・ グッドラックとやま 2024街づくりキャンペーン ・富山を“水と花と緑”の潤いある街に!!

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富山を“水と花と緑”の潤いある街に!!
「グッドラックとやま」 昭和61(1986)年3月号[創刊100号記念号]より再編集

 

 昭和61(1986)年3月に100号を迎えた弊誌の記念シンポジウムでは、”水と花と緑”を活かした街づくりについて官民での熱い議論が交わされていた。
この翌年、弊誌の呼びかけに賛同した富山の企業が株主となり、富山遊覧船株式会社が設立。まちなかに水辺の潤いを創り出し、”水の都とやま”へ向けて歩み出す一歩となった。
今年で37年目を迎えた今、当時の課題はどれだけ解決されたのだろうか。

 

◇座談会出席者〈順不同〉

埴生雅章 さん
富山県土木部都市計画課
公園緑地係長

新田嗣治朗 さん
日本海ガス㈱社長
北経連統合対策
委員会委員長

緒方 裕 さん
富山地方鉄道㈱社長
北陸三県広域観光推進協議会副会長

村上義春 さん
㈲峻陽堂専務
写真家

河口清隆 さん
懐石松や社長 
富山商工会議所青年部長

花柳松香 さん
日本舞踊家

◇司会/中村孝一(グッドラックとやま発行人)

 

魅力ある街づくりに“水と花と緑”を活かす

司会 これまで弊誌の座談会等を通して、「富山を全国にアピールするためにはどうすればよいか」をテーマに話し合ってきたところ、富山の特徴である〝水と花と緑〟を活かした魅力ある街づくりが、観光客を富山に惹きつける一番の要素であると、結論が出ました。
 そうした中で、県の方で、『富山21世紀水公園神通川プラン』というものと『都市МIRAI事業』という構想があるということをお聞きしましたので、構想をお聞きすると同時に、本日ご出席いただきました方々のご意見などを参考に、地域住民の生活に密着した水公園プランの実現をお願いしたいと思います。

埴生 県内には5大河川がありますが、今回はテーマを公園に絞り、神通川1本についてやりましょうということで『富山21世紀水公園神通川プラン』ということになったわけです。
 この構想の背景として、
①富山市を流れている神通川の、富山空港の少し上流から河口までの約17キロ位の区間を市民のために有効利用する。
②駅北の富岩運河の再開発と、新しい街づくりに取り組む。
③松川、いたち川という都市内の中小河川の親水性、水と親しめるような整備が必要である。
という、3つのバラバラの背景があった中、〝神通川〟を軸に3つをドッキングしてこのプランを作ろうと言うことになったわけです。

司会 具体的に教えていただけますか?。

埴生 〈A=みなと街地区〉は、港の環境を活かし、「みなと展望レストラン」や散策コースなどを考えています。〈B=健康づくりの河辺地区〉は、健康をテーマに水上レクリエーションが楽しめる場にする。〈C=ふるさとの河辺地区〉は、街に一番接している部分で、ここが一番変化に富んで面白い地区なので、〝河原に柳が生えている風景〟というものも大切にしながら、色んな施設も導入していく。〈D=21世紀の河辺地区〉は、広域的な利用を図るカルチャーパーク、スポーツ広場を作る。と、いうふうに〝神通川〟を軸に4つの地区に分け、特徴づけていきます。
 また、〈E=親水文化地区〉は富岩運河の再開発ということで、中島閘門を活かして水上バスなど名物型の乗り物を導入し、〝観光いきいき富山〟の一環にしてはどうかという意見も出ています。
 このE地区は富山駅の北部の街づくりと密接に絡んでいますので、『都市МIRAI事業』ということで総合的に整備計画を立て、整備をやっていただくということです。富山駅からまっすぐに北に向けて幅60メートル、長さ480メートルの大並木通り(ブールバール)を作り、それを歩いていくとカナルパークへ出られる、という駅北のオアシス的な核にしたいと計画しております。
 また、〈F・G=松川・いたち川地区〉は、歴史文化地区・コミュニティーリバー地区という名前で、それぞれ現在の良いところはそのまま残して、部分的に親水性を高める装置や緑を豊かにする計画です。

緒方 ニュージーランドの南島にクライストチャーチという古い街があり、市内にはエイボン川という水量豊富な川がうねうねと流れています。水の流れはゆるやかで、河辺は芝草が敷き詰められ、柳などの巨木が枝葉をふさふささせ、川面には水鳥が浮かび、芝の上にも鳥が歩き、そこでは恋人たちや若い夫婦がベンチに腰掛け語らっている。なんとも言えない風景で、こんな所が富山にもあったら素晴らしいなと思いましたね。

新田 私もよく海外へ行きますが、向こうの都市はきれいですね。ヨーロッパの街は至る所に〝噴水〟があり、〝彫刻〟があり、〝芝生〟も非常にきれいに手入れされているんですね。今、〝噴水〟と言えば、県庁前に一つしかないですけど、水って非常に楽しいものですから、小さな噴水でもいいですから、あっちこっちにあるといいですね。
 オーストラリアの首都・キャンベラには人工的な湖がありますが、「都市には水が必要」だということを、はっきり表していると思うんです。富山は水が非常に豊富な所ですから、そういったこともお考えいただきたいですね。

埴生 県庁前の〝噴水〟井戸水ですが、噴水を上げない冬は散水、消雪として使っています。

新田 こんなに水が豊富にある都市は、世界中でも珍しいんです。この恵まれた状況を、もっと活かしていかなければなりませんね。

司会 東京都江戸川区の親水河川の記事を新聞で読んだのですが、一番のポイントは川の水をきれいにすることだと強調しておられました。せっかく川沿いに木陰を作ったり、緑ができても、チョコレート色の水ではどうにもならない、とおっしゃっていました。
 今回の計画では、どの程度まできれいにすることを考えていらっしゃるのでしょうか。

埴生 富岩運河については、水質の浄化を図ることを大前提にしています。

司会 ヘドロをきれいに取り去るということでしょうか?

埴生 もちろん、そういうことも必要でしょうが、これは年間何億という費用がかかるんですね。

 

豊富な水でユニークな仕掛けを

花柳 このプランはとても素晴らしいと思いますが、平凡な気もしないではありませんね。これプラス、ユニークな個性が必要ではないでしょうか。
 例えば富山駅前と富山空港前に、「水と緑を連想させる大きなモニュメント」みたいなものを作り、観光客に印象付けることも必要だと思います。

河口 富山には個性がないということで、観光客にしろビジネス客にしろ、全然印象に残らない街ということが富山のデメリットと言えると思うんです。人が集まって来る楽しい雰囲気の街に変えるためにも、1年1年変わっていくんだという所をはっきり打ち出していただけたらと思います。
 そのために、富山は〝水〟が豊富ですし、名水百選の中にいくつも入っているわけですから、そういうものをコンパクトに、「松川流域や城址公園の中で仕掛けて作る」ことも必要かと思います。

村上 30年ほど前から景勝地の写真を県から求められ、あちこち飛んで歩きました。観光客の方の写真もお撮りしておりますが、富山といえば立山連峰の下に市街地、というパターンが多いわけですね。今、〝水と緑〟をテーマに都市づくりをしていかれるわけですが、写真家としてお願いしたいのは、私たちの後輩のためにも「写真の1枚になるような街」になるといいなということですね。

 

▼「ヨーロッパの庭」とも呼ばれ、世界的にも有名なキューケンホフ公園(オランダ)。勢いよく吹き上がる噴水が、花と緑の空間に潤いをもたらしている。

 

埴生 補足させていただきますと、『水公園プラン』というのは県が全部を順番に作っていきますということではなくて、およその全体の構想的なフレームを示しているわけで、それを実際に誰が何をやるかについてははっきり言っておりません。県がやる部分もあるでしょうし、「市や民間のどなたかがおやりになる」ということもあると思います。いろんなアイデアを出し合い、それぞれの分野を受け持ってやっていこうじゃないか、というプランなのです。

 

“水と花と緑〟を活かしより良い生活環境を

緒方 水があって緑が育つし、花ももちろんお米も育つんですね。「日本一の花と緑の県」というのが富山県のスローガンになっていますが、その中にもう一つ、〝水〟をいれておかれたら良かったなと思っているわけですが、現状では富山駅を降りて、「花と緑の県」とは誰も思えない話です。やはり駅前に噴水があり、花壇も豊富にあるというのがいいですね。それも、どこにでもあるようなものではなくて、スケールの大きいものがいいと思います。

花柳 数少ない海外での経験なのですが、印象に残るのはやはり道路周辺の景色なんですね。そういった面で、富山の道路状況がすごくなおざりにされているような気がしています。また、消雪装置も水を出すだけでは夢がないなと思いますね。

新田 富岩運河にしても、冬の消雪装置にしても、流れを作ってやるということですね。運河を貯木場にしていてはいけないし、雪さえ溶かせば後は知らんというのではなく、水を出す装置を作ったなら、排水の装置もやるべきです。

司会 忙しい現代社会だからこそ、自然と対話できる場所を必要としていると思いますが、〝水と花と緑〟が人間社会の〝夢空間〟になって、街に潤いをもたらせば、本当に素晴らしいと思いますね。

緒方 これ以上、環境を悪くしてはいけないと、皆さん色んなところで話をされますが、話だけで誰も実行する人がいないのではダメなんです。先人のお陰で我々が今、生活しているわけですから、未来の人たちが今より良い生活環境になるために努力するのが私たちの仕事なんですね。生活の中に自然を取り込めるよう、工夫が必要ですね。

河口 頭の中で作ったものは人に馴染まないというように、そこに「人の心に潤いをもたらす」雰囲気がなければ何にもならないようです。これからも行政と民間の対話がもっとマメにできるような場を作っていただきたいですね。

司会 今日は皆様から貴重な意見をいただき、誠にありがとうございました。

 

このシンポジウムの翌年、〝水の都とやま〟創造という、大きな理想に向けて松川遊覧船が船出した。そして、運航30年目の節目の年、平成29(2017)年には弊誌の呼びかけで、〝水の都とやま〟推進協議会を発足。県都の中心部の歴史・文化・自然を活かした魅力ある水辺空間を作ろうと、粘り強く問題提起を行っている。その中での貴重な発言を一部紹介する。

●〝水の都とやま〟推進協議会会長
浅岡節夫氏(富山県オペラ協会名誉会長)
  【第2回総会 会長挨拶より】
 常に心が楽しい、美しい、というものを感じる「芸術性」、そういうものを持って、人生をもっと楽しくするためにどうするべきか。その松川を中心とした川を考えたら、もっと雄大に、スケールの大きな考えが浮かぶんじゃないかと思います。

埴生雅章氏(元富山県土木部長)
   【設立総会 記念講演より】
 松川を知る、好む、楽しむ。これが基本だろうと思います。それで、本物、ここにある本物は何か。本物の価値というのは何か見つけられるのか。これを磨いて、高質なもの、人々を感動させられるものをどうやったら提供できるのか、ということですね。

今井清隆氏(元・富山県河川課長)
  【第3回総会 記念講演より】
 ハード面の大切さもわかるけども、ソフト面でロマンが足りないのではないかと。神通川に関する歴史や文化をさらに研究していって、それをこの松川の関係に結びつけていく努力が必要かなと思います。
京田憲明氏(元富山市都市整備部長)
  【第4回総会 記念講演より】
 「まちなか」にあり、程よいスケールの松川は、なかなか他の街にはない財産だと思っています。この街の価値にもう一度目を向け、うまく生かすことが、「自然が豊かで水が流れて、とてもいい街だね」と言ってもらえることに繋がるのではないでしょうか。

中川忠昭氏(富山県議会議員)
  【第5回総会 記念講演より】
 富山市では2007年に松川水辺空間活用検討懇話会、その翌年には基本計画策定委員会などが作られたんですが、その後、ずいぶん尻切れトンボになってしまいました。市民が誇りを持って水を語れる街にするためには、どうするべきか市民を啓蒙していく作業、子どもたちへの教育が必要ですね。

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