【其ノ二百六】気をつけて“ファースト”

柳家さん生・・・昭和32年、富山市西町に生まれる。上野鈴本演芸場等、寄席定席に出演のかたわら、都内各所にて勉強会、独演会を精力的に開催、活躍中。

 落語の中に『お為ごかしの言い手はあれど まこと実意の人は無い』という言葉がある。いつからだろう。危険なこと、危ないことに対して、注意報だの警戒予報だのと全面的に促し、まるで従わないととんでもなく間違いでダメだと、みんなで言い出す風潮があるように感じる。確かに危険なのです。危険が起きたらその責任はだれが取るのだと押し付け合って、責任がどこに誰にあるのかわからないように有耶無耶にしているように見える。とりあえず謝る姿を見せますとばかりに、テレビの中では何人もが並び、息を合わせて頭を下げる映像を流す。いわゆる「大の大人」が頭を下げている姿を見せられると、大人の威厳がなくなっているように見える。昭和は遠くなり、昔はという言い方に、古いというラベルを貼る。だんだん言いづらく、間違いのように扱う。何かにつけて「それはハラスメントだ」が横行し、お終いには何も言えない出来ない世界が来るようになるのか。「ファースト」などと声高に心地よく言い回し、いかにもあなたの為みんなの為と耳障りの良い使い方を聞かされて、知らぬ間にとんでもない時代になっている。なんてことを思うのは私だけ?
 いやはや まいどはや

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