富山らしい魅力的な街に!

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富山市副市長
神田 昌幸さん

インタビュアー
中村孝一(グッドラック発行人)

 

県都・富山市の中心部を、歴史と自然を生かした、シンボリックで、魅力的な空間に整備するには、何が必要なのか——。
今春、国土交通省 都市・地域整備局 都市総合事業推進室長から、富山市副市長に就任された神田昌幸氏に話を伺った。

 

水辺の整備は大切なポイント

中村 富山は神通川から誕生した「水の都」です。その名残の松川を生かし、独自性のある街づくりを進めることが、富山の魅力アップにつながると、8年前、「夢の神通回廊」構想が生まれたんですよ。

神田 私が本省にいた時に、景観・環境も担当し、学会の景観デザイン委員を長い間させていただきました。景観デザインのパイオニアと言われる先生方も、水辺の環境整備にはとても力を注いでおられます。都市の景観整備、環境整備を考える上では、非常に重要なポイントであると思います。
 富山も、松川の使い方にはまだまだ課題があるようですね。他都市の事例で、課題があった中で歴史的環境整備というところから成功していったのが、滋賀県の近江八幡です。前の市長が、とても熱心に取り組んでおられました。

中村 今後、松川の整備を進めていく上で、大切なことは何でしょうか?

神田 川は、第一に安全性が優先されなければなりません。第二が利水。次のステップが、〝環境〟ということになりますね。
 その“環境”に、どうやって踏み込むか——。哲学と言うと大げさですが、そこには風土というものに対するものの考え方が、間違いなく必要だと思います。川の流域に存在する文化性や歴史性が、景観デザインとぴったり合うと、その街ならではの個性ある雰囲気が生まれてくるのではないでしょうか。

中村 富山の歴史、文化、風土を生かした街づくりが大切ですね。

神田 富山は昭和20年の大空襲を受けなければ、また違った街の風情があったはずです。けれど、失ってしまったものは戻ってきません。新しい富山をどう作るか、ということを考えていかなくてはならないわけです。
 以前の街並が消えてしまっても、残った土木工事や国土の骨格はある。それをうまく生かしながら、新しい建物と馴染ませていくということが必要ですが、今は新建材が多くて、建築の工法もバラバラですから、街並を統一するのは難しい。そのような時、公共空間としての道路や河川を活用して、都市環境・都市景観を整備していくことが大切です。
 神通川は、富山の風土に非常に大きな影響を与えた川。その名残を残す松川を、都市空間の中で活用することは、非常に意義があると思います。

 

富山の風土に根ざした魅力づくりを

中村 松川と同規模の川を有効に生かし、美しい水都を創り上げたのが、アメリカ・サンアントニオ。本来の自然の美しさを保ちつつ、商業的な賑わいを創出しています。松川の場合もマスタープランを作り、一年一年できるところから進めていくことが大切ですね。

神田 「景観10年、風景100年、風土1000年」と言う人もいます。景観整備なら10年あればできるけれど、風土の形成にはずいぶん時間がかかるわけです。富山の場合も、これまでの歴史の中で様々なできごとが重なって、今の風土があるわけですから、今、自分たちの生きている時代に何を積み重ねていくか、ということが非常に重要になります。
 今後、富山に北陸新幹線が開通するということで、富山駅周辺の環境は相当変わってくると思いますが、富山の魅力を構築していくためには、表面的なことではなく、風土に根ざした深いものが必要です。そういった面でも、松川を中心とした整備は、とても意義のあるものだと思います。

中村 富山の風土に根ざした、美しい魅力的な街、「夢の神通回廊」を創造したいですね。 

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