の植物を育て、昔ながらの舟橋のようにいくつか繋いで、夜間にライトアップしても面白いと思います。

司会 目指すものと伝統が合致した、素晴らしいアイデアですね。

 

年間を通じて市民が憩える場に

藤永 今ほど、皆さんがおっしゃられたように、水と緑の四季の楽しみを取り入れる研究をして、市民が年間を通じて憩えるようにしたいですね。

 一市民として、お客様をこの公園にお誘いできるように、松川のヘドロを浚渫することが一番の早道かと思います。
 以前、カナダに行った折に感動したのは、山と水の風景の足下に百花繚乱の言葉のごとく咲いている、花の美しさでした。野花でも、松川の土手にふさわしいものがきっといくつもあると思います。葉桜の緑の下でしたら、夏は特に白い花が映えますね。
 「親水のにわ」もきれいに整備されましたし、対岸もそれに合うように整備されるといいですね。

司会 オランダの風景の写真で、緑の葉が繁る大木の下に、花畑のように一面に花が咲いているのを見たことがあります。スケールの大きさを感じるとともに、花があることの素晴らしさを感じました。今回は遊覧船上で座談会を行いましたが、このような遊び心を持って、花と緑の街づくりに貢献できたらと思います。

 

▼新緑の桜並木と色鮮やかなツツジが美しい5月の松川。

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