松川の安全と環境レベルを高め“水の都・とやま”のシンボルに!

2023年新春座談会

 富山の春の風物詩として、すっかり定着してきた松川遊覧船だが、混雑時の乗客安全確保のために乗船場の拡張工事が必要になるなど、課題も見えてきた。
県民市民や観光客がより一層楽しめる場となるためには、何が重要なのか。
 実際に松川リバーウォークと松川遊覧船を視察後、行政担当者と市民が率直に語り合った。

◇座談会出席者

小倉宣幸 さん
富山県土木部河川課
主幹・計画係長

京田憲明 さん
富山市民プラザ
代表取締役社長

久保修平 さん
富山市公園緑地課
課長代理(計画整備係長)

萩原裕美 さん
富山県シェアリングネイチャー協会
理事長

岡本有紀子 さん
おかもと呉服店
店主

祖川裕美 さん
アコースティックユニット
P-chan組

・司会/中村孝一
(月刊グッドラックとやま 発行人)

 

街の中心部にある松川は歴史と自然の宝庫

中村 先ほどは皆さんで松川リバーウォークを歩き、遊覧船にも乗船していただきました。本日は〝さらに松川の魅力を高めていくにはどうしたらよいか〟をテーマに、ご意見をお願いいたします。

京田 久しぶりに遊覧船に乗りましたが、改めて素晴らしいなと思いました。富山駅から歩いても10分くらいですし、総曲輪や中心商店街から歩いても約10分ということで、街のど真ん中に豊かな自然が残っているというのは本当に財産だと思います。
 さらにただ川が流れている、木があって特に春になると花がきれいというだけではなく、松川には歴史がたくさんあります。神通川の馳越工事や、廃川地を富岩運河を掘った土で埋めた後に官庁街ができたことなどは、すごく語れる歴史なんです。そのことが富山市の市街地の形成の歴史ですしね。また、戦国から江戸時代にかけ、富山城と同時期に鮎のなれ寿司があって献上されたり、鱒寿司に変わっていったり、という歴史もある。このような歴史がありながら、豊かな自然が残っている、という場所は本当にないと思います。
 当然、山の中へ行けば、きれいな川が流れていて、自然がきれいだねという所はありますが、そこで歴史はあまり語れませんよね。ここは美しい自然と歴史がセットになっていて、かつ市街地のど真ん中にある、本当に他のどこにもない財産だと思います。
 駅が南北接続ということで高架化になってつながりましたけど、北側には環水公園。これは県がかなり力を入れてやっておられますから、その環水公園と南側の松川で、駅を中心に街の中を回遊できるようになると、これはどこにも負けないようなまちなかの観光名所になると思います。
 そのためにもまず、松川をきれいに掃除することから始めるべきですね。というのも、さっき川辺を歩いていった時と、船に乗った時とでは感じ方が全然違うんですね。船に乗ったらすごく美しいけど、歩いていると草がボーボーだったり、銀杏の実を踏みそうだとか、いろいろ足元が気になる(笑)。
 また、横に土管の穴があると、突然泥水が出てくるんじゃないかとか、用心しながら歩くんですね。そういったことを気にしなくてもいいように、極端に言えば、ディズニーランドみたいなテーマパークのようにきれいになっていると気持ちよく歩けるし、歩きたくなると思います。掃除を毎日するのはもちろん大変ですけど、そのことによって人がワッとたくさん来るようになれば、経済効果も高まりますからね。

中村 本当にその通りですね。岡本さんはサンアントニオへ2回、行かれたそうですが…。

 

清掃活動を通して松川への愛着を高める

岡本 テキサスのダラスで仕事をしている友人のところへ遊びに行き、その時に初めてリバーウォークに連れていってもらいました。もう20年ほど前で、日本人観光客はほとんどいませんでしたね。
 その後、母が商工会議所の視察でリバーウォークに行くということになり、絶対に素晴らしいからと、私も結局一緒に行かせていただきました。松川と似たような川幅ですが、両岸での飲食を含め、本当に賑やかなんです。賑やかだけれども場所によっては落ち着いているという不思議な魅力があり、まさにこの流れと共にある街だからこそ、と思いました。
 掃除という点で言いますと、掃除をする側としては、すればするほど愛着が湧いてくるんですね。以前、ディズニーランドに勤めていた時に、カストーディアルという掃除の研修が1カ月ほどあったのですが、自分で磨けば磨くほど、その場所に愛着が湧くんです。例えば「松川同好会」のようなものを作って、1カ月に1回、15分でも30分でも、自分の持ち場だけでもきれいにするということができれば、1年で12回できます。そうすればモチベーションも上がってくるのではないでしょうか。私も含めて、元々この地域に住んでいる人たちが、松川の魅力を再認識する機会が、掃除も含めてあったらいいですね。

中村 地元の皆さんに、もっと関心を持っていただけるよう働きかける必要がありますね。毎年9月に松川リバー劇場で開催している「リバーフェスタとやま」に出演していただいている祖川さん、改めて感想はいかがでしょうか?

祖川 今回、リバーウォークを実際に歩いてみて、こんなに素敵な場所なので、もっときれいに環境美化すると、もっともっと魅力が増えてたくさんの人に訪れていただけると思いました。桜の季節は有名で、全国各地から来られますが、新緑や紅葉の頃の美しさをご存知ない方のために、旅行プランの一つに季節を問わず、松川を入れていただけたらと思います。
 今、健康ブームで歩いたり走ったりしてる方が多いですが、松川のリバーウォークはゆっくり自然を感じながら歩くのに最適な場所ですよね。歩いた距離を表示する看板があったり、歩いた距離に応じてポイントが貯まるポイントラリーを企画したりすると、もっと楽しいのかなと思います。例えばポイントに応じて、松川茶屋でお団子やアイスが当たったりすると、さらに嬉しいですが(笑)。
 また、遊覧船にいろんなゆるキャラや人気キャラクターと一緒に乗れたりすると、話題性もあって、集客につながると思います。先ほどは月に1回の清掃の話もありましたが、松川で何か楽しいことをやっているよと、噂になるくらいだといいですね。

中村 松川の利用の仕方も工夫すればいろいろできますね。自然を楽しむ会で活動されている萩原さん、ご感想はいかがでしょう?

 

手入れが行き届く中で自然が生きる

萩原 私は小矢部市出身で、縁があって富山市に住んでもう30年くらいになります。松川は駅からも近く、豊かな自然があり、とても気になっていた場所です。私たちは人と自然をつなぐネイチャーゲームという活動を行なっていますが、数年前に私が富山の代表になった時に、全国からリーダーさん方が集まる大会を富山で開きました。桜の時期の松川を提案し、プログラムを作って来ていただいたところ、皆さん、とても感動してくださいました。
 松川は春だけではなく、四季を通してネイチャーゲームができる素敵な場所だと思いますし、掃除が行き届くと、もっと豊かな気持ちになれると思います。やはり、行き届いた中で自然がさらに生きるんですよね。また、松川べりに季節によって自然に芽を出す花々があるといいですね。

中村 かなり前にライオンズクラブの方が球根を植えられまして、早春に水仙、9月中旬ごろからは彼岸花が咲きます。彼岸花は9月の初旬ごろに茎がスッと伸びてくるのですが、ちょうどその頃に草刈りをされると、せっかくの茎も一緒に刈り取られてしまうんですね。それぞれの植栽の特徴を見極めて、ベストな時期に管理を行い、いろんな花々が楽しめるといいですね。

▼乗り場の安全確保のため、拡張が望まれる松川リバーウォーク。

 

地元民も非日常を楽しめる空間

久保 実は初めて松川遊覧船に乗り、こんなに非日常的で素晴らしい所が富山駅のすぐ近くにあったんだ、と改めて気づきました。私自身は高岡に住んでいますが、一県民の立場としては、駅から10分の場所で、これだけ安らぎとワクワク感を感じる場所があるということを、観光客だけでなく、県内の方にもっとアピールするべきと思います。
 桜のシーズンは非常に有名なので、川の上から見たりしたことはあったんですが、船に乗ると景色や体感できることが全然違うんですね。ぜひ、今度は子どもたちや家族で乗りたいなと思いました。
 魅力アップという点では、今あるものを生かしながらどのようなことができるのか。美化については、課題にみんなでどのように取り組んでいくか、が大事ではないでしょうか。

 

市民の力が松川の魅力を高める

小倉 松川の水はある程度きれいだとは思っていたんですが、あれだけ小さい魚も大きい魚もいることに本当にすごいなと、言葉を失うくらい感動しました。それも郊外の川ではなく、街の中心部の川ですからね。私たち土木の先輩方もお手伝いさせていただいたことは聞いていますが、中村さんのご努力の成果が、この魚にも現れているなと思いました。
 松川の清掃に関してですが、行政だけで一方的に管理するというよりは、先ほど岡本さんがおっしゃったように、愛着を持つ市民が参加して盛り上げていくことも大事かなと思います。私の地元は砺波なので、春になるとチューリップ公園の清掃活動などに参加していますが、やはり自分の街がきれいだと嬉しいですよね。地元への愛着というエネルギーが、もっともっと松川遊覧船を応援する力になると思います。
 あと、「鉄オタ」のように、各地の遊覧船に乗るのを趣味にしている方々にも、もっとアピールできたらいいですね。

中村 遊覧船を始めた35年前の松川は、近づくと臭いがするほど水が汚かったんです。けれど、森前市長の英断で、6年半の歳月と70数億円をかけ、地下に巨大な「松川雨水貯留施設」を完成させたことで、汚水が川に入らなくなり、今では観光客から時々、「この水は飲めますか?」と聞かれるくらいきれいになりました。

 

松川の大切さを再認識する活動を

京田 今回、街中にある松川をもっときれいにして、楽しく豊かな気持ちで歩いたり、たたずんだりできる場所にしたいという思いは皆一緒なんだなと改めて思いました。そういう面でも、まずは地域住民に松川の大切さを再認識していただき、その思いを清掃活動などの行動で示していくことが、最も大事なことだと思いました。

中村 地元の市民の方に、もっともっと松川の素晴らしさに気づいていただきたいですね。本日は誠にありがとうございました。

 

▼満開の桜の下、遊覧船の待ち時間に箏の演奏会を楽しむ人々。(演奏:太田衣代さん)

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